年齢だけでなく、そのときの家族構成や親の健康具合によっても、大きく異なってきます。結婚して夫と二人だけのときには、慣れない家事にとまどったり、仕事との両立で大変なこともあったりするかもしれません。

 

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しかし、ある程度は忙しくても、子どもがいる生活に比べたら少しはくつろげる時間をもつことができるでしょう。疲れたら、すぐにリフレッシュしやすい生活とも言えます。

 

ところが、子どもが生まれると、生活は一変します。

 

仕事や家事は、自分ががんばればどんどんとはかどり、余裕の時間を作ることができますが、子育てはそうはいきません。

 

働いているとしたら朝七時に子どもを起こして八時には保育園に送って家に戻り、仕事に出かける前に洗濯物を干して……、と予定していていても、子どもがぐずってなかなか起きなければ、朝ごはんや着替えの時間が遅れ、家を出るのは八時半。洗濯物を干す時間もなく、職場にダッシュ。結局、パートから帰宅して洗濯物を干したけれど、そのために夕食作り、お風呂の時間が遅れ、そのまま寝る時間も遅くなってしまうというのが現実でしょう。また、子どもが熱を出したら仕事を休み、家事は後回しにして病院へ……。子どもが幼児のうちは、してあげなければならないことが多く、肉体的にお母さんがいちばん疲れるときだと言えます。そこに仕事が加われば、疲れがたまるいっぽうです。

 

また、出産を機に仕事を辞めていたとしたら、「自分がやれば何でもできると思っていた自信」だけでなく、「バリバリと働いて輝いていた自分」も失ったと感じることもあります。これは、累積疲労の原因の一つである、ショックおよび対象喪失に当てはまります。今まで当たり前のようにあった自分の生き方とも言うべきものを、ダブルに喪失すれば、気持ちが落ち込み、徐々に体は疲れているのに眠れないといった症状が出てくることになります。

 

このように、子どもと一緒に暮らす生活は、自分がどんなに努力しても、予定通りにはいかないことの連続です。そのときに、今まで「自分ががんばれば何とかなる」と思って、乗り越えてきた人は、無理をしてしまいます。でも、無理をしてもどうにもならないこともあるのです。それでもなお、がんばろうとすると、どんどん疲れをためこんでしまい、やがて累積疲労となります。

 

また、子どもの人数や、年齢、歳の離れ具合によっても、疲労の度合いが変わってきます。

 

四歳、三歳、二歳の年子の三人の子を持つお母さんが来られましたが、聞けば聞くほどハードな毎日です。洗濯機だけでも、毎日二回は回さなければならず、三人をお風呂に入れた後には、やることは山積みなのに、気力がどこにもないと言うのです。

 

中学生と高校生の食べ盛りの男の子がいる方は、「食事を作っても作っても足りない……」となげき、料理が嫌いなその人には大変な苦痛になっていることがわかりました。

 

それでもまだ、体力も意欲もある二十代から三十代前半で子育てをしている人なら、多少疲れても充分に睡眠をとれば、すぐに元気になることもあります。

 

三十代後半から四十代に子育てのピークがくれば、そうはいきません。近くに子育てを手伝ってくれる両親や、困ったときに助けてもらえる友達がいれば救われますが、心配なのは身近にサポートしてくれる人がいない場合です。「誰も助けてくれないから、自分がやるしかない」とがんばっているうちに、累積疲労になってしまうのです。

 

いちばん大変なのが、出産が遅く、子育てのピークが四十代になり、子育てと親の介護が重なってくるケースです。

 

子育てと介護が重なると、累積疲労の三大原因である、寝不足、ストレス、ショックの全てが一気に当てはまるような状況になってしまうのです。

 

子育てだけでも寝不足になりやすいのに、親の介護が加われば物理的にやることが増えて、ますます睡眠時間が減っていくでしょう。自分の時間をもつ余裕もなくなるので、上手にリフレッシュすることもできません。解消する間もなく、ストレスがたまっていきます。

 

さらに、今まで当たり前のように元気で、孫の成長を非常に喜んでくれていた父や、孫の面倒を見てくれていた母が、突然病気で倒れたり、その後遺症で介護が必要になれば、相当のショックです。自分で自分の体をいたわらなければ、累積疲労になってしまうのが自然なほど過酷な状況です。

 

このようなときには、一人でがんばらずに夫やきょうだいに相談し、自分が抱えている作業のなかでできるものを助けてもらうことが何よりです。また、“育児も介護も自分でする”と決めつけずに、子どもなら保育園へ、親ならデイサービスを利用するといったことを選択肢に入れることも検討するとよいでしょう。

 

いくつかの例を見てきましたが、疲れのたまり方、ストレスの感じ方は、家族構成や環境によって大きく違ってきます。だからと言って、急に家族構成や環境を変えることはできませんが、自分が疲れをためやすい状況にあることを認識して、疲れを早く解消することならできます。

 

今のあなたの家庭は、どのような状況ですか?

 

この機会に見直してみましょう。

 


 


【出典】『「累積疲労」がスッキリとれる本』 (PHP研究所)

 


【著者紹介】
堀 史朗 ほり・しろう

医学博士。山口大学医学部および同大学大学院博士課程修了。アルバートアインシュタイン医科大学、ペンシルベニア大学医学部、ジョージタウン大学医学部に留学。帰国後、東京慈恵会医科大学附属病院、板橋中央総合病院勤務を経て、東京・恵比寿に「エビス心療内科」を開業。ストレスに悩む幅広い年齢層の人々を診療するなか、原因不明の不調を「蓄積疲労」と名付け、治療にあたる。