子どもの身体にとって、いろんな食べ物が必要なのと同じように、いろんなお話が子どもの心を育てます――子どもの本専門店・メリーゴーランドの店主、増田喜昭さんはそう言います。

 

メリーゴーランドは三重県四日市市郊外に佇(たたず)む、絵本や童話ばかりを取り揃えた本屋さん。増田喜昭さんは「その人の人となりができあがってしまう10歳までに、子どもに大きな影響を与える本というものにかかわりたい」という思いから1976年に同店をオープン。以来、地域に根差した活動を地道に続けた結果、今では全国にファンができるほどの本屋さんになりました。現在は、カフェスペースや多目的ホールでの紙芝居やライブ、作家を招いての講演会など、「街の本屋さん」という枠組みを軽く飛び越えた、ユニークな本屋さんとして注目を集めています。
 
今回ご紹介する『孫の心をわしづかみにするお話』は、そんな増田喜昭さんが「おばあちゃん、おじいちゃんがお孫さんに読み聞かせるならコレ」という視点で古今東西の名作を厳選、人気の童話作家が再話執筆した童話集です。
 
野原のはしっこに、一本のニレの木が立っていました。その木にぽっかりあいた穴の中に、いなかねずみのハルは住んでしました。ある夜、ハルが、落ち葉のふとんにくるまってねむっていると、トントンという音がしました。だれかが、ハルの家のドアをノックしているみたいです。……(いなかのねずみとまちのねずみ)
 
小僧は、山道を逃げまどっておった。間もなく夜になるという時刻。慣れない山に入るなんて、命知らずのすることだ。けれども小僧には、逃げにゃならん訳があった。……(三枚のお札)
 
昔、スペインのある村に、あまのじゃくの女の子がいました。お母さんが女の子に「畑に行って、赤くなったトマトを採ってきてちょうだい。」と言うと、女の子は畑に行き、熟れていない緑のトマトを採ってきます。お母さんが「早く床に入ってねなさい。」と言えば、女の子はねないで、いつまでも踊っている始末です。なんでも反対のことをしなきゃ気がすまないのです。……(歌うふくろ)
 
再話執筆を担当したのは、岡田淳さん、富安陽子さんなど、日本を代表する童話作家から、増田喜昭さんの主宰する「絵本塾」「童話塾」出身の新進気鋭の童話作家まで総勢9名。また、『あらしのよるに』や『エゾオオカミ物語』(ともに講談社)でおなじみ、旭山動物園のあべ弘士さんも挿絵を描いてくださっており、文字通り「目が離せない」お話とイラストで、お孫さんの心をわしづかみにすること請け合いです。
 
増田喜昭さんは言います。
 
「一日のうちの、わずか五分でも十分でも、眠る前の子どもたちと“お話”を共有することのできる大人は幸せです。ここに僕が選んだお話は、開店以来四十年ちかく、子どもたちに読んであげたり、大人にすすめたりしたもので、僕のお気に入りのものばかりです。どのお話からでもけっこうです。おもしろそうだな、と思われるものから読んであげてください。どれかひとつでも気に入ってもらって、お孫さんに何度も『読んで、読んで!』とせがまれることになったら、そのお話はもう、あなたたちのものです。とても大切で特別な“お話”の誕生です」(「はじめに」より)
 
「大好きなおばあさん、おじいさんに聞かせてもらった“お話”は、幼い子どもの心を満たします。世代をまたいで語り継がれる“お話”は、プロの作家の作品だけではありません。さあ、次はおじいさん、おばあさんの自分の子どもの頃のお話です。そう、この一冊を何度も声に出して読まれた皆さんこそ、立派な語り部(かたりべ)なのです。(「おわりに」より)
 
温かい布団の中で大人が読んでくれた本、聞かせてくれたお話……月日が経っていつしかそれが、ボクだけ、ワタシだけの「自分だけの物語」となって、いつまでも心の中に宿り続けている――そんな宝物が、皆さんの旨の中にもひとつやふたつ、きっとあることと思います。本書から、子どもたちにとっての「ボクだけ、ワタシだけの物語」が生まれることを願ってやみません。
 
PHP研究所教育出版部
 
~何度でも夢中になれる読み語り名作選~
小学生に人気で、お孫さんへの読み聞かせにもおすすめな古今東西の名作・傑作11作品を厳選したお話集。総フリガナなので、お子さん一人でも楽しく読むことができます。
※家庭直販本です。一般書店での取り扱いはございません。
 
 
【監修者プロフィール】
増田喜昭 (ますだ・よしあき)
1950 年、三重県生まれ。子どもの本専門店メリーゴーランド店主。子どもの本の普及に力を注ぐ一方で、「絵本塾」「童話塾」、子どもの絵画造形教室「遊美術」を主宰。「四日市こだるま道院」の道院長として、子どもたちに少林寺拳法も教える。愛称は「ひげのおっさん」。著書に『子どもの本屋、全力投球!』『子どもの本屋はメリー・メリーゴーランド』(以上、晶文社)などがある。
 
 

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