コミュニケーション力や豊かな心の育ちといったものは、大人が子どもとただ一緒にいれば育つというものではありません。大人の働きかけがないかぎり育たないものです。子どもの芽を育て、花を咲かせるために、お母さんやお父さんなどの大人の力が必要です。特に、九、十歳からの子どもには確たる働きかけが必要といわれています。
 

そこで今回は、尾塚理恵子先生の著書『9歳からは、まかせて、はなれて、ちょっと聴く』から、小学校中学年の特徴を学んでいきたいと思います。

 

 

九歳からの子育てを考える前に、まずその境界線となる九、十歳の特徴について考えてみましょう。


小学校に入ったすぐは、授業中はいすに座る、返事をはっきりする、手をまっすぐ上げるなど、「学習規律」というものを身につけるところから始まります。授業への参加、友だちや先生とのかかわり方など、新しく体験すること増えます。そこで、小学校の1年目の時間割は、まずは学校現場に慣れることを重要視したものになっています。

 

それが六年生になると、中学校への準備期間に入っていきます。授業も内容が濃いものになり、思考力を刺激したり、発表ししたりする機会が格段に増えていきます。他人の意見をしっかり聴き、自分の意見を論理的に伝えることが求められるようになります。

 

例えば六年生には、こんな授業が展開されています。平和学習の一環で行なわた図工の授業です。

 

修学旅行で広島に行き、平和学習を行なったこともあり、「戦争」や「平和」についてのイメージを絵に描きました。クラス全員の絵を壁に貼って発表します。「どのような思い」で描いたのかという質問を受けた児童は、自分の「思い」や「意図」をわかりやすいように伝えていきます。発表の内容がわからないときには、「わかりません」と児童たちははっきり言います。大人のように、「わかったフリ」はしません。なかなか子どもたちはシビアな反応を示します。

 

六年生の子どもたちは、中学校という次の教育のステップに向けて、論理力や表現力、伝達力を身につけていきます。小学校の六年のあいだに、見た目の体の大きさだけではなく、表現力も、思考力も、一年生からは格段に変わるものです。

 

では、九、十歳はどうでしょうか。小学校では中学年になります。低学年と高学年にはさまれた学年です。三、四年生ですね。

 

このころになると、低学年のように、何をやっても「かわいいね」と褒められたり「しょうがないわね」と許してもらえなくなります。また、高学年のように「さすがだね」と評価されることもまだあまりありません。中学年は微妙な学年なのです。

 

しかし、微妙だからこそ、その後の人格形成において、とても重要な時期だと私は思っています。ですから、「これまで手をかけ、気を配って子育てをしてきたけれど、そろそろ休憩できるかしら」と思うと、思わぬ落とし穴が待っています。
 

親が気を緩めると、子どもはその感情の変化を敏感に察します。相手の心の状態をキャッチするアンテナは、大人以上に威力が強いのです。親が、「もう手を抜いても大丈夫ね」なんて思うようならば、子どもはその気持ちを受信して、不安感を持つようになります。「手を抜かれる」ことが子どもは大嫌いです。相手の気持ちの状態を受信するアンテナは、九、十歳にもなると感度が高くなります。ですから、「子育てが楽になる」なんて思うと、とんでもないことになってしまいます。実際、この年齢くらいから、これまでのように褒めたり、叱ったり、抱きしめたりすることが微妙に通用しなくなるのを、感じられることがあるのではないでしょうか。それほどまでに、九、十歳以降の子どもには、心して関わらなければならないのです。なぜなら、アンテナは感度ばかりではなく、威力も強くなってくるからです。

 

では、この時期の「微妙さ」とは、どのようなことから引き起こされるのでしょうか。
それは、まだ幼さが残り、手のかかる低学年でもなく、思春期を前に繊細な気配りを必要とする時期にあり、親や先生の関心が若干低くなるという状況に起因しているように感じます。(次回につづく)

 

 

尾塚理恵子著

『9歳からは、まかせて、はなれて、ちょっと聴く』

第一章「九歳、十歳から始まる変化の兆し」より

 


 

尾塚理恵子  おづかりえこ
大阪府守口市立橋波小学校校長。
コミュニケーション研究家として活動したのち、女性として全国初の小学校民間人校長に就任。子どもの遊びの施設「キャンプ・ネポス」元館長。
子どものマナーや言葉遣い、表現力、思考力を伸ばす教育に取り組んでいる。子育てや教育についての講演会も多数行なう。
著書に『子どもの才能をぐんぐん伸ばす、「声」の魔法』(講談社)、『美人のお作法』(中経出版)などがある。

 

 


 

 


『9歳からは、まかせて、はなれて、ちょっと聴く』


9歳以降の子どもには、矛盾した行動が目立ち始めます。この時期に必要な子育ての法則を3つ紹介します。この3つを守れば、自分に自信がもてる素直な子に成長します。