お母さんがよく使う言葉の中には、子どもに伝わりにくいものがあります。子どもに誤解されたり、勘ぐられたりしては、せっかくのコミュニケーションも台なしです。例えばこんな“あいまい言葉”を使いすぎていないか、振り返ってみてください。

 

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(1)「いつも」「みんな」

「あなたはいつもやることが雑ね」
「クラスのお友だちは、みんなもっと勉強しているでしょう」
このような言い方は、「一般化」と言われます。
実際には、どんな子も丁寧に何かをすることはあるし、クラスメートが一人残らずよく勉強しているということもないはずです。一般化して言うと、お母さんの言葉は、不正確な、アンフェアなものになります。子どもは「僕(私)をちゃんと見てくれていないな」と、お母さんの言葉を誤解して受け取ってしまうでしょう。子どもと話し合うときは、「この字はちょっと雑に見えるよ」と、具体的な言い方で伝えるよう心がけることが大切です。
「いつも」は、子どもを叱るときには、特に使わないほうがいい言葉です。「あなたはいつも支度が遅いね」と言うより、「あなたはふだんは早くできるのに、今日は遅いね」と言ったほうが、子どもはずっとやる気になれます。
 

(2)決めつけ

「お前は絶対に嘘をついている。本当のことを言いなさい」
このような話し方は、「歪曲」と言われます。
私たちは、他人の考えや思いを推測することができますが、推測ですから、自分の思い違いが入っている可能性もあります。しかしこの例は、自分の思い込みで、相手の考えや思いを決めつけています。それが「歪曲」と言われるゆえんです。
もし、「お母さんはわかってない」と子どもが訴えてくる場合、もしかしたら、お母さんは、この「歪曲」、すなわち思い込みで話しているかもしれません。そんなときは、「お母さんは、その話はお前が嘘をついていると思うのだけど、違っているかな?」と言い方を変えてみてください。
 

(3)省略

「お母さん、知っているよ」
このように話の一部を省略すると、何を知っているか言わないので、子どもは何について知っているのか考え込みます。非難されたと誤解することもあるでしょう。子どもにわかるように、「お母さんは、○○(名前)ががんばって、勉強しているのを知っているよ」と言えば、子どもが誤解することはありません。
 

(4)表情と裏腹な言葉

子どもがお皿を洗ってくれたとき、(あ一あ、床がビショビショだ)とがっかりしていると、口では「お手伝いしてくれてありがとう。助かったよ、うれしい」と言いながらも、内心の思いが無意識のうちに表情に出てしまいます。話している内容と、振舞いが食い違うのです。子どもは親の表情や態度に敏感ですから、優しい言葉と怖い顔と、「どちらが本当だろう」と迷い、お母さんの言葉を信頼できなくなります。
「お母さんはいつもお前のことが好きだよ」と言いながら、顔では怒っている。このようなコミュニケーションを繰り返すと、子どもはどちらが本当のお母さんかわからなくなり、混乱してきます。時には、混乱が心の病気を引き起こすこともあります。
子どもに余分なストレスをかけないためには、お母さんの気持ちと話している内容を一致させることが大切です。(床のことは気にしない!)と気持ちを切り替えてかえてから、子どもに「ありがとう」と笑顔で言葉をかけてください。
 
 
 
【出典】 『アドラー博士の子どものやる気がどんどん湧き出るお母さん講座』 (PHP研究所)
 
 

 

 
【著者紹介】
星一郎(ほし・いちろう)
心理セラピスト。1941年、東京都生まれ。東京学芸大学卒業。都立梅ヶ丘病院精神科心理主任技術員を経て、都立中部総合精神保健福祉センター勤務。その後、財団法人精神医学研究所兼務研究員、日本アドラー心理学会評議員などを歴任し、現在、子育てボランティア団体「わいわいギルド」代表のほか、IP心理教育研究所所長を務める。専門は個人カウンセりング、個人心理療法。オーストリアの精神科医・アドラー博士が提唱した「アドラー心理学」を取り入れた子育て論や子どもへの対処法には定評がある。
著書に『アドラー博士の子どもを勇気づける20の方法』(サンマーク文庫)、『アドラー博士が教える子どもの「くじけない心」を育てる本』(青春文庫)、『アドラー博士が教える10代の子には「親の話し方」を変えなさい』(青春出版社)などがある。