8歳の長男、6歳の次男、1歳の長女を育てている3児の母です。

 

主人は調理師なので、毎日夜中に帰宅し、朝は子どもたちが出かけてから起きるという、子どもと父親との接点がほとんどない日々。おまけに、週1回の休みすら取れないことが1カ月以上続くときがあるので、わが家は母子家庭状態で、私の子育てはまったく余裕のない慌ただしいものです。

 

 

そんなある日、長男と次男がお風呂上がりに些細なことでけんかを始め、家中に長男の怒鳴り声と、次男の泣き声が同時に響きわたりました。その瞬間、私の怒りも込み上げ、「頭を冷やしなさい」と、原因を起こした長男を家の外へ出しました。長男は、黙って玄関の扉の傍に立っています。


しかし、その日は夜風が冷たく、湯冷めが心配になった私は、「反省しているなら、今のうちに家に入りなさい」と、長男に言いました。ところが、頑固な長男は「だって、もうオレ家族じゃないもん」と拗ねた様子で動こうとしません。私は「じゃあ、もう10秒だけ待ってあげる。10数えたら鍵を閉めるから、そしたらもう二度と開けんよ」と強い口調で言い、数え始めました。「1、2、3……10」。やはり家の中に入ろうとしない長男に対し、約束通りバシッと扉を閉め、鍵をかけました。と、同時に、私の中で何かがプツリと切れたように涙がポロポロ溢れて止まらなくなり、しゃがみ込んで両手で顔を覆って泣きました。泣いても、泣いても、涙は止まりません。毎日、1人で3人の育児をするのにいっぱいいっぱいになり、蓄積した不安やストレスが、涙となって流れ出ているようでした。

 

その時、ずっと様子を見ていた次男が、急いで玄関の扉を開け、「兄ちゃん早く入ってきて! お母さんが泣きよる。早く!」と叫びました。長男は黙って家の中へ入ってきました。素早く玄関の鍵を閉める次男。私はすぐにこう言いました。「あんたが出て行くなら、お母さんが出て行く。あんたはぜんそく持ってるから、こんな寒い日に外に行ったらぜんそく出るやろ。お母さんは風邪ひいてもぜんそく出ないから、大丈夫。それに、毎日毎日あんたたちのけんかにはうんざりする。もう聞きたくないのよ。あんたたちがけんかするのも全部お母さんのせい、お母さんが悪いのよ。だから、お母さんが出て行くから」。すると次男は、「お母さん出て行かないで! お母さんは全然悪くないよ。悪いのはオレたちだよ。ごめんなさい。お母さんが出て行くなら、オレもついて行く!」と、必死に私にしがみついて泣きました。長男は、黙ったままです。状況が把握できない1歳の長女も、何となく雰囲気を感じとり、私にくっついてきました。


現実的に考えると、子どもを家に置いて出て行けるはずがありません。しかし、高ぶった気持ちの収拾がつかない私は、2人にこう言いました。「わかった、今日は出て行かない。一晩考える。だから、あなたたちも今夜のことをよく考えて、明日の朝お話を聞かせて」。その時は私も冷静になっていました。次男はホッとした様子で、私の顔をじっと見つめました。


次の朝、目を覚ました次男はすぐに、「お母さん、オレたちけんかしないようにがんばるから。毎日、ニコニコしたいから」と話してくれました。「ありがとう」と、私はすぐに次男を抱きしめました。すると、今度は長男が、「オレも、みんなで笑って過ごすほうがいい」と言いました。私はすぐに長男を抱きしめて、「ありがとう」と言いました。そして、1歳の長女を真ん中に、みんなでギュッと抱き合いました。


思い返すと、カッとなって取り乱したことが恥ずかしくてたまりません。しかし、それによって、心の中にモヤモヤと溜まっていたものがスッキリしたのも事実です。口数の少ない不器用な長男と、素直に甘えてくる次男、まだまだ無垢な長女。この3人に必要とされている私は、とても幸福だったのです。やっとそれに気づかされました。そして、めいっぱい感謝しました。「主人が子育てを手伝ってくれないから、私一人が犠牲になっている……」。そんな気持ちが、私の中に常にありました。それが、その日を境に、「私は毎日、こんなにすばらしい子どもたちと一緒にいられる」という喜びに変わり、また、子どもの顔を見る時間もないほど、毎晩遅くまで家族のために一生懸命に働いてくれる主人に対する感謝の気持ちも芽生えました。


私も人間ですので、これからも子育てに行きづまることや、イライラすることもあるでしょう。しかし、あの日のようなことは二度と繰り返しません。子どもたちが言ってくれたように、“ニコニコ笑顔”で乗り越えていける自信があります。
私の子どもたち、本当にありがとう。大好きです。

 

桜井 南(長崎市・35歳・主婦)
「PHPのびのび子育て」1月号「あたたかな日々」
~ 負けそうな私を立ち直らせてくれたできごと ~ より

 


 PHPのびのび子育て

 「PHPのびのび子育て」は未来を担う子どもたちの健全な成長と幸せを願って、発刊している月刊誌です。