達成しやすく、なおかつ将来も安心できるオススメの目標貯金額は「年100万円」なのだそう。経済コラムニストの大江英樹先生に、その理由を説明していただきました!

 

 

100万円の理由1:安心老後につながる

 

40~50代は何かと物入りな世代。しかし、自分たちのこの先の生活のことも考え始めないといけないときなのです。

 

【計画的な貯金が人生後半にものを言う】

「老後を安心して暮らすには3000万、いや4000万円は必要だ」と不安を煽るような説もありますが、そんなことはありません。驚かれるかもしれませんが、私の定年時の貯金はたったの150万円でした。

読者の皆さんも、教育費には頭を悩まされていることかと思いますが、私も二人の娘を私立校に通わせ、教育費には随分お金がかかりました。そして住宅ローンの支払いもありました。

とはいえ、老後資金のことを考えていなかったわけではありません。定年時点で住宅ローンを完済するように組み立て、退職金や年金がいくらもらえるのかを計算し、定年2年前からは家計簿をつけ、老後の暮らしの支出の目処もつけていました。

老後のお金の「出」と「入り」がわからないから、老後を暮らしていけるのかどうか不安が募ってしまうのです。私が150万円の貯金でも大きな不安を抱かなかったのは、この老後のお金の「わからない」を解消していたからです。

読者世代であれば、年金受給年齢は65歳 の方が大半でしょう。定年延長や再雇用制度、再就職で働かなければ、無収入の期間が生じます。ですから、老後の備えは保険ではなく、貯金で準備するのが基本なのです。

 

【定年後の赤字は年約100万円】

私は証券会社で個人の資産運用相談を約25年間担当していましたが、その経験から言えるのは、老後は、夫婦で月「年金+8万円」があれば安心して暮らせるということです。

そのために不足する8万円を毎月貯金すれば、その金額は年間で約100万円。40歳からスタートすれば、60歳で2000万円お金を用意できます。

年金を受け取るまでは、何らかのかたちで働いて暮らしを回し、年金受給後は平均寿命の85歳くらいまで、約20年かけてその貯金から年100万円を取り崩し、暮らしていくのです。

生活コストは年齢とともに下がります。たとえ貯金がゼロになったとしても、そのときは年金だけで暮らせる静かな生活になっているでしょう。年100万円の貯金は、安心老後のために合理的な目標なのです。

 

・教えて大江先生!:「投資」ってどうなの?

低金利の今、投資に期待が高まっていますが、経験のない人が貯金や退職金をつぎ込むようなことには賛成できません。少々儲けることがあっても、必ずケガ(損)をするからです。練習という意味でお勧めするなら、500円からできる「積立投資」。毎月1,000円ずつやってみて、上がれば欲が出て、下がれば売りたくなるという、投資的にはNGな意思決定をバンバンやってみましょう。「まずは練習」が鉄則です。一喜一憂することで、どう投資をすればいいのかを理解できるようになります。ただ、どんな投資にもリスクがつきものであることはお忘れなく。

 

100万円の理由2:ストレスなく貯めるため

 

教育費に住宅ローン......これ以上、貯金も節約も難しいのに、どう貯めていけばいいのか、その方法をズバリ教えます。

 

【心の中にある「会計勘定」を貯金に応用】

貯金の目標額は低ければ達成しやすいですが、貯金額が少ないと将来不安につながります。一方、安心を得たいからと目標額を吊り上げれば、日々の暮らしは節約、節約でストレスが溜まります。私自身も節約はどうも苦手です。そして、目標額が高すぎて達成できなかった場合にも、将来不安が募ります。年100万円という貯金目標は、こういう理由からもお勧めできる金額なのです。

では、どうすれば年間100万円を貯められるでしょうか。月8万円の貯金をとても高いハードルのように感じる人が多いと思います。お給料やボーナスが増える見込みもないのに、貯金なんて無理、という方も多いかもしれませんね。

