12月に、国際機関であるOECD(経済協力開発機構)が国際的な学力テストの結果を公表しました。PISA(ピザ)という3年に一度実施されるこのテストは、読解力、数学的応用力、科学的応用力に関する「学習到達度調査」です。 

 

前々回のテストでは、日本の順位が急落したことが教育界に衝撃を与えました。今回は、読解力が8位(前回15位)、数学的応用力が9位(前回10位)、科学的応用力が5位(前回6位)と順位が上昇しています。

 

今回の結果に対しては、日本の順位があがったことを評価する声がある一方、順位の上下に一喜一憂すべきでないとの意見も目立ちます。

 

たしかに、細かな順位の違いにこだわるべきではないでしょう。テストで測ることのできるのは、子どもの能力の一部に過ぎないからです。しかしながら、PISAの順位に注目が集まったことは、結果的には日本の教育によい影響を及ぼしたと考えます。日本の順位が大きく下がった“PISAショック”によって、読解力や表現力の育成に国をあげて取り組むことになったからです。

 

文科省は、「言語の力」を教育内容の改善項目の第一に位置づけました。来年度から順次実施される新しい学習指導要領では、国語だけでなく各教科で言語の力を高めることを目指しています。読解力や表現力を育てる授業方法の事例集をまとめた教育委員会もあります。

 

ある小学校では、ディスカッションの手引きをつくり、子どもたちに配付しました。進行役の児童が「誰に対する意見なのか、そして賛成か反対かも明らかにしてください」と述べた後、「○○さん、お願いします」と発表者を指名する。指名された児童は「はい」と返事をして意見を発表する、などディスカッションの進め方が示されています。この手引きを活用してくりかえし練習することで、子どもたちが自信をもって発表できるようになったとのことです。これからは、手引きに頼るだけでなく、自分のことばで発言できるよう指導したいと同校の先生がおっしゃっていました。

 

言語の力には、文章を読み取り、表現するだけでなく、論理的に考える力も含まれます。したがって、各教科で求められる力と言語の力とはかなりの部分で重なり合っています。たとえば算数の場合、問題文や図表の意味を読み取り、数字や式で自分の考えを説明するためには、筋道を立てて考えることが求められます。言語の力は、すべての教科の学習を進めるうえで不可欠であるともいえるのです。

 

さらに、言語の力は、日本の将来にとっても重要です。経済成長が著しいインドの強みは、「議論に強く、相手を説得する力、つまり『交渉力』に長けている」ことであり、学校で行うディベートが交渉力を培うのに役立っているといわれます(NHKスペシャル取材班『続・インドの衝撃』文藝春秋)。言語の力に基づく「交渉力」は、グローバル社会のなかで日本が生き残るためにも必要でしょう。

 

前述の小学校の例のように、言語の力を育成するには学校の授業にもっと工夫を加えるべきです。教員の指導力も向上させなければなりません。学校と家庭との連携も大事です。国、教育委員会、学校それぞれの取り組みをさらに進めてほしいと思います。 

 


 

schooltop.jpg亀田 徹  (かめだ・とおる)

PHP総研 教育マネジメント研究センター長/主席研究員

学校経営の質の向上とそれを支援する教育委員会の役割が主な研究テーマ。子どもや保護者にとって満足度の高い教育を提供する学校づくり、教職員が元気になる学校づくりを目指す。現在は、民間の経営手法やコーチングを取り入れた学校経営プログラムの開発と実践に取り組んでいる。