「言うことを聞かない」「グズグズしている」「落ち着きがない」……子どもの「困った行動」や「気になる行動」に対し、親が適切な対応を学ぶことで、親子の生活を穏やかにしていくことを目指すのが「ペアレント・トレーニング」です。家庭直販書『子どもの「困った行動」はお母さん次第で変えられる!』から、ほめ方のポイントを学びます。

 

nageru.jpg

 

子どもが行動したら、すぐほめます

 
 
子どもが好ましい行動をしているとき、そっとしておく親は多いものです。「せっかくいい調子だから、邪魔しないでおこう」と、つい思ってしまうようです。
でも、遠慮は無用です。声をかければ、たしかに子どもの集中はいっとき途切れてしまうかもしれませんが、すぐほめるメリットのほうが、ずっと大きいのです。
親が何を好ましいと思ったかを、子どもにわかりやすく伝えるには、その場で言うのが一番です。また、子どもは次の瞬間には叱られるようなことをするかもしれませんから、「今だ」と思ったらすぐほめないと、ほめる機会をのがしてしまいます。
あとで言おうと思うと、結局忘れてしまうことも多いでしょう。その場でなら3つほめられたはずが、あとで言うとひとつになってしまうかもしれません。
子どもにとっても、「さっき○○をしていたね」と終わったことをほめられたのでは、喜びも今ひとつです。その場でほめてもらえたほうが、ずっとうれしいはずです。
子どもが行動したらすぐほめてください。「子どもが始めようとしたらほめる」ぐらいのつもりでいてもいいと思います。その後、子どもが最後までやり遂げたら、もちろんそのこともほめましょう。
 
 

ほめるのは、子どもの注意を引いてから

 
すぐほめることを心がける一方で、あわてないことも大事です。
せっかくほめても、子どもが聞いていなければ意味がないからです。
 
・子どものそばに行く、または、子どもを呼び寄せる 
・子どもの名前を呼ぶ
 
まずこのような行動で、子どもの注意を引きましょう。
ただほめればいいというものではなく、「ほめられた」と、子ども自身が感じられなくてはなりません。そのためには、ほめ言葉を口にする前に、子どもと目が合うのを待つゆとりが必要です。小さい子の場合は、しゃがんで子どもと目の高さを合わせるといいでしょう。
慣れないと、「もったいぶっているみたいで照れくさい」と感じるかもしれませんが、ぜひ実際にやってみて、子どもの反応の違いを確かめてほしいと思います。
あなたが無表情だったり、声がボソボソしていたりしても、子どもはほめられた気がしないことでしょう。ほめ言葉は、笑顔で、明るい声で伝えるのが一番です。それが難しいときは、少なくとも穏やかな表情を見せましょう。
 
 

具体的な行動をほめましょう

 
ペアトレでは、「いい子ね」「やさしいね」のように漠然とほめるのでなく、子どもの行動をほめます。例えば、次のようなほめ方をします。
 
病院で待っているとき:「小さい声で話してえらいね」
家の中で:「○○(きょうだい)におもちゃを貸してあげたんだね。見ていたよ!」
 
子どものよい行動を「強化」するためには、このように、親がどの行動を好ましいと思っているかを、子どもにわかりやすく伝えます。
具体的な行動を言葉にすると、子どもは「ちゃんと見てくれている」と感じるので、より満たされた気持ちになれるのも、いいところです。
行動をほめるのは、子どもを追いつめないためでもあります。例えば、スーパーで騒がずにいられたときに「いい子ね」とほめると、「スーパーで騒ぐのは悪い子」というメッセージも、一緒に伝わってしまいます。
子どもは、望ましい行動をできるときもあれば、失敗することもあります。でも、仮に失敗しても、子ども本人が否定されることはない。失敗したら、またやり直せば大丈夫――子どもの行動をほめることは、そんなメッセージを伝え、子どもを安心させることにもつながります。
 
 

 
 
【出典】『子どもの「困った行動」はお母さん次第で変えられる!』 (PHP研究所)
 
 
 
【著者紹介】
 
上林靖子 かんばやし・やすこ
まめの木クリニック院長。医学博士。
1967年、東京医科歯科大学医学部卒業。国立国府台病院児童精神科、国立精神・神経センター精神保健研究所部長、中央大学教授などを経て現職。専門は児童思春期精神医学。特にペアレント・トレーニングの調査研究・臨床的研究。
監修書に『こうすればうまくいく発達障害のペアレント・トレーニング実践マニュアル』(中央法規出版)、『発達障害の子の育て方がわかる! ペアレント・トレーニング』(講談社)などがある。
 
庄司敦子 しょうじ・あつこ
まめの木クリニック臨床心理士。1993年、東北福祉大学社会福祉学部福祉心理学科卒業。国立精神・神経センター精神保健研究所児童・思春期精神保健部研究生、流動研究員を経て現職。子どもの心理アセスメント、療育相談、親グループの運営に携わる。訳書(分担)に『こうすればうまくいくADHDをもつ子の学校生活』(中央法規出版)がある。
 
 
森田美加 もりた・みか
まめの木クリニック臨床心理士。1991年、早稲田大学人間科学部人間健康科学科卒業。国立精神・神経センター精神保健研究所児童・思春期精神保健部研究生、児童相談所、教育センター、小児科、精神科クリニックなどの心理相談員を経て現職。