内田賢司著『1分で大切なことを伝えるお母さんの「話し方」』(家庭直販書)から、「子どもが受けとめやすい伝え方」について転載でご紹介します。

 

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私の母は73歳になりますが、
「子育ての期間なんて短いのよ。子どもはアッという間に大きくなって、あとから考えると、もっと面倒を見ていたかったと思うくらい。なのに子育て中は、ついつい、『早く! 早く!』って言っちゃうのよね~」
と妻に話しているのを聞いて、なるほどな、と思ったことがあります。
さらに、
「人生の中で一番忙しいのは子育て中、一番重圧を感じるのも子育て中なのよ」
とも言っていました。
 
おそらく多くのお母さんも同じで、目の前のやるべきことと、親としての責任が重くのしかかって焦ってしまい、毎日あわただしく、子どもをせかしてしまうのではないでしょうか。
 
しかし、「それで?」「早く!」「それから?」と言って子どもをせかしてばかりで必要なことを理解させないままにしていては、物事を深く考えない子、投げやりな子になってしまいかねません。親の都合もあるでしょうし、のんびりペースでは子どもがほかの子に置いていかれるのではと不安になるのも事実です。
それでも、子どもに何もかも一気に理解させようとまくしたてると、かえって何も伝わらないことになりがちです。一つひとつ積み重ねるように、ゆっくり、じっくりと伝えてみましょう。
 
 

「積み重ね話法」で段階的に理解させる

 
小学3年生のリエちゃんは、のんびり屋さんでマイペースな女の子。
何かをやっている途中で、違うことを考えだしてしまうこともよくあります。たとえば、算数のテストの最中にお弁当のことが気になりはじめると、テストの用紙をひっくり返してお弁当の絵を描きはじめ、結局テストのほうは半分以上が白紙のまま、という具合です。テストに限らず、図画の時間も絵が描きかけのまま終わってしまうことが多いことを、お母さんは担任の先生からそれとなく伝えられました。
そこで、リエちゃんに、どうしてそんなことになるのか尋ねてみたのです。
 
「リエ、このこいのぼりの絵、どうして半分しか描いていないの?」
「間に合わなかったから」
「時間内に全部描けないの? ほかの子は全部描いているんでしょう?」
「多分ね」
「じゃあ、あなたももっと急いで描きなさいよ。算数のテストだって最後まで終わってなかったから、あんなに点数悪かったのよ。朝だってすぐぼーっとするから毎朝遅刻しそうになるのよ。とにかく、なんでも急いでやるのよ! わかった?」
 
お母さんが何を言いたかったのか、これでリエちゃんに伝わったと思いますか?
絵の話をしていたはずが、算数のテストや遅刻の話へとどんどん広がっていって、最後はただ怒られたという記憶しか残らなかったのではないでしょうか。
お母さんが本当に伝えたかった「時間を守って行動することの重要性」や「努力する大切さ」は、次のように一つひとつ段階を踏むと、子どもにもよく伝わります。
 
母「リエ、このこいのぼりの絵、半分しか描けてないよ。このままでいいの?」
リエ「いいよ、できたところまででいいって先生も言ってたし」
母「お友だちはどんな感じなの? 同じように半分しか描けていないの?」
リエ「わかんない。でも、みんなは描くの早いから、全部できたんじゃないかな」
母「じゃあリエも大急ぎでやってたら、全部できたかもしれないね」
リエ「大急ぎで? そうしたほうがいいの?」
母「うん、できればね。学校の授業は全部、時間が決まってるでしょ。テストのときも時間内に答えないと点数がつかないよね。これは決められた時間でやってくださいってことなんだよ。こないだのテストだって、もうちょっと急いで全部答えていれば、もっといい点だったと思うな」
リエ「ふ~ん……」
母「時間を守ってがんばるのは少し大変だけど、こいのぼりも半分だと何だか食べかけの魚みたいじゃない? やっぱりちゃんと完成させたほうが何を描いているかわかって気分もいいと思うよ」
リエ「でも急いで描くの、大変なんだもん」
母「そうだね、でも、大変だからこそ全部できたら『やった!』って気持ちになるんじゃないかな。今までは『あ~、もう終わっちゃった』って感じだったでしょ?」
リエ「うん。時間が来るの早いんだもん」
母「だったら今度は一回大急ぎでやってみたらどうかな? 全部終わったとき、本当に『やった!』って気持ちになるかどうか確かめてみたらいいんじゃない?」
リエ「そうかな? じゃあ、やってみる!」
 
 
いかがですか? 一生懸命やると達成感が得られることを、簡単な言葉で短い会話を重ねながら段階的に伝えています。何度も同じ説教を繰り返していると思う方は、この方法を試してみてください。
 
 
 

 
 

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【出典】

内田賢司 著・家庭直販本
子どもの集中力は1分が限度。言いたいことはギュッと短く、わかりやすくまとめましょう。叱る、ほめる、励ます等、目的に合わせて“しっかり伝わる”話し方を紹介します。
 
 
【著者紹介】
 
内田賢司(うちだ・けんじ)
「話し方研究所」代表取締役。
人の心と表現、行動に興味を持ち、コミュニケーション教育の講師となる。身の回りで起きた出来事を臨場感たっぷりに話すことを得意とし、聞く人を惹きつける講義で受講者の人気を博している。また、一般社団法人女性企業家支援協会やウーマンブレインなどの女性支援団体でも講師を務め、女性の社会進出や育児サポートに積極的に関わっている。
主な著書に『好かれて尊敬されるあの人の聞き方・話し方』(明日香出版社)、『たった20秒! “あッ”という間の説得術』(アーク出版)などがある。