学校のなかにある図書室をご覧になったことがあるでしょうか。新しい本がずらっと並んでいる図書室もあれば、黄ばんだような本がぐちゃぐちゃと本棚に押し込まれている図書室もあります。

 

図書購入のためにどれだけお金をかけているかは自治体によって大きく異なります。国が示す標準額の倍を超える予算を用意する自治体がある一方、標準額の半分にも満たない自治体も多数あるのが実態です。

 

なぜ地域によってこのような差があるのでしょうか。

 

地域によって公立小中学校の施設や設備に差があるのは、学校教育費を市区町村が負担しているからです。小中学校は義務教育ですので、市区町村は、すべての子どもを受け入れられるよう学校を設置しなければなりません。ただし、どこにどのような学校を設置するかは市区町村の判断です。学校にどれだけの予算をかけるかも市区町村にまかされています。つまり、教育に対する自治体の方針や財政力によって学校にかける予算額に違いが生じるのです。図書の予算のほか、教室にエアコンを設置しているか、特別支援教育のための補助員を配置しているかなども自治体ごとに差があります。

 

なお、教師の人件費は市区町村ではなく都道府県が負担し、その都道府県の負担の1/3を国が支出します。教師の人件費は額が大きいので、教育費負担の例外扱いになっています。

 

教育は機会均等が原則なのだから、市区町村によって差が生じないよう国が全国均一に予算を支出すべきではないかとの意見もあります。

 

たしかにそういう考え方もありますが、しかし、全国一律ではなく市区町村ごとに工夫するからこそ、よりよい教育施策の展開につながると考えます。自治体ごとにさまざまな施策を実施してみて、ある自治体がはじめた施策に効果があるとなれば、その施策が他の自治体にも広がっていくからです。たとえば、図書の貸し出しなどを担当する学校司書を図書室に配置するのは、国の施策ではありません。市区町村独自の施策です。子どもたちに読書に親しんでもらおうという市区町村の努力により、学校司書を配置する小中学校は年々増加しています。

 

自治体によって学校教育費に差があるのであれば、自治体に対して工夫や努力を促すことが私たち大人の役割ではないでしょうか。ほかの地域ではこんな施策を推進している、私たちの地域では子どものためにこういうことをしてほしい。PTAが行うアンケートなどを通じ、保護者からの要望を自治体に提出してもいいでしょう。市区町村や都道府県ではこれから予算を考える時期に入ります。子どもたちによりよい教育を受けさせるため、保護者や住民が積極的に声を上げることが必要だと思います。


 

 

schooltop.jpg亀田 徹  (かめだ・とおる)

PHP総研 教育マネジメント研究センター長/主席研究員

学校経営の質の向上とそれを支援する教育委員会の役割が主な研究テーマ。子どもや保護者にとって満足度の高い教育を提供する学校づくり、教職員が元気になる学校づくりを目指す。現在は、民間の経営手法やコーチングを取り入れた学校経営プログラムの開発と実践に取り組んでいる。