まだまだ小さい、と笑ってのんびりとみていた下の娘が、この春、小学校に入学となり、お姉ちゃんの時とはまた違った緊張を感じているこの頃です。

 

私は「カギっこ」「いじめられっこ」「登校拒否児」でした。


正直、小学校1、2年生の頃と、学校のことはあまり思い出に残っていません。「学校に行きたくない」と親には言わず、集団登校中になんだかんだと理由をつけ、誰もいないわが家へ戻ってしまう、という子どもでした。当然、いじめの対象になり、持ち物がなくなる、汚される、体も痛ければ、心もずいぶんと痛いめにあいました。
 

そんな私も、すてきな先生や、大切な友だち、出会ったたくさんの人たちのおかげで明るくなり、福祉の道にすすんで、「歌って踊れる介護士!」なんて言われるほどになりました。そして、夫と出会い、2人の娘の母となりました。

 

上の子の入学時のことです。どうしても自分のつらい体験を思い出すことが多くなり、「私とこの子は違う人間なんだから……」と思うものの、緊張と心配から、帰宅後の娘から根堀り葉堀り聞き出そうとしたことがありました。
 

娘の通う小学校は片道40分くらいのところにあります。私も小学生の頃は同じくらいの長距離を歩いて登下校していました。その道中、つらいことを言われたり、物や体を傷つけられることもあったので、「誰と帰ってきたのか」「どこから1人だったのか」「持ち物はちゃんとあるか」「誰と遊んだのか」「本当はイヤなことがあるのではないか」「学校に行きたくない時もあるのではないか」などなど、授業中以外のことが気になってしかたなかったのです。
 

でも、その心配は一気に吹きとびました。帰宅するや否や娘のほうから、「あのね、今日ね……」と教室でのこと、帰り道のこと、友だちのことなど、その様子が手に取るようにわかる「学校の話」をはじめたのです。おどろくと同時に安心しました。

 

 

「どうする? お母さん。私、友だち100人できたかも!」

入学して1カ月も経たないうちに娘が私に言った言葉です。

 

「すごいね、もう100人?」

 

と聞くと、

 

「うん、みんなの名前はわからないけど、『おはよう』とか『バイバイ』って言ったり、『一緒に帰ろう』って声をかけてくれた子も、みんな友だちじゃん」

 

たいしたことない、普通のこと、とでも言いたげに自信ありげな顔……。私はうれしい気持ちと、娘のたくましさに泣けてきてしまいました。

 

「なんで泣くのよ?」

娘はおどろいていましたが、

「うれしい時やたくさん笑うと、涙が出ることもあるんだよ」

と抱きしめました。
 

子育てをしていると、どうしても「何かがおこる前になんとかしなくては……」と考えたり、先回りしてしまいがちですが、子どもたちの世界を見守り、小さいながらもたくましく問題に向きあっている姿を少し離れた所から応援しなくては、と思います。自分の足で立って、前を見ている子どもが振り返った時に、
「よし、それでいいぞ。見ているからね」
と旗をふっていられる大人になれたらいいな。そう思いながら、子どもたちと接しています。

 

実は私も春から1年生。娘たちもお世話になった地域の子育てサークルを引き継ぐことになり、「先生」1年生なんです。昔は「いじめられっこの登校拒否児」だった私に何ができるだろうか、とずい分悩みました。でも、私にしかできない“何か”もあるのかな、と思い、頑張ってみることにしました。就園前のキラキラした子どもたちやそのママたちと楽しく活動していきたいな、と思っています。
 

私の思いを受け止め、いつも助けてくれる夫、父、母、サークルの先生の支えのおかげです。先生の「その(登校拒否をしていた)頃のあなたが愛しいわね」という言葉にもずい分助けられました。本当に感謝しています。
 

5年後、10年後もわが子や私と関わった子どもたちがなんでも話してくれたり、声をかけてくれる大人でいられるよう、精進、精進です。

 

遠山いく枝(静岡県浜松市 36歳 主婦)

「PHPのびのび子育て」7月号「あたたかな日々」

~子どもの成長におどろいた話~  より

 


 

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「PHPのびのび子育て」は未来を担う子どもたちの健全な成長と幸せを願って、発刊している月刊誌です。