左半身に麻痺がありながら、子育てされている水谷さん。体調を崩したとき、娘さんが口に入れてくれた1粒のごはんに、元気をもらいます。

 

 

 

私には、脳梗塞の後遺症があります。左半身が麻痺した状態での妊娠、出産、子育ては、想像以上にたいへんで疲れるものでした。

 

不育症で何度も流産し、でもあきらめきれず、ようやく授かった子でした。薬を服用しながらの妊娠。左手が使えないので、出産時には分娩台の手すりに足を引っ掛けて踏ん張りました。

 

抱っこができないので、母乳は寝ころんだ状態であげました。お風呂に入れることもできず、実家の母や祖母に助けてもらいながらの子育てでした。

 

ようやく娘が1歳になり、実家から自宅に戻ることになり、私が1人で子どもの面倒を見る時間が増えました。危ないこともあったけれど、なんとか毎日を乗り切っていました。

 

娘が1歳半を過ぎたある日、私は具合が悪く、少し横になって休んでいました。それを見た娘が、心配からでしょうか、どこからかごはん粒を持って来て、1粒、私の口の中に入れてくれました。私は「あれっ?」と思いながら、そのままじっとしていると、もう1粒。それから、また1粒。

 

なんとか元気になってほしいという娘の思いが、じんわり伝わってくるようでした。子どもなりの優しさと励ましがあたたかく疲れを溶かしてくれ、元気が湧いてきました。

 

子育てはたいへんなことばかりだと思っていたけれど、この子を育ててきて本当に良かったと思いました。娘は1歳半になっても、歩くことも話すこともなかなかできなくて気がかりだったのですが、「ちゃんと人を思う気持ちは育っている、大丈夫」とどこか安心しました。

 

2歳の誕生日直前に歩き始め、話し始めた娘は、今は3歳になりました。成長が遅い子だと思っていましたが、あれからも、私が寝ていると額に手を当てたり、私の様子を見て頭をなでなでしてくれたりしていることに気がつきました。大人の真似をしながら、相手を心配し、娘なりに毎日1歩ずつ成長していたのです。

 

幼稚園に通いだしてからは、もっといろいろな顔を見せてくれるようになりました。うがいができた、挨拶を言えるようになった、お友だちができた......。そのつど、嬉しい顔、叱られた顔、自慢げな顔、やんちゃな顔など、たくさんの違った顔を見せてくれて、毎日が新しい娘との出会いです。

 

そんな小さな発見に彩られ、私の毎日も色づいています。おどろきや喜びを日々与えてくれる娘。妊娠、出産は体に無理があったかもしれないけれど、やってみて良かったと心から思うのです。

 

言葉も話せない娘が、ごはん粒を口に入れてくれたあの日のできごとは、私にとって大きなおどろきでした。あのときから、親が考えているよりも子どもはたくさんのことを学んでいるのかもしれないと思うようになりました。

 

日々、できないことばかりを気にしてしまう私ですが、〝学んだことはいつか花ひらく〟そう思い、心に余裕をもって過ごせるようになることが、当面の課題です。

 

水谷京子(愛知県名古屋市・44歳・主婦)

 


 

のびのび子育て

「PHPのびのび子育て」は未来を担う子どもたちの健全な成長と幸せを願って、発刊している月刊誌。 2016年7月号の特集は<親の「口ぐせ」が「いい性格」をつくる!>です。

 

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