楽しみにしていた初めての子。でも、その子はお空へ旅立ちます。悲しみに沈む、堀さんは再び、妊娠します。

 

 

 

私には、お空に5歳の娘、わが家に4歳の息子がいます。娘を妊娠したときは、ただ、赤ちゃんの誕生が楽しみで、妊娠すれば、やがて赤ちゃんをこの腕に抱ける......、それが当たり前だと信じていました。しかし、妊娠と同時に私自身の病気も発覚しました。

 

病気と妊娠で不安がつのる中、娘はお腹の中で成長をやめ、そのまま心臓の動きを止めてしまったのです。産声が聞こえない、痛くて、つらいだけの出産。こんなに悲しいことが起こるなんて、思ってもみませんでした。 

 

家に引きこもり、泣き続ける日々。どうして、私だけ? どうして、わが子なの? 苦しくて、苦しくて、死にたい――。

 

でも、娘のことを忘れることはありませんでしたが、時間が薬となって少しずつ前を向き始めたころ、再び妊娠しました。きっと、娘がお空から赤ちゃんを届けてくれたんだ! とうれしい反面、また同じことになったら、どうしよう、という不安はつきまといました。しかも、しばらくして、赤ちゃんの成長が遅れていることがわかりました。不安だらけの入院。ほかの赤ちゃんを見ては、私は無事に産めるのかしら、と、考え込んでしまい、病室で1人、涙を流していました。

 

それでも、娘のときには感じられなかった胎動に勇気づけられて、なんとか出産の日を迎えました。1474グラムと、とても小さな男の子でした。大人の手のひらで覆えるほど、小さなわが子。「生きている」、それだけでうれしい気持ちでいっぱいになりました。

 

今、4歳になった息子は、同い年のお友だちに下の子ができる年頃になりました。私は持病があるため、次の妊娠は危険だと医師に言われています。けれども、息子のためにも、私のためにも赤ちゃんがほしい......、そう、いつも考えていました。

 

街で赤ちゃんを見かけて「ママも赤ちゃん、ほしいなあ」とつぶやくと、「しょうちゃんが、ママの赤ちゃんになってあげる!」と、かわいいひと言で、息子が和ませてくれました。

 

ところが、保育園のお友だちが、弟の乗るベビーカーを押している姿を見たある日、「しょうちゃんも、赤ちゃんほしい! 赤ちゃんをベビーカーに乗せて押したいー!」と叫んで泣き崩れてしまったのです。今まで見たこともないくらいの泣き方をする息子に、私は「ごめんね、ごめんね」と言いながら、涙が止まりませんでした。

 

息子が生きているだけでうれしい、そう感謝して育ててきたはずなのに。自分より小さな子にやさしく接する息子を見るたびに、つい「赤ちゃんがほしいなあ」とつぶやく私自身を反省しました。

 

もう、私からは絶対に言わない。そう決心しました。

 

妊娠、出産は奇跡。

 

今、私の膝の上で「ママー」と甘えてくる息子を見て、幸せをかみしめています。「生まれてきてくれて、ありがとう。私をママにしてくれて、ありがとう」と、息子が眠りにつくときに、いつも話しかけています。

 

お空で見守ってくれている娘に、いつか会う日まで、今、目の前にいる息子を愛し、子育てを楽しみ、生きていきたいと思います。

 

堀 早苗(京都市・35歳・高齢者施設勤務)

 


 

のびのび子育て

「PHPのびのび子育て」は未来を担う子どもたちの健全な成長と幸せを願って、発刊している月刊誌。 2017年1月号の特集は<子どもに伝わらない「叱り方」>です。

 

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