予定日をすぎた第2子の誕生を待つ高橋さん。急にはじまった陣痛に、反抗期の長男は――。

 

 

昨年、第2子となる女の子を出産しました。上の子は、5歳の男の子です。

出産予定日を2日すぎた日の夜のことです。その日も陣痛の前兆がなく、予定日をすぎたことで不安でいっぱいになっていた私は、また1日が終わってしまうことにため息をつきながら、寝ている息子の隣に寝転がりました。

すると間もなく、突然の陣痛。はじまりから激しい痛みでした。痛みでしばらく動くことができず、しかたなく息子が寝ているそばで、できるだけ静かに病院に電話をしました。ところが、ヒソヒソ声で話していたにもかかわらず、ぐっすり眠っていたはずの息子が、目を覚ましてしまったのです。

「ママ、もう病院に行っちゃうの? ぼくはママがいないとさびしいよ。朝ごはんまでは一緒にいてよ」

そう言って、息子は大号泣。急な展開に、不安でいっぱいになっているようでした。

息子の素直な気持ちの1つひとつが胸に刺さります。息子が望むように、せめて朝食までは一緒にいてあげたかったものの、それは、もう無理な状態でした。

息子を強く抱きしめ、手を握って、背中をさすりながら、「いつでも病院に会いに来てね。ママは、すぐに帰ってくるよ。パパも、ばあばも、じいじもいるよ。1人じゃないよ」と、私のありったけの気持ちを、何度も、何度も伝えました。

陣痛がはじまる前は、反抗期の息子に対して、気持ちの余裕が全然ありませんでした。そんな私が、この痛みの中で考えていたのは、息子と、今、本気で向き合えていることの幸せでした。

息子に私の気持ちをくり返し伝えながら、出産に立ち会うパパの到着を待ちました。その間に、どんどん進む陣痛。すでに数分おきになっていて、「痛い、痛い」と思わず叫ぶ私。

そんな私の背中を、いつの間にか「ママ、がんばれ。大丈夫?」と涙をうかべながら、小さな手で必死にさすっている息子の姿がありました。ずいぶん大きくなった体と、まだまだ小さい手のぬくもり......。痛みの中で、ホッとしている自分がいました。

ようやくパパが帰宅すると、息子は私から離れました。そして、急いで書いて渡してくれたのは、「ママがんばってね」という手紙だったのです。

息子だって、不安はまだまだ消えていないはず。でも、少し前までのグチャグチャの泣き顔は、私の大好きな笑顔になっていました。

赤ちゃんの誕生の前に、お兄ちゃんが誕生したんだね。もう、大丈夫。息子を誇りに思った瞬間でした。

無事に出産を終えた私は、早く息子に会いたくて仕方がありませんでした。夕方に、息子は妹と対面しました。その日から数日間、息子はママがいない夜を生まれて初めて経験し、さびしい思いをさせましたが、今では、妹のことが大好きなお兄ちゃんです。

まだまだ反抗期で、叱ることも多い毎日です。だけどそんなとき、ママは思い出すんだよ。"お兄ちゃん誕生"のときのことを。これからもママは、ずっと、ずっと忘れないよ。ずっと、ずっとママの大切な、宝物の記憶です。

 

高橋礼子(宮城県仙台市・33歳・パート)

 

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