「やりたいことがあるのになかなかできない」。これは現代人なら誰もが持つ悩みです。心理学の1分野、「行動分析学」から解消のヒントを得ませんか。

 

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■自分を責めなくていい
 
 
「下の子も中学校に上がって手がかからなくなったし、そろそろ何かしてみたい」、「子育てや家事も楽しいけど、たまにはひとりでどこかに行きたい」、「子どもができる前は毎日していたテニスをまたやりたい」……。
 
そんなふうに思いながらも日々の生活に追われ、時間だけが過ぎて行く。このまま歳をとっていくのかなと不安になったり、焦ったり。それでも最初の一歩が踏みだせず、何かを始めても続かない。そして、自分はだめだと責めてしまう。
 
ご安心ください。やりたいことができない。これは誰にでもあることです。あなただけの問題ではありません。
 
でも、と反論されるかもしれません。悪友のAは海外旅行やコンサートに行きまくっているし、近所のBさんは料理教室に通い続けて今やパティシエなみの腕前。取り残されているのは私だけだと。
 
ところが、AさんやBさんにも、やりたいけどできていないことは必ずあるはずです。やれることよりもやりたいことの方が多いというのが、現代社会の特徴の一つだからです。
 
もちろん、やりたいことには個人差があります。性格も影響します。波瀾万丈な人生を楽しむ人と静かで落ち着いた毎日を愉しむ人とでは、興味を持つ事柄や広がりが違います。やれることにも個人差があります。家族構成や家計の状況も影響するでしょう。
 
それでも、やりたいことのうちできていることの割合を《達成率》として計算すれば、その値はそれほど変わりません。なぜでしょう。活発な人はやりたいこともそのぶん多いからです。
 
つまり、達成率が低いときに、それを生まれ持った性格やおかれた状況のせいにしたり、自分を責めたりするのはナンセンスということになります。
 
 
 
 
■「行動管理法」で達成しよう
 
それでは、やりたいことをできるようにする方法はあるのでしょうか。
 
実は、性格や状況によらず達成率を上げる有効な方法があります。それが「行動管理法」です。
 
行動管理法は行動分析学の研究をもとにしたテクニック集のようなものです。行動分析学とは、望ましい行動を引き出して増やす方法(環境設定)を実験で突き止める心理学です。教育や臨床、医療や福祉、スポーツや経営など、広い範囲に応用されています。
 
達成率を上げるためのテクニックをいくつかご紹介しましょう。
 
 
 
 
 
(STEP 1)大きな目標を考える
 
大きな目標はあなたの未来の姿です。3、5、10年後に、こうなりたい、こうありたいというイメージをふくらませて考えましょう。夢を描き、それを具体化して書くわけです。
そして、テニスをするにしても、旅行に行くにしても、英会話を習うにしても、何のためにそれをするのか考えます。汗を流して健康を維持したいのか、友達と楽しい時間を過ごしたいのか、老後を海外でエンジョイするためなのか。それによって、同じことをするにしても、やり方や一緒にする人が変わってくるし、同じ目標を達成できる別の行動も発見できます。
たとえば、お友達と一緒に過ごす時間が重要で、お友達が山登りを始めていたら、あなたもテニスではなく山登りを始めてもいいのかもしれません。小さな目標を柔軟に考える上でのヒントにする、そこがポイントです。
 
 
(STEP 2)小さな目標を考える
 
大きな目標を達成するために、まずやらなくてはならないこと、毎日することなどを考えます。近所のスポーツジムの入会案内を集めるとか、毎朝NHKの「おとなの基礎英語」を観るとか、コンサートのチケットを買うなどです。
小さな目標は達成できたかどうかを簡単に判断できるように具体的に決めます。期限(いつまでにする)や合格ライン(週に何回以上するなど)も設定します。「スポーツジムの情報を集める」ではなく「入会案内を集める」としているところがポイントです。ここが曖昧だと、近所の人と立ち話をしただけで達成としてしまうかもしれません。自分で自分をごまかそうとする誘惑に打ち克つ勝算は高くありません。最初から避けましょう。
期限を決めるのも同じ狙いです。「いつかやろう」という先延ばしの誘惑に負けないためのテクニックです。
 
 
(STEP 3)目標は書き出し、保存し、見直す
 
大きな目標も小さな目標も必ず書きだします。頭の中に入れておいてもうまくいきません。そして、毎日、目にふれる場所に置きましょう。手帳でもいいですし、カレンダーの横に貼っておくのもいいでしょう。スマホのアプリも便利です。
 
大きな目標は、中長期目標として1年ごとに、小さな目標は、適宜、月間・週間・日間目標に分け、達成するごとにチェックを入れ、定期的に達成率を確認して、見直します。
 
小さな目標に期限をつけて書きだせば、実行不可能な目標も見つかります。1日が48時間ないと終わらないほど目標の数が多ければ、目標を取捨選択したり、一部を延期したりします。最初は達成率が9割以上になるように計画することが大切です。
 
 
(STEP 4)目標達成を練習して、上達する
 
小さな目標には、ほぼ間違いなく達成できるやさしい目標もいくつか含めておきます。そうすることで、やりたいけどできないかもしれないことをやりきって、その達成をチェックするという一連の行動パターンを練習できます。練習は上達につながり、より難しい目標も達成しやすくなります。
 
 
 
 
(番外編)
 
行動管理法は効果があることが確認されている方法ではありますが、特定のテクニックに関していえば、誰のどんな行動にも有効だという訳ではありません。むしろ、ここで紹介した考え方を参考に、ご自分の行動を客観視して、どのような環境設定をすればどのように行動が変わるのかを楽しみながら探求されることをお勧めします。
 
なお、私ごとですが、『じぶん実験のすすめ(仮題)』(ちくま新書)という本を近日刊行予定です。行動分析学や行動管理法、自分で自分の行動を探求する方法などを詳しく解説した本になりますので、興味のある方はぜひご一読ください。
 
 
 

 

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島宗 理 しまむね・さとる
法政大学文学部心理学科教授。
1964年、埼玉県生まれ。専門は行動分析学。著書に『人は、なぜ約束の時間に遅れるのか 素朴な疑問から考える「行動の原因」』(光文社新書)などがある。