PHP研究所刊『どこまでも生きぬいて』で、「夜回り先生」こと水谷修さんは、生きることに絶望している子どもたち、そして大人たちへ、命の尊さ、生きることの素晴らしさを、熱く静かに語りかけます。

 

 

ここでは、本書の一部を抜粋編集してお届けします。

 

どう生きるか

 

東日本大震災の年に届いた、ある一人の少女からのメールを紹介します。

 

「水谷先生、覚えていますか。気仙沼の高校2年生です。私は、中学2年生の頃から、先生に、『お父さんがお酒を飲むと暴れて、妹や弟、母さんや私をなぐる。死にたい』『彼氏に捨てられた。死にたい』『行きたい高校にいけない。死にたい』、たくさんの『死にたい』メールを送りました。先生、気仙沼の私の家、津波でやられました。でも、家族みんなは、大丈夫です。中学校の体育館、避難所にいます。そしたら、3日前に、私が、リストカットしたり、OD(overdose オ ーバードーズ、薬の過剰摂取)したりした時、いつも治療してくれたドクターが、私の避難場所に来てくれました。私のことを見つけて、『良かったな』と抱きしめてくれました。でも、その後がひどい。『そうだ、おまえは、病院のプロだ。医療班に入れ』と医療班に入れられました。先生、夕べの気仙沼、寒かったんだよ。私の患者のおばあちゃんが、『寒い、寒い』って震えてた。

 

だって無理もない。冷たい体育館の床に、毛布2枚。掛ける毛布も2枚しかないんだ。私、あんまりかわいそうだから、私の毛布、全部おばあちゃんにかけてあげた。そして、おばあちゃんの毛布に潜り込んで、抱きしめて、いい子いい子してあげた。そしたら、おばあちゃん、泣きながら、『ありがとね。ありがとね』って言いながら、ぐっすり眠ってくれた。私、やっとわかった。私が、『死ぬ、死ぬ』と言うたびに、先生は、『人のためになんかしてごらん。返ってくる優しさが、“ありがとう”の一言が、あなたの明日を拓く、生きる力になる』って返事してくれた。このことだったんだね。先生、もう一つわかったよ。私が、『なんで生きていなくてはならないの』『なんで死んではいけないの』って先生に聞いた時、いつも、先生はこう言った。『人は、だれかを幸せにするために、生きるんだよ。だれかを笑顔にするために、生きなくてはならないんだよ』。このことだったんだね。先生、私、もう切らない。ODもしない。一生懸命勉強して、人のいのちを助ける仕事につく。看護師さんになる」

 

私はいつも、私に今の苦しみや哀しみを相談してくる人たちに、人のためになにかすることを勧めています。家でお母さんの手伝いをする。町で困っているお年寄りを手助けする。道にゴミがあれば拾う。

 

みなさん、苦しみ悩むのは、なぜでしょう。それは、今の自分にとらわれ、自分のことしか考えていないからです。そんな時は、人のためになにかしよう。

 

返ってくる優しさが、みなさんに、生きていることの大切さを教えてくれます。

 


 

水谷修著『どこまでも生きぬいて』

水谷修著『どこまでも生きぬいて』

「夜回り先生」水谷修氏が、生きることに絶望している子どもたち、そして大人たちへ、命の尊さ、生きることの素晴らしさを、熱く静かに語りかけます。