ある小学校の授業でのひとこま。授業開始のかねの後、「さあ、机の上に教科書と筆箱を出して」と先生が指示しました。子どもたちはバタバタと机のなかから勉強道具を取り出しますが、なかにはボーッとしている子も。全員の準備が終わるのを待たずに先生が話をはじめます。「全員を待っていたら時間がかかるのだろうな」と思いつつ、取り残されたような子どもがちょっと気になりました。

 

いま、小中学校の1クラスの人数は40人と国の法律で決まっています。しかし、40人の子どもを1人の教師が見るのはなかな か大変です。このため各県では独自に40人未満のクラス編制を実施しています。たとえば宮城県では小学校1・2年生と中学校1年生は35人以下でクラスを 編制しています。47都道府県のうち、小学校低学年で40人未満のクラス編制としているところは42都道府県にのぼります。

 

各県で少人数のクラス編制が実施されていることを受け、全国的に35人学級を実施するための予算を文科省は要求しました。来年度から6年間かけて、小中学校 すべての学年を35人学級に順次移行させます。さらに平成30年度までに小学校低学年は30人学級にします。このために教師の人数を約4万7千人増やすと いう計画です。

 

1クラスの人数を少なくすることで、これまで以上にきめ細かい指導が可能になります。子どもたちが授業で取り残されることのないよう教師の人数をぜひ増やしてほしいと考えます。けれども、画一的にクラスの人数を決めるのはどうかという疑問もあります。

 

な ぜなら、効果的な授業の形態は学年の状況や教科の内容によって異なるからです。たとえば、算数など子どもがつまずきやすい教科は、1つのクラスに2人の教 師が入って教えるティームティーチングという指導方法が効果的です。40人のクラスを2人の教師が担当すれば教師1人あたりの子どもの人数は20人となり ます。すべて35人学級にするより教師の人数が増える分でティームティーチングを行いたいと考える学校もあるでしょう。

 

ま た、最近は教師の多忙化が問題になっています。授業が終わった後は部活指導や事務作業などがあり、時間の余裕がありません。学校全体のクラス数を増やさず に教師の人数を増やせば、教師1人あたりの授業時間が減ります。子どもや保護者とじっくり話す、教師どうしで話し合うといった時間を確保することもできる はずです。

 

すべておなじように35人学級とするのではなく、35人学級を原則としながらも増加する教師を柔軟に活用できるような仕組みにすべきと考えます。

 

文 科省は35人学級のための予算要求をしましたが、要求どおりになるかどうかはまだわかりません。文科省と財務省との交渉の後12月末に政府全体の予算案が 決まり、来年1月からの国会での審議をへてようやく決定となります。もし実現すれば、30年ぶりの学級人数の縮小です。国の予算の動きに注目しましょう。

 


 

schooltop.jpg

亀田 徹  (かめだ・とおる)

PHP総研 教育マネジメント研究センター長/主席研究員

学校経営の質の向上とそれを支援する教育委員会の役割が主な研究テーマ。子どもや保護者にとって満足度の高い教育を提供する学校づくり、教職員が元気になる学校づくりを目指す。現在は、民間の経営手法やコーチングを取り入れた学校経営プログラムの開発と実践に取り組んでいる。