児童虐待の報道が絶えません。先月末にも、大阪で小学生の男児が保護者から虐待を受けて亡くなったとのニュースがありました。報道に接するたびに胸が痛みます。

 

これまでの児童虐待による死亡事例について、なぜ最悪の事態を防げなかったかという検証が各自治体で行われています。検証報告を見ると、「虐待の危険性を予測できなかった」、「家庭についての情報収集が足りなかった」、「児童相談所と学校などの関係機関との間の連携が不十分であった」等の問題点が指摘されています。

 

今回の大阪のケースでは、虐待ではないかと学校から児童相談所への連絡があったにもかかわらず、児童相談所が虐待の兆候を見落としてしまい、必要な対応がとられていなかったとの事実が浮かびあがっています。

 

学校の教師など虐待に気づきやすい立場にいる人には、虐待の早期発見がとくに求められています。このため、教育委員会では、教師を対象に虐待に関する研修の実施に努めています。たとえば、不自然な怪我がある、些細なことで乱暴する、家に帰りたがらないなどの疑わしいサインがあったときは校内で協議し、児童相談所等に連絡するといった対応方法を教師は学びます。実態としては、全国で毎年4千~5千件ほどの相談が学校等から児童相談所に寄せられています。

 

けれども、相談を受けたとしても児童相談所の職員体制が不十分であり、的確な対応がなされないという問題があります。児童相談所には虐待などに対応する児童福祉司という職員が置かれています。この児童福祉司の数が足りないのです。

 

前述の検証報告でも、子どもの安全確認や危険性の予測、親への支援など児童福祉司の業務は多大であり、現在の体制では虐待相談があったときに対応するのが困難だとして職員数の増員や職員の専門性向上を訴える報告が少なくありません。

 

児童虐待の相談件数は年々増加し、昨年度は全国で5万5千件の相談がありました(東日本大震災の一部被災地域を除く)。10年前の件数に比べて約3倍に増加しています(20年前の件数と比べるとなんと50倍)。にもかかわらず、児童福祉司数は10年前の約2倍にとどまっています。海外と比べても日本の児童福祉司は少ないといわれます。

 

児童福祉司の職員数を増やすには人件費がかかります。いまの財政状況では増員が難しいことはたしかです。けれども、子どもたちの安全を守れるだけのコストを社会全体で負担すべきではないでしょうか。悲惨な事件を繰り返さないため、わたしたち大人の適切な判断が求められていると思います。

 

 


 

schooltop.jpg亀田 徹  (かめだ・とおる)

PHP総研 教育マネジメント研究センター長/主席研究員

学校経営の質の向上とそれを支援する教育委員会の役割が主な研究テーマ。子どもや保護者にとって満足度の高い教育を提供する学校づくり、教職員が元気になる学校づくりを目指す。現在は、民間の経営手法やコーチングを取り入れた学校経営プログラムの開発と実践に取り組んでいる。