私は、やる気を引き出すには二つのパターンがあると考えています。一つは、一時的に強い力で刺激を与えてやる気を引き出すパターン。もう一つは、根っこの部分を刺激しながら、ゆっくりとやる気を引き出すパターンです。
 

 

前者は、親にすすめられたから(ときには叱られたから)、ライバルに負けたくないから、テストで良い点を取りたいからなどの、外的なものから受けた刺激によって奮起することでやる気が引き出されるパターンです。塾通いをすることも、この刺激にふくまれると思います。

 

これらは少し強い薬ではありますが、やる気を引き出すきっかけになることは確かです。ただし気をつけたいことがあります。
子どもがちょっとやる気になったからといって安心しないことです。そもそも親からの号令や提案で物事を始めるということからは、なかなか物事の本質にたどり着く体験はできないものです。ですので、「鉄は熱いうちに打て!」のごとく、やる気を引き出すために外的な刺激を子どもに与えはじめたら、三カ月くらいは手を出したり引っ込めたりしながら、子どもの内側から意欲がわき、やる気が引き出されて学習習慣が身につくようになるまで協力してあげてください。

 

そして、少しでもきっかけをつかんだら、そのあとは焦らず、お子さんに合わせて根っこの部分を刺激しながら、ゆっくりと本物のやる気を引き出す工夫をしていきます。

 

やる気を引き出すことを難しく考えなくていいのです。お子さんをじっと観察し、勉強や遊びに関係なく、子どもが自分から進んで取り組むことに注目します。そこには、本物のやる気のスイッチをオンにするヒントが潜んでいますので、それを活かした工夫を考えて試していけばいいのです。

 

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「楽しい」「わくわくする」気持ちがやる気を引き出す

 

子どもの本物のやる気は、「楽しい」「わくわくする」という気持ちからわき上がってきます。この気持ちがあれば、多少つらくても、猛烈なパワーで粘り強く食らいついていく力強さを発揮します。

 

子どものやる気のスイッチを見つけるときのポイントは、焦らないようにすることです。たとえ学習カリキュラムに乗り遅れていても目をつぶります。「周りの同年代の子ができているのにうちの子は!」と、ほかの子とわが子を比べるモノサシも持ち出さないようにします。「この時期こそ手をかけるべき!」と焦らずに、子どもの“今”をそのまま受け止めるようにします。そして、「わが子なのに今さらあらためてやらなくても」と思わず、わが子をよく観察し、何をしているときに集中しているか、反対に集中できないのは何をしているときなのかを確認します。

 

よく観察してわが子について理解が深まったら、その子の得意な部分を刺激してじっくり学ぶ姿勢を身につけさせるようにしながら、本物のやる気を引き出します。

 

子どもたちが真剣に勉強に取り組む時期は、人生という時間のなかでは限られています。その時期をのがすことなく、子どもの学習へのやる気を引き出したいという思いから、お子さんに声をかけている親御さんは少なくないでしょう。

 

また、子どもに任せておくと何もしないから、親御さんがいろいろとお膳立てをして、あれをやって、これをやってと子どもにやらせているケースもあるでしょう。

 

中学受験に臨むお子さんたちを日々預かっている私も、親御さんたちの気持ちはよくわかります。

 

でも、こればかりを続けても良い結果は得られないこともわかっています。そこで、親御さんといろいろと相談をして、あの手この手で工夫を重ねながらお子さんの成長を見守ってきました。その結果、今は子どもたちのやる気を引き出すことができています。

 


具体例を示す、または親がやって見せる

 

子どもに何かを伝えたり、教えたりすると、なぜかホッとします。

「ちゃんと言ったから子どもも理解しただろう」
という思い込みと、
「一回言ったんだからわかるよね」
という思い込みがあるからでしょう。私も親ですからよくわかります。当然もう子どもはわかっているものだと、勘違いしてしまうことが少なくありません。


子どもに刺激を与えようと思って話しかけたとき、子どもが話を素直に聞いて理解しているように見えても、安心しないようにします。
 

また、具体的な方法を伝える必要があります。話をしておしまいにせずに、親が実際にやっているところを見せて、具体的な方法に気づかせるのもいいでしょう。
 

さらに、最初は子どもができそうな小さな目標を提案することも大切です。「できた!」という達成感を与え、「楽しい」「わくわくする」という気持ちを繰り返し体験させるように工夫します。子どもの顔に「楽しい」「わくわくする」という表情が見えるまで、あきらめずに続けてほしいと思います。

 

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では、ここからは具体的に子どものやる気を引き出す方法をご紹介していくことにしましょう。子どもにとっても親にとっても無理がないような方法です。

 

最初に、次の3つの項目について、ご自身の子育てを振り返ってみてください。


(1)テレビがつけっぱなしではありませんか?
(2)子どもの物を買うとき、ついつい親が決めてしまっていませんか?
(3)家族の予定は、リビングなどの家族みんなが集まる場所で共有していますか?

 

(1)について。子どもの話に耳を傾けるためにも、テレビをつけっぱなしにしないようにしましょう。一般的には、子ども部屋よりリビングで勉強する子のほうが多いようです。わが子の様子を見て、リビングで学習するほうが集中できるようなら、学習習慣が身につくまではテレビをひかえて、落ち着いたりビングの環境づくりをしましょう。

 

(2)について。子どもの物を買うときは、できるだけ子どもの意見を尊重してあげてください。子どもは、自分で決めて買ったものはていねいに扱います。また、買うときに子どもの意見を聞くようにすれば、自分の意見を人に伝える良い練習にもなります。

 

(3)について。子どもの学校行事などについて親が把握していると、ちょっとした会話がはずむようになります。親子の会話のキャッチボールがうまくいくと、不思議と子どもは前向きになれるものです。また、お互いの予定がわかれば、親は子どもに、子どもも親に、ちょっとした心づかいができるようになります。家族の予定を確認できる環境をつくっておくといいでしょう。

 

いかがでしたか? この3つは子どものやる気を引き出す工夫をするときの、基礎となるものです。ご自身を振り返って、まずはこの3つの状態を整えてみてください。

 

 


【出典】『小学生の「やる気」は親しだい!』 (PHP研究所)

 

【著者】

吉本笑子 よしもと・しょうこ
「花マル笑子塾」主宰。
子どもたちが大人になったときに財産となるような活きる「学び」を伝えることを指針として、中学進学指導を30年以上にわたって行なう。「知るって楽しい」を体験する学び方や、得た知識を使って深く考え、自分らしく考える学び方を提唱し、受験をする・しないにかかわらず、その子らしい学び方を追求する。また、子どもに深くて豊かな学びを提案できるような母を育てるための「PJ ママスクール」を開講し、“母親育て”にも力を入れている。
著書に、『子どもを伸ばす花まるママのことば塾』『学力を無理なく伸ばす花まるママのらくらく家庭学習術』(岩崎書店)、『花まるママの子どもの才能を伸ばす魔法のことばノート』(かんき出版)など多数。
花マル笑子塾 http://www.shounet.com