親子は日々、言葉を交わして豊かな関係を育んでいます。言葉の影響は大きく、子どもの将来を左右することも。わが子を幸せに導くプラス言葉とは――。

 

 

子どもを幸せにする言葉って、どんな言葉?

 

いま、私の手もとに1枚の写真があります。車椅子に乗った女の子に、お母さんが笑顔を投げかけています。ふりそそぐ木漏れ日の中で、女の子はお母さん以上に素晴らしい笑顔を返しています。

もう20年ほど前の写真ですが、今でもはっきりと母娘のあふれる笑顔を思い出すことができます。私がいままで見た笑顔の中でも一番の素晴らしい笑顔です。

このお子さんは当時6歳。生まれつき障害のある彼女は、2歳くらいまで、泣いたりむずかること以外に表現の手段をもっていませんでした。表情も、いつも変わらぬ無表情。それでもお母さんは、毎日笑顔を向けながら、

「今日も元気だね。うれしいね!」

という言葉をかけ続けたのです。

そして、彼女が初めてニッコリと笑い返したのは3歳を少し過ぎた頃。表現手段をもたなかった子が、初めて気持ちを表に出したのです。お母さんは大喜びで、

「あなたを産んで本当に良かったわ」

と語りかけたそうです。娘さんの笑顔もまた、「お母さん、ありがとう」と語っているようです。

 

この母娘は、どうしてこんなにハッピーなのでしょう? それは、比べる不安から解放されているからです。だから母親は子どもを丸ごと見つめ、その上で丸ごと受け入れ、素敵なところを見つけて抱きしめることができるのです。その結実が、あの笑顔です。

「ダメな子ね!」

「なんど言ったら、わかるのよ」

「いいかげんにしなさい!」

誰でも口にしがちで、子どもの伸びる芽を摘んでしまう言葉の代表です。こんな言葉が出てくるベースこそ、比較と不安なのです。紹介した母娘の場合を考えてみてください。最初から比べないから、しっかりとわが子を見つめられたのです。そして、まず存在そのものを喜び、小さな成長一つひとつを喜んだのです。

そうなるためには、なにより、良いところも悪いところも含め、まず自分自身を抱きしめてください。そうすれば、きっと子どものことも同じように抱きしめることができるでしょう。

 

こんな言葉をかけましょう!

 

幸せに導くプラス言葉といってもどんな言葉なのでしょうか。具体的な言葉を紹介します。

 

【生まれてきてくれて、ありがとう】

…無条件で愛しかったあの頃を忘れずに。それと子どもが何かしてくれたら、ありがとう!

 

【○○ちゃん、大好きよ!】

…いつでも、何があっても、この言葉でギュッと抱きしめましょう。

 

【ごめんね】

…たとえ相手が子どもでも、自分が悪いときには素直にこの言葉を。信頼度が高まります。

 

【おはよう! いい朝ね】

…「おはよう」から「おやすみ」まで毎日のあいさつを忘れずに。それにポジティブな気持ちを添えれば、もっといいですね。

 

【さあ、ママはお洗濯 どっちが早いかな?】

…なにをグズグズしているの!の代わりに。遊びの延長なので、子どもはノリやすいです。

 

【空がきれいだね お花が美しいね】

…身近な自然に目を向ける言葉を。子どもの心が開けます。

 

【平気、平気! だって自分でやれたじゃない】

…何かに失敗したら、「だから無理だって言ったのに」はよくありません。

 

【ママはうれしいよ!】…ちょっとしたことでも、思いっきり大げさなくらい喜んでみせましょう。

 

【ママも勉強するよ】

…子どもに「勉強しなさい」を100回言うより、親が何かを始めるのが効果的。

 

【どうしたのかな?】

…なかなか言うことをきかなかったり、反抗するときは、まず子どもの話を聴いてみましょう。

 

【そう、悲しかったね つらかったね】…子どもが泣いたり、落ち込んだりしていたら、問い詰めるより、まず子どもの気持ちに同調しましょう。

 

【きっとできるよ】

…子どもが何かにチャレンジしようとしたら、勇気づけのバックアップを。

 

【だいじょうぶ!】

…失敗したり、困ったりしても、ママの太鼓判は効果抜群。

 

幸せ言葉で幸せ家族に!

 

いくらお母さんが、自分を抱きしめ、子どもを抱きしめようとしても、家庭の中がギスギスしていたのでは、プラス言葉だって出てきません。

プラス言葉がたくさん生まれてくる家庭は、まず夫婦仲がよいことが必須。子どもは夫婦の愛の結晶ですから、もし両親に喧嘩が絶えなかったら、自分の存在そのものに対して否定的になってしまいます。

次に大切なのは、「おはよう」から始まって「おやすみ」までのあいさつ。夫婦はもちろん、子どもと親、子ども同士、親同士のあいさつがたくさん飛び交っている家庭は、プラス言葉の宝庫です。

この場合も、まずしっかりしたいのは夫婦のあいさつ。つい、ないがしろにしがちですが、これがしっかりできていると、自然に家庭全体に広がります。

それから、おじいちゃん、おばあちゃんの存在も大切です。最近は、いくじい、いくばあなどという言葉もあって、祖父母の育児参加が増えています。でも、あまり深入りしてもらうのは考えもの。親と子どもの間の緩衝材になってくれるくらいがちょうどよいのです。

 

【幸せ言葉が多くなる家庭の条件】

・夫婦仲がよい→子どもが自分を肯定できる

・あいさつが飛び交っている→プラス言葉が、子どもに広がる

・祖父母のほどよい存在感→ほどよい関わりで親子間のクッションに

 

実例 幸せ言葉でガミガミ激減

 

ギスギスしていた家庭が、祖父母の来訪をきっかけに、幸せ言葉が広がり、好転しました――。

 

Nさんのお宅は、小学6年生のお姉さんと2年生の弟の4人暮らし。Nさんは英語塾の先生で、ご主人は大手企業に勤める商社マンです。毎日帰宅が遅く、子育てや家事のサポートがほとんどない夫に、Nさんのイライラはつのるばかり。そんな状況の中で、上の娘さんが不登校になってしまいました。家の中の会話も、あまりない状態でした。

「とにかく朝食だけでも、家族そろって食卓を囲むようにしてみたら?」

そんなアドバイスをしましたが、なかなか実行できません。そんな折り、Nさんのご両親がしばらくの間、遊びにいらしたのです。子どもたちにとっては、おじいちゃんとおばあちゃんです。これが好転のきっかけでした。

まず朝食ですが、祖父母がそろう食卓がにぎやかになりました。そうするとご主人も都合をつけて同席する機会が増え、おじいちゃん・おばあちゃんへのあいさつがよい刺激になって、みんなが明るくあいさつを交わすようになったのです。

Nさんがイライラを子どもたちにぶつけてしまったときは、おじいちゃんやおばあちゃんが間に入ってなだめてくれることで、子どもたちの気持ちも楽になったのです。気がついてみると、Nさんのガミガミは激減。娘さんの不登校も解消していたのです。

 

【著者紹介】

金盛浦子(東京心理教育研究所所長)

1937年生まれ。心理カウンセラー。小学校教諭を務めた後、大学病院などで心理臨床経験を積み、'78年に東京心理教育研究所を開設。'90年より自遊空間SEPYを主宰。著書に、『伸びる子の9割は、「親の口グセ」で決まる』(PHP研究所)など多数。

 

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のびのび子育て

「PHPのびのび子育て」は未来を担う子どもたちの健全な成長と幸せを願って、発刊している月刊誌。 2016年月3号の特集は<子どもを幸せにする言葉・キズつける言葉>です。

 

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