お母さんが緊張すると子どもも緊張します。長い子育て期間にはユーモアや笑いが欠かせません。
星一郎著『アドラー博士の子どものやる気がどんどん湧き出るお母さん講座』より、ご紹介します。
 
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子育てを真剣勝負だと考えるのは、あまりよくありません。真剣勝負と考えると、子育て期間は長いですから、お母さんも大変でしょう。お母さんだけでなく、子どもも大変です。
「私ががんばって、子どものためにいつもベストの環境を整えなければ」とか「子どもが失敗しないよう、目を離さないようにしないと」とお母さんが考えていると、子どもも緊張するのです。
 
緊張を解くには、親子で笑い合うことです。緊張した場面でも、笑えば気持ちがずっと楽になります。カウンセリングのひとつに、「笑い療法」というのがあるくらいです。「笑い」というものは、心の健康のためにも絶対に必要なものなのです。
ことわざに「笑う門には福来たる」というのがありますが、子育てでもまさにそうなのです。辛く、難しい問題を抱えている人が、カウンセリングの中で何かのきっかけで笑うと、その後のカウンセリングが生き生きしてくるという経験を何度もしました。
子育ても同じです。親子の関係が緊張状態にあるときに、何かのきっかけで、お互いが笑ったら、その後の話はスムースに進むでしょう。子育てには、ユーモアが大切です。
 
子どもの緊張を解き、笑いを誘う、簡単なやり方があります。それは、お母さんの子ども時代の失敗談を話してあげることです。「成功した話のほうが、子どものためになるのでは?」と思いがちですが、子どもを元気にするのは、むしろ失敗談です。
「お母さん、あなたと同じぐらいの頃、どうしても欲しいものがあったの。急いでそのお店に行って、お金を払おうとしたら、財布を持っていくのを忘れていたの。恥ずかしくて、顔から火が出そうだったよ」
こんな他愛のないお話でいいのです。お母さんの失敗談を聞くと、子どもは「何だ、お母さんだってