家庭での「食育」によって、子どもたちはさまざまな力を伸ばしていきます。

 

 

 

おうちで伸ばそう! 子どもの将来に必要な5つの力は食卓で育む

 

1位「まんま」、2位「おっぱい」、3位「いないいないばぁ」、4位「ママ」、5位「はーい」。これは、NTTコミュニケーション科学基礎研究所が調査した「赤ちゃんが初めて話した言葉のランキング」(2008年発表)です。1位と2位を占めているのが食べもの。親子のコミュニケーションのスタートは、食を介して行なわれていることがわかります。

 

家庭の食が、子どもを人として育みます

 

そしてその先も、親子で楽しい食の時間を共有することが、子どもの育ちに大きな役割を果たしていきます。家庭の食は、子どもが人間らしく育っていく上で、もっとも重要な環境でもあるのです。

 

食事の挨拶や姿勢、食器と食具の使い方、上手に食べるためのマナー、食卓でのコミュニケーション、その場にあわせて食を話題にできる力、食べものの好み(嗜好)、上手に噛めること、家族が気持ち良くなれるような会話、片付けのお手伝いなど、人として必要とされる多くのことを、子ども時代の家庭の食から身につけていくことができます。

 

食育はすべての能力につながる基礎をつくります

 

子育てや教育の目的は、子どもたちの「知」「徳」「体」を育てること、すなわち「知育」「徳育」「体育」だと言われます。食育は、そのいずれにもつながるものであり、基礎をなすものなのです。「知育」の面では、食べものの名前や旬や栄養などに関心をもつとともに、知識を増やし、挨拶や、食器や食具を上手に使うなど正しい食行動を身につけていきます。

 

「徳育」の面では、家庭菜園や調理などのお手伝いを通して、食べものの大切さやつくってくれた人に感謝する気持ち、親や友だちと分け合ったり、譲り合ったりなど、食を介した人間関係、さらには、命の大切さにも気づいていきます。

 

「体育」の面では、生活リズムを確立し、嗜好を発達させ、好きなものや食べたいものを増やし、咀しゃく機能を発達させて上手に噛めるような力をつけていきます。

 

「知」「徳」「体」の力は、脳内の神経ネットワークとして組み立てられるものであり、そのためには良質な五感情報(視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚、つまり色や形、音、匂い、食感や温度、味の情報)を子どもの脳に届ける必要があります。

 

多様な色、形、食感、匂い、味の食べもの、楽しい会話のある食卓、お手伝いなどの食のプロセスへの関わりによって、多くの五感情報を子どもの脳に送ることができます。その積み重ねが、優秀な脳内の神経ネットワークをつくることにつながります。

 

・家庭の食が育てる3つのこと

 

体育…健康的な生活リズムを身につけ、咀しゃく機能を発達させて強い体を育てます。

 

徳育…調理などのお手伝いを通して、感謝の気持ちや人間関係を築く能力を伸ばします。

 

知育…食べもの(食材)に関心をもつことで、知識を増やし、食事のマナーを身につけます。

 

食卓で育つ大切な5つの力

 

家庭での「食育」によって、子どもたちはさまざまな力(能力)を伸ばしていきます。その中から特に大切な5つの力を見てみましょう

 

【1 感じる力、考える力】

 

子どもがもっている五感を、すべて同時に働かせることができる活動が食です。子どもたちは、食から多くの五感情報を脳に取り入れています。

 

さらに、食べものそのものの味や匂いの情報だけでなく、「大人の働きかけ」「食卓の雰囲気」「栽培や収穫の体験」「生産の場の見学」「買い物のお手伝い」「料理づくりのお手伝い」などの、食のプロセスに関わる体験をすることによっても、多様な五感情報が脳に送り込まれます。そのことが、子どもの感じる力、考える力を育てていきます。

 

【2 言葉で表現する力、人と関わる力】

 

五感で感じたことを、子どもたちは言葉で表現します。

 

「甘い」「酸っぱい」「甘辛い」「うすい」「濃い」といった味、「もちもち」「とろっ」「つるつる」「パサパサ」といった食感、「花形」「星形」「くし形」「つぶつぶ」「虹の形」などの形状、「酸っぱい匂い」「カレーの匂い」「だしの匂い」「砂糖の匂い」といった匂い、「パリッ」「サクサク」「シャキシャキ」「コリコリ」などの音を、自分なりの言葉で表現していきます。