家計に無理がなく、確実に貯金する方法はたった一つしかありません。「貯金の王道」である給与天引き、または積立定期などの自動引き落としです。

人の心の中には会計勘定が複数あり、AからBへ移したものは別物だと思ってしまう心理があります。天引きされたお金は給料とは別物と考えるから、残りのお金で家計のやりくりができるのです。この心のクセを利用すれば、貯金することへのストレスが減り、お金も貯めることができるというわけです。

 

【節約よりも心のクセの見直しを】

さきほども言いましたように、老後の支出のおおまかな予想額は必ず考えておくようにしましょう。

人間は遠い将来のことの価値を大きく割り引き、目先の快楽を優先してしまう傾向があります。「10年、20年後の老後のことなんて誰にもわからない」と言って、確実にもらえるかどうかわからないボーナス払いで大きな買い物をしてしまうのもそのせいです。

また、通信費が高いと嘆いていても格安スマホに乗り換えないなど、続けてきたことを変えることに抵抗を感じ、使い続けるというのも心のクセです。

日々の節約よりも、心のクセに気づけば大きな節約が叶います。まずは、こうした心のクセを知ることから、年100万円への第一歩がスタートするのです。

 

・Column

専業主婦の家庭なら、妻も働くことをお勧めします。子どもが学校に通っている時間を有効に使えば、月に5万円を稼ぐのはそれほどしんどいことではありません。そして妻が働いた分は「全額貯金」と決めてしまうのです。貯金を続けていくには、心に縛りをかけるよう「仕組み化」することが大切です。そして、蓄えに不安があれば、夫の定年後も、年金を受給できる年齢まで、夫と妻の二人で働いて合計月8万円稼ぎましょう。またそれぞれが月8万円を稼ぐことができれば、夫婦で旅行をしたり、趣味を楽しんだりと、老後をさらに豊かに暮らすことができます。

 

貯金を阻害する3つの"勘違い"行動

 

1「目的別に貯金する」

支出の仕分けはOKですが、目的別の貯金に意味はありません。汎用的に使えるようまとめて管理しておき、必要なときにはそこから必要な金額だけ引き出すほうがずっと合理的で、ムダがありません。

 

2「保険は絶対必要 !」

保険は「めったにないこと」なのに高い保険料で備えがち。それよりも、いつでも自由に使える現金を増やすほうが得策です。家族も含めて、年代に応じて柔軟な見直しをしましょう。

 

3「ボーナスでお買い物」

ボーナス時に買いたいものがあれば、「定期預金を解約して買う」というハードルを設けて、一度検討するようにしてみましょう。「ボーナス払い」が心のハードルを下げていることがあります。

 

・貯金に無理は禁物!

年100万円の貯金がけっして難しくないことを理解していただけたでしょうか。これまで自分では気づいていなかった家計の〝ムダ〟を見直したり、仕組み化することで貯金が増えるのはうれしいですね。

投資や保険も人の心理をうまく利用したビジネスです。今まで貯金ができなかったとしても、あなただけの責任ではありません。心理、つまり心のクセを理解すれば、誰でも無理なくお金を貯めることができます。不安に煽られることなく、日々の生活も楽しみながら、将来に向けて堅実な準備を始めましょう。

 

【著者紹介】

大江英樹(おおえ・ひでき)

経済コラムニスト。大手証券会社に38年間勤め、そのうち25年間は個人の投資相談業務に従事。2012年、株式会社オフィス・リベルタスを設立。行動経済学の研究から、その問題点や解決法に切り込む講演やセミナーが好評。近著『定年男子 定年女子』(日経BP社)など、著書多数。

 


 

くらしラク~る「PHPくらしラク~る」は主婦が何気ない毎日をラクに楽しく過ごせるように応援する生活情報。 2017年7月号の特集は<「金持ち家計」のつくり方>です。

 

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