映画『うまれる』は、妊娠・出産・育児を通じて、私たちがうまれてきた意味や家族のあり方、そして“生きる”ことを考えるドキュメンタリー映画です。前回に引き続き、豪田トモさんに、映画がうまれた背景などについてご紹介いただきます。

(映画『うまれる』パンフレットより)

 

 

■結婚、夢の実現、そして離婚

 

自分と両親との関係は、自分なりに消化しなければならない。そう思ったきっかけは、離婚でした。

 

僕は二十九歳の時、十年間の交際を経て結婚をしました。当時、僕はサラリーマンだったのですが、秘かな夢は映画監督になること。

 

「一生、ロマンの持てる仕事はないものか」

 

思い悩んでいた十九歳の浪人生時代に見た映画が、トム・クルーズ主演の『7月4日に生まれて』でした。半身不随で車椅子生活をする役柄を演じるため、トム・クルーズは約一年間、車椅子で生活したという記事を読んだ時に、「そんな大変なことが出来る映画って何だろう? もしかしたら僕の一生を賭けられる何かがあるのかもしれない」と思い、「映画監督になる」と決意したのでした。

 

しかし、どうずれば映画監督になれるのかが分からないまま、大学では法律を学び、卒業後は「映画監督なんて夢みたいな話だ。現実を見なければ」と、コンピュータ関連の会社に就職しました。

 

けれど、映画を撮るという夢をどうしてもあきらめきれず、六年間のサラリーマン生活の末、カナダ・バンクーバーに単身、映画留学したのです。

 

当時、僕は新婚半年だったのですが、とにかく、夢を実現したかった。約四年間、夢に向かって猛烈に邁進しました。僕はバンクーバー、彼女は東京。数カ月に一度会ったときには「早く帰って来て欲しい」と言われたものの「いま帰っても留学した意味がない。もっと成長したい」とわがままを通し続けました。

 

そのうち、自分の作った作品が映画祭に入選し、スポンサーが現れ、少しずつスキルアップしていくのを実感していました。「彼女のためにも早く腕を磨かなければ」という思いも、僕を後押ししてくれたんだと思います。

 

そして、満を持して日本に戻ったものの……彼女の心はすでに遠く離れていたのです。当然ですよね……。十四年間連れ添った女性と別れることは、信じがたいくらいつらい経験でした。

 

なぜこうなってしまったのか……。

 

■親子の関係は無意識のうちに連鎖する

 

当然、僕が夢に邁進しすぎたことが主な原因でしたが、そもそも、自分に「家族」という概念に対する意識が、極端に欠けていたことに気がつきました。小さい頃から両親に反発してきたことで、「夫であること」「家族を持つこと」「父になること」に対して、自分の中にまったくイメージを持っていなかったうえに、自分が反感を抱いていた父親と同じように、無意識のうちに「家庭よりも仕事」の男になっていたのです。

 

もしかしたら、親子の関係は無意識のうちに連鎖するんじゃないだろうか。いつかはまた結婚をし、子どももできるのかもしれない。でも、親のモデルとなるのは自分の両親しかいないから、僕もまた、親の愛情を実感できない子どもを無意識のうちに育ててしまうんじゃないか。

 

そう考えると怖くなり、自分と両親との関係を何とかしたいと思うようになったのです。ただ、僕からアクションを起こそうなんて考えたこともなくて、そもそも関係を悪くしたのは両親なのだから、「寂しい思いをさせて、悪かったね」と僕に歩み寄ってくるべきなんじゃないか、そう思っていました。

 

それなのに、両親はいっこうにそんなそぶりは見せてくれない。それどころか、「お前に映画を作る才能なんかあるわけがない」と頭ごなしにいわれ続けていたことで、さらに両親との距離は遠く離れていきました。

 

こんな状態でどうずれば親との関係を修復できるんだろう、何とかしなくちゃ、と思えば思うほど、何をどうずればいいのかわからず、途方にくれる日々でした。

(次回につづく)

 

スペシャル企画 「うまれる~豪田トモをすべて読む

 


 

【映画『うまれる』のご案内】

 

映画『うまれる』は、妊娠・出産・育児を通じて、私たちがうまれてきた意味や家族のあり方、そして。生きる“ことを考える、ドキュメンタリー映画です。

「命は尊い」「家族は大切だ」頭で分かってはいても、心で感じる機会は、どのくらいあるものでしょうか?

自分が親を選んだのかもしれない、うまれてくるってすごいことなんだ、僕らがここでこうして息を吸っていることが、どれだけ奇跡的なことなのか。

こんなことを実感できたら、僕みたいに親子関係を改善できる人がいるかもしれないし、生きる目的が分からなくなった人も、もう一度明日から頑張ろうって思えるかもしれない。

映画『うまれる』は、見ていただいた方々の全細胞の隅々にまで、いのちのすごさが染みわたる、そんな映画にしたいと思い、毎日、魂を込めてつくってきました。

ぜひ、映画館でご覧ください。

 

●ナレーション  つるの剛士

●企画・監督・撮影  豪田トモ

※公式ホームページ http://www.umareru.jp/

 


 

『うまれる』

妊娠・出産をめぐるさまざまなドラマ。

いのちの意味、親子・夫婦の関係の大切さ。

  豪田トモ著

  PHP研究所