親が普段何気なくかけている言葉は、子どもの人格形成、思考パターンにおいて、どのような影響を与えるのでしょうか。

 

 

私たちの自己イメージがどのようにつくられてきたのか、ちょっと考えてみましょう。たとえば、あなたが「私はだらしない」という自己イメージをもつとしたら、きっと幼い頃から「あなたはほんとにだらしないわね」というような言葉を投げかけられていたはずです。

とくに親から投げかけられた言葉や親の口ぐせは、自己観や人生観の土台になります。「どうせムリ」と諦めぐせを身につけている子、すぐに「めんどくさい」といってラクをしたがる子も、親の口ぐせの影響を受けているものです。

子どもは、無意識のうちに親の口ぐせを真似るようになります。それは、親の口ぐせになっている言葉が子どもの心の中に定着している証拠です。心の中で繰り返される言葉は、ものの見方や考え方に影響します。こうして親の口ぐせが子どもの人生を方向づけていくのです。

 

子育てにおける「口ぐせ」のプラス&マイナススパイラル

 

お子さんは、普段どんな言葉をよく使いますか? 一度チェックしてみてください。

言葉から、前向き思考が育っているかが見えてきます。

 

・「いい言葉」をかけられ続けていると……

 

周りの子が諦めかけていても、「大丈夫、なんとかなるよ」「がんばろう」とみんなを鼓舞して粘り強くがんばろうとする子がいます。そのような子は、「大丈夫、なんとかなる」といった親の口ぐせや、「がんばらなくちゃ」といった親の口ぐせを無意識のうちに心の中に取り込み、自分自身の口ぐせにしているのです。

親が前向きの口ぐせを身につけていると、子どもは人生に対して前向きの姿勢を身につけていきます。そのことを肝に銘じて、できるだけ前向きの口ぐせを身につけ、言葉を投げかけるようにしましょう。

 

・「悪い言葉」をかけられ続けていると……

 

何かにつけて「どうせムリ」「きっとダメだよ」と言って、すぐに諦めてしまう子がいます。そのような子は、「どうせムリ」という親の口ぐせや、「もう、ほんとにダメなんだから」という親の口ぐせを無意識のうちに心の中に取り込み、自分の口ぐせにしているのです。

「あー、めんどくさい」「もう、やだ」「ほんとにイライラする」といった口ぐせも同じです。こういった後ろ向きの口ぐせを親が身につけていると、子どもは人生に対して後ろ向きの姿勢を身につけていきます。子どもの前では、マイナスの言葉はできるだけ口にしないことが大切なのです。

 

「口ぐせ」のメカニズム~つい同じ言葉を言ってしまう理由~

 

口ぐせは思考パターンをつくります。

逆に言えば、口ぐせは思考パターンのあらわれとも言えます。

自分自身がよく言う言葉から、自分の思考パターンの特徴を知ることができます。

そして、それは子どもに受け継がれていきます。

 

・理由1:子どもをコントロールしようとしすぎる

 

「なんでできないの!」「ほんとにダメね!」といった親の口ぐせのせいで、「どうせムリ」「きっとダメだよ」が口ぐせの、自信がなくすぐに諦める子になってしまうというのは、よくあることです。その場合、子どもを自分の思うようにコントロールしようとしすぎるところに問題があると言えるでしょう。

人それぞれに個性があるものですし、子どもには子どものペースがあります。そこのところを踏まえていないと、ムキになって子どもに否定的な言葉を投げかけてしまいます。

 

・理由2:自分自身の感情をコントロールできていない

 

感情的な親は、好ましくない言葉を子どもに投げかけがちです。冷静な親なら「どうしたらうまくできるかな?」と声をかける場面で、感情的な親は「なんでできないの!」と叫んでいます。冷静な親なら「もう少し急がないと。さあ、がんばろう!」と声をかける場面で、感情的な親は「なにやってるの! もう、イライラさせないでよ!」と叫んでいます。 否定的な言葉を子どもにぶつける親は、自分自身の感情コントロールができていないのです。

 

・理由3:自分自身の思考パターンが悪い

 

口ぐせは思考パターンのあらわれだと言いましたが、悪い口ぐせがあるということは、好ましくない思考パターンを身につけてしまっているということになります。

すぐにめんどうくさがるから、「あー、めんどくさい」と口にしてしまう。冷静さに欠け、すぐにイライラするから、「ほんとにイライラする」と口にしてしまう。すぐに諦める質だから、「もうムリ」「どうせムリ」「もう、やだ」と口にしてしまう。悪い口ぐせの背後には、それに密着した好ましくない思考パターンがあるのです。

 

「悪い口ぐせ」を直すための親の心がけ

 

少し意識するだけで、言葉は変わります。心の栄養となるような「いい言葉」を子どもにたくさんかけましょう。

 

・「親の思うようには動かない」ということを頭に刻む

 

子どもは、子どもなりに、自分で納得しながら前に進むものです。「早くやりなさい!」「なんでできないの!」と急かすと、子どもは自分の理解の枠組みで物事を吸収することができません。私が実施した意識調査でも、子育て中の親のほとんどが、「子どもが思い通りにならない」といってイライラしています。

社交的な親は、内気な子にイライラします。神経質な親は、大ざっぱな子にイライラします。でも、子どもは親とは別人格、親の思うようには動きません。このことをしっかりと頭に刻んでおきましょう。

むしろ親がコントロールしやすい子、つまり親の言いなりに動く子のほうが、自分がないという意味で、自立できない心配があります。指示待ち、つまり言われたことしかせず、自分で考えて動くことのできない若者が多いことが問題になっていますが、親が思うようにコントロールできる子は、自分から動けない子になる怖れがあるのです。思い通りにならないのは自分がある証拠。そう思って気長に向き合っていきましょう。

 

・悪い口ぐせを意識し、前向きの口ぐせを習慣化する

 

口ぐせというのは、無意識のうちに習慣化しているもので、わざと言うわけではありません。つい、うっかり口にしてしまうのです。それを直すには、まずは「自分にはこんな悪い口ぐせがある」ということを意識することです。一度紙に書き出してみるのもいいかもしれません。意識することで、うっかり口に出しそうになるのを防ぐことができます。

それと同時に、よい口ぐせ、前向きの口ぐせを習慣化するのが効果的です。つい言ってしまっている悪い口ぐせを、よい口ぐせに置き換えてしまうのです。「たいしたことない」「大丈夫、なんとかなる」「さあ、もうひと踏ん張りだ」「がんばらなくちゃ」といった前向きの言葉を、状況に応じて意識してつぶやくようにしましょう。

子どもに対しても、「大丈夫だよ」「なんとかなるよ」「もうひと息だね」「がんばろうね」といった前向きの言葉を投げかけるように心がけてください。そうしているうちに、自分自身の中で前向きの口ぐせが自然に習慣化していき、思考パターンも前向きになっていきます。

 

【著者紹介】

榎本博明(えのもと ひろあき)

MP人間科学研究所代表

1955年、東京都生まれ。東京大学教育心理学科卒業。心理学博士。心理学を活かした教育講演やビジネス研修などを行なう。著書に『ほめると子どもはダメになる』(新潮社)他多数。

 


 

のびのび子育て

「PHPのびのび子育て」は未来を担う子どもたちの健全な成長と幸せを願って、発刊している月刊誌。 2016年7月号の特集は<親の「口ぐせ」が「いい性格」をつくる!>です。

 

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