算数ができる子と苦手な子……その違いは、日常生活の中にあります。

 

 

明日の洋服は自分で考える

 

オーギュスト・ロダンの「考える人」。彼が何を考えているのか、ということがよく話題にされます。あの彫刻が何に思いを巡らせているのかはともかくとして、ここでは「自ら考える」ということが、とても大切であるということを知っていただきたいと思います。

では、何をすればよいのか? 方法は簡単です。子どもに疑問を抱かせること―ここから「自ら考えること」は始まります。

私の塾でも、算数のできる子どもは、みな自分で考えています。

塾が終わり迎えにいらしたお母さんが子どもに向かって、

「何かプリントはもらわなかった?」

「消しゴムはしまったの?」

「宿題をノートに写したの?」

などと細々聞きながら、帰りの荷造りをお母さんがしてしまっている光景をよく目にします。

これではどんなにいい授業を受けても、算数ができるようになりません。なぜなら、お母さんがすべて世話をしてくれるので、子どもは自分で考えなくても済んでしまうからです。

低学年の保護者会で、

「ウチの子、どうしたら算数ができるようになるでしょう?」

としばしば聞かれます。そこで私は、

「子どもさんが明日着る洋服は、誰が決めていますか?」

と聞きます。すると多くの保護者の方が、

「私が決めています」

とおっしゃいます。しかし、これではいけません。明日どの洋服を着るかは、自分で考えて決めさせるようにしてください。

日常生活の中で自分で考えられなければ、いくら勉強しても算数や数学が得意にはならないのです。

 

日常生活で「かしこさ」を育てる

 

ところで、算数や数学が得意であるということは、あくまでも理系脳を身につける手段です。算数や数学が得意になるためには、小さなうちから「自分で考える」ということを身につけていく必要があります。

先ほどの例を続けますが、明日着る洋服を決めるためには、まず天気予報を見て、明日の天候や気温を把握する必要があります。では、天気予報は何時に放送しているのか、自分はどの地方の情報を見ればいいのか。また、予想気温に対して長袖がいいのか半袖で大丈夫なのか、傘は必要かなどなど、着る服を決定するために、実にたくさんのことを自分で考えることが必要になってきます。

もちろん、最初は一人ではできないので、親が一緒にやってみせましょう。「明日の洋服を決めようか」「では天気予報を見てみよう。どの地方のどの地点を見たらいいかな」「気温は今日に比べて高いから半袖で大丈夫そうだね」といった会話をしながら、「決定のプロセス」を具体的に示します。

特に10歳頃までの子どもは、勉強ができるようになるために勉強するというより、10歳までに日常生活でやったこと、それまでに身につけたかしこさが勉強に表れる―私はそう考えています。ですから、10歳頃までは勉強ができるために何かをするより、日常生活でかしこく育てることに注力してください。日常生活で何をしてきたかが、とても大切なのです。

自ら考える力は、勉強で養われるのではなく、日常生活で培われます。自分で考えることが身についた結果、勉強が得意な子どもになり、ひいてはそれが理系脳につながっていきます。

 

子どもの判断を尊重する

 

日常生活において自分で考えることのできる子どもは、勉強でも自分で考えられます。その結果、算数を含めた「勉強ができる」子どもになるのです。

子どもが自ら判断したところで、親からすれば、「エッ?」と思うようなこともしばしばあると思います。しかし、それが客観的に見て、また常識に照らしてみて大きく外れていなければ、親の考えを押しつけて子どもの考えを否定せず、大目に見てください。明らかにおかしいと思うときでも、最初から否定せず、本人とよく話をしてください。

たとえば、明日は今日より気温がかなり下がると予想されているのに、子どもがタンクトップやノースリーブのブラウスを用意したとしましょう。そんなときでも、「風邪をひくからダメ」と親が最初から否定してしまうのではなく、よく話をして、子どもの思いを聞いてみてください。もしそこに本人なりの考えや理由があったとすれば、それはそれで立派なものだと私は思います。

 

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【本書のご紹介】

 

子どもの一生を決める理系脳の育て方

 

『子どもの一生を決める理系脳の育て方』

論理力、読解力、記憶力、情報処理能力……子どもの将来をひらく「理系的思考」を身につけるために、小学生のうちにやっておきたい家庭の習慣や勉強法をわかりやすく紹介しています。

 

【著者紹介】

村上綾一(むらかみ・りょういち)

株式会社エルカミノ代表取締役。1977年生まれ。早稲田大学を卒業後、大手進学塾に勤務し、最上位コースを指導。同社を退社後、株式会社エルカミノを設立し、出版、教育事業を行う。教育部門「理数系専門塾エルカミノ」では直接授業も担当し、生徒を東大、御三家中、算数オリンピックへ多数送り出している。その一方で、パズル作家としても活動し、『デスノート』のスピンオフ映画『L change the WorLd』(2008年公開)で数理トリックの制作を担当。