折れた心を元に戻す「回復力」、「レジリエンス」の鍛え方とは?  保坂隆先生にお聞きしました。

 

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ストレスを甘くてみてはいけない!

 

悩みやストレスの原因になっていることに気がついたときには、あえて、しばらくそれをほうっておいてみましょう。とりあえず時間を置くのです。昔の人は、こうした問題解決法を、「時薬」と言いました。

転んでついた擦り傷が、かさぶたになってやがて元の皮膚に戻るように、人間の精神にもすばらしい復元力があります。

「レジリエンス」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「精神的な回復力」「再起力」をあらわし、人間に備わっている心身を健やかなバランスに保とうとするシステム。それがレジリエンスです。

心が傷ついたり、沈んだり、ショックでどうしようもなく落ち込むことは、誰にでもあります。生きている以上は付き物だと思っているくらいでちょうどいい。けれど、落ち込んだからといって、なんとかそれを晴らそうとがんばらずに、とにかくふつうに暮らしてみましょう。じわりじわりと「時薬」が効いてきます。自分のなかのレジリエンスを信頼することが大切なのです。

不慮の事故で夫を亡くした若い女性に、数年後になって、その当時どんな慰めが一番うれしかったかを尋ねたことがあります。すると答えは「普通に接してくれた人が一番、うれしかった……。腫れものに触るようにされたら、かえって滅入いってしまう」というものでした。

自分がつらいときも同じです。自分に対して、できるだけ普通に振舞うことです。こうしたことを繰り返していると、やがてレジリエンスが働きやすくなります。「ストレスに強い人」とは、そういう人を言うのです。

 

現代人に多い「半健康」状態

 

「心と体は別物だ」と捉えている人もいますが、これは間違いです。人間の心と体は、想像以上に密接に結びついており、心が不調ならば、体の調子も悪くなりますし、逆にどこか体の健康を害すると、心も沈みがちになり、ちょっとした刺激で落ち込みやすくなってしまいます。

ところが、最近の日本人は「半健康」といって、どこが悪いというわけではないのに、なんとなく体調が本調子ではない、という人が増えています。

コンビニやスーパーのお弁当やお惣菜で済ませたり、ファストフードなどの外食が多くなったりしてはいませんか? 「飽食の時代」と言われながらも、若い世代には栄養失調がひそかに広がっているというのには驚きます。また、女性の場合は「スリムになりたい」という願望もあり、十分な食事を摂っていないケースも少なくありません。

人間、お腹がすいているときはどうしてもイライラしがちなものです。しっかりと睡眠をとり、必要な栄養バランスを満たす食事をする……という当たり前の生活を、まずは取り戻すことが大切です。睡眠がしっかりとれたら、朝にはお腹がすきます。そうするとご飯が食べられます。その結果、一日を活動的に過ごせ、夜にはしっかり眠くなる。このサイクルです。体の健康バランスを整えることが、ストレスに負けない丈夫な心をつくる基本です。

 

うつ病になる前に

               

ストレスを甘くみてはいけません。ほうっておけば、だんだん精神的に追い込まれ、うつ病や心身症など、本格的な神経の病気にかかってしまうこともあるのです。うつ病は相当な勢いで増加していますし、さらには胃潰瘍や糖尿病、最近ではガンの多くもストレスが引き金となることがあるとわかってきました。

風邪はひき始めが肝心、といいますが、ストレスもまったく同じです。まだ小さな段階で、上手に解消・消化していけば、それほど恐れることはありません。生きている限りなくならないストレスをいつまでも憂うよりも、少し捉え方を変えてみたり、自分にあった解消法を試行錯誤してみるほうが、気持ちも前向きになるのではないでしょうか。

 

【監修者プロフィール】

保坂 隆(ほさかたかし)

1952年、山梨県生まれ。慶應義塾大学医学部卒業。聖路加国際病院リエゾンセンター長・精神腫瘍科部長、聖路加国際大学臨床教授。『50歳から人生を楽しむ人がしていること』(三笠書房)など著書多数。最新刊は『5分でできる「プチ・ストレス」解消術』(監修/PHP文庫)。

 

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PHPスペシャル

 

PHPスペシャル2017年5月号特集「ストレスが軽くなるヒント」より

人間関係や仕事など、私たちは日々さまざまなストレスを感じています。がんばっている人、真面目な人ほど、それは大きいかもしれません。ストレスをゼロにすることは難しいとしても、ためこまないようにするには、どうすればいいのでしょう?一人で悩まないためのヒントを探ります。