次男の入院と手術のため長男と離れて看病する日々。五月女さんが見つけた「幸せ」は――。

 

 

次男は、心臓の病気を抱えて生まれてきた。

 

病気がわかったのは、生後10日目、産院を退院する日の朝の診察で、心雑音がすると言われ、大きな病院への紹介状を渡されて、受診したのだ。診断は、心室中隔欠損症と心房中隔欠損症。妊娠中は、何の異常もなかっただけに、私のショックは大きかった。

 

予定日より3週間も早く生まれてしまったことが、いけなかったのか。低体重だったことが、よくなかったのか。医師には「どちらも関係ありません」と言われたが、健康な体で産んであげられなかった自分を責めた。

 

次男は生後3カ月で手術を受けることになり、入院中は私も付き添うことになった。

 

一番心配だったのは、長男のこと。

 

そのとき、長男はまだ2歳半。次男が生まれる前から、すでに赤ちゃん返りがはじまっていたのだ。それまで保育園に送っていった朝は、元気に「バイバーイ」と手を振ってくれたのに、「ママ、ママ」と言って、私から離れなくなっていた。そんな長男が、夫と2人だけで夜、寝られるだろうか。

 

手術当日と翌日は、急変に備えて夫と私が病院の宿泊棟に泊まるように言われていた。そこで、この2日間、長男は私の実家で見てもらうことになった。

 

幸い、手術は、無事に成功した。手術から2日がたったとき、両親のどちらかが残ればよいことになった。集中治療室を出て一般病棟に移れば、私はずっと付き添うことになる。そこで夫が残り、私が一時帰宅することにした。

 

実家に長男を迎えにいくと、思いのほか元気な姿で安心した。その夜は、長男と2人で自宅に戻った。

 

寝る前に、「お留守番をがんばってくれて、ありがとう。○○くん(次男)も病院でがんばっているよ。今日はママと2人っきりで寝ようね」と言うと、長男は、「みんなで......」と答えたのだ。

 

次男が生まれてから、家族4人は同じ部屋で寝ていた。私がいなくてさびしい思いをさせた分、今夜は思いっきり独り占めで、甘えさせようと考えていた。ところが長男の中には、すでに弟を家族として認め、「みんなで寝たい」という思いが育っていたのだ。驚いたのと同時に、うれしくなった。次男が生まれる前は、あんなにまとわりついてきた長男が、わずかな間にたくましくなっていた。

 

翌々日に次男が集中治療室から一般病棟に移るという連絡が入り、私はまた病院へ行くことになった。入院に付き添っている間、私は家事のいっさいができない。それまでは毎日、同じことのくり返しである家事をこなしながら、グチをこぼすことも多かった。しかし、病院で1人食べるおにぎりやパンの味気なさ、コインランドリーに行かなければ洗濯ができない不便さの中で、ふだんの、ありきたりの毎日が輝かしく思えた。次男が退院した日に、自宅で洗濯物を干しながら、やっぱり、家が一番いい、とつくづく思った。

 

欲を言えばきりがない。しかし、家族みんなで過ごすことができる毎日が、何気ないこの一瞬一瞬の積み重ねが、かけがえのないほんとうの幸せの日々なのだ。長男の「みんなで」という言葉が、それに気づかせてくれた。

 

五月女詩子(群馬県太田市・40歳・教員)

 


 

のびのび子育て

「PHPのびのび子育て」は未来を担う子どもたちの健全な成長と幸せを願って、発刊している月刊誌。 2017年2月号の特集は<3・7・10歳がわかれ道! 心が荒れる子・おだやかな子>です。

 

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