スポーツの試合や発表会、テストなど、子どもは成長していく過程で、多くの「本番」を迎え、乗り越えていきます。本番ではプレッシャーに負けず、日頃の練習や勉強の成果を発揮してほしい。本番で成果を出す喜びを知って、さらに伸びていってほしい。親なら誰でも、そう願っていることでしょう。その効果的な力として「本番力」というパワーがあります。

 

本番であせらずあがらず、ふだんどおりの(あるいはふだん以上の)力をしっかりと出すことができる──そんな「本番力」を発揮するためには、強い「心」が必要です。その「心」を鍛えるのが、メンタルトレーニングです。


今回はメンタルトレーニングの第一人者である高妻容一先生の著書『子どもの本番力を120%引き出す方法』から、子どもの本番力を発揮させる「夢」の育て方について2回にわたってご紹介いたします。

 

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■子どもがかなえたい「夢』を確かめてください

 

メンタルトレーニングは、子ども本人がかなえたい夢や希望に近づくためのプログラムです。しかし、その夢や希望が、子ども自身が心から望むものでなくては、メンタルトレーニングも効果を発揮できません。

 

まずは子ども自身が、自分が何を心からやりたいと思っているか、自分がどうなりたいと思っているかに気づくこと。それがメンタルトレーニングの第一歩になります。

 

目標をクリアにすれば、目標に近づくためにどうしたらいいかが見えてきます。あとは目標に向かって進むだけです。

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夢がはっきりして、「自分にもかなえられそうだ」と感じられると、やる気が湧き起こり、前向きな気持ちになれます。目標をはっきりさせるだけで、子どもの本番力は一段とアップするのです。

 

ただし、目標をはっきりさせるのにもコツがあります。この章では、子どもにとっての目標を確認し、やる気を引き出すやり方を紹介しましょう。


 

■「好き」「楽しい」をふくらませよう

 

子どもが「目標を達成したい」と思うときの動機には2通りあります。ひとつは、「親や先生がやれと言うから」「やらないと叱られるから」「勝てばごほうびがもらえるから」など、人の評価を気にすることから生まれる動機。もうひとつは、「好きだから」「楽しいから」「憧れるから」「もっとやりたい」という、子どもの内側から生まれる動機(自発的な動機)です。

 

多くの子どもは、「自分もこれが好きだし、親や先生にも喜んでほしい」のように、2つの動機が混ざっているものですが、親や指導者が大切にふくらませていくべきなのは、やはり「好きだからやりたい」という子ども本人の気持ちです。

 

「やりなさい」とはっぱをかけるのも、ごほうびを出すのも悪くはありませんが、長く続けていくには、それだけでは足りません。評価を求める気持ちのほうが大きくなってしまうと、うまくいっているうちはいいのですが、ちょっとしたつまずきで、容易にくじけてしまうようになります。

 

その点、「好き」という核になる気持ちがある子は、一時的にうまくいかなくなって、評価が得られなくなっても、すぐにくじけることはありません。その結果、失敗やスランプを乗り越える喜びを知って、さらに成長していくことができます。

 

「好き」という気持ちは、本番でもものをいいます。「評価を得るために、結果を出さなければ」と思うと、どんどん固くなってしまいますが、「好きなことをやって、晴れ舞台を思い切り楽しもう!」と思えれば、適度にリラックスしつつも気分を盛り上げて、本番でカを発揮できます。子どもの「好き」こそ、本番を乗り越えるパワーの源なのです。

 

(次回に続く)

 

【出典】『子どもの本番力を120%引きだす方法』 (PHP研究所)

 

【著者】

高妻容一 こうづま・よういち

1955年、宮崎県生まれ。福岡大学体育学部卒業。中京大学体育学研究科修了後、フロリダ州立大学へ留学。近畿大学教養部を経て、東海大学体育学部教授。
メンタルトレーニング・応用スポーツ心理学研究会の代表としても後進の育成や普及を行っている。
著書に『基礎から学ぶ! メンタルトレーニング』『今すぐ使えるメンタルトレーニング』『イラスト版やさしく学べるメンタルトレーニング入門者用』(以上、ベースボール・マガジン社)『結果を出す人のこころの習慣』(サンマーク出版)など多数がある。

※HP メンタルトレーニング・応用スポーツ心理学研究会
http://www.mental-tr.info/