 

こうした力を引き出す上で心がけたいことは、食事のときに「美味しい?」と聞くのではなく、「どう感じたの?」という問いかけをすることです。こうすることで感じる力、考える力、そして、それを言葉で表現する力が伸びていきます。さらに、言葉の力を基礎にして、人と関わる力を伸ばしていくことにもつながります。

 

【3 知識とその基礎になる知的な関心】

 

2歳ごろから、食べものの名前や料理名を少しずつ覚えはじめ、4歳ごろには、食べものの旬がわかるようになります。また、食事に主食、主菜、副菜、汁物がそろっていることも理解できるようになります。5歳にもなれば、食べものを「赤・黄・緑」の3色食品群にわけることもできるようになり、栄養素の働きを理解して、それらをバランスよく食べる必要があることがわかるようになります。

 

このように、食との関わりで知識を増やしていくとともに、いろいろなことに興味をもって「これはなに?」と疑問をもってたずねることができ、それが知的な関心を大きく広げていくことにつながります。

 

【4 自信と自己肯定感】

 

お子さんに食事づくりのお手伝いをしてもらいましょう。そして、お手伝いをしてくれたことをほめてあげましょう。ほめられることで、子どもに自信、ひいては自己肯定感が育まれていきます。

 

食事づくりは、他のお手伝い(たとえば新聞を取ってくることなど)と違って、どんどん発達していきますから、くり返しほめてあげることができます。その積み重ねによって、子どもは自分に自信をもつようになり、自己肯定感を築いていくのです。

 

自己肯定感こそ、幸せ感の根底にあるものなのです。

 

【5 見通しをもって、物事を進める力】

 

食事づくりのお手伝いは、できあがりをイメージして、見通しをもって進めていく作業です。幼い時期のお手伝いは、親から言われたことをそのままするだけですが、やがて、一連の作業を任せることができるようになり、頭の中でどんな手順で作業を進めていくかを構想できるようになります。

 

失敗することもありますが、失敗するからこそ、次は失敗しないようにと、段取りを考えることができるようになります。それをくり返すことは、見通しをもって物事を進める力や、段取りする力を育てていくことにつながります。

 

【まとめ】

 

家庭の食を通して、子どもが身につける力

 

・五感に食のプロセスに関わる体験をプラスすることで、感じる力、考える力を育みます。

 

・五感で得たことを、言葉で表現することで、言葉でのコミュニケーション力を育みます。

 

・食材の名前や料理名、季節(旬)などに興味をもつことで、知的関心を大きく広げます。

 

・食事づくりのお手伝いを通じてほめられた経験が、自信や自己肯定感を育み、幸せ感を高めます。

 

・食事づくりのお手伝いで、物事の段取りを考え、たとえ失敗しても、次は失敗しないような見通しをもって物事を進める力を育てます。

 

食育は、楽しく食べることから

 

子どもの食育で心がけたいもっとも大切なことは、楽しく食べることです。

 

楽しく食べることをくり返すことで、子どもたちは食の時間が大好きになっていきます。「おすいた~。今日の晩ごはん、なあに?」「なにかお手伝いさせて」と、ごはんの時間が待ちどおしくて、積極的に食と関わりたいという行動にもつながっていきます。

 

ただし、そんな姿に近づけるためには、ママとパパががんばりすぎないこと。個人差があるのは当たり前ですから、他の子どもと比べるのではなく、長い目で見て、わが子が少しずつ楽しく食べる姿に近づいていればそれでOKです。

 

「親子での楽しい食卓づくり」を、マイペースで進めていきましょう。

 

【著者紹介】

小川雄二(名古屋短期大学保育科教授)

おがわ ゆうじ◎1955年、愛知県生まれ。名古屋大学大学院農学研究科博士課程修了。「食と農の応援団」(http://www.ruralnet.or.jp/ouen/)メンバー。著書に、『五感イキイキ! 心と体を育てる食育』(共著・新日本出版社)などがある。

 

 


 

のびのび子育て

「PHPのびのび子育て」は未来を担う子どもたちの健全な成長と幸せを願って、発刊している月刊誌。 2016年11月号の特集は<かしこい子に育つ「ごはん習慣」>です。

 

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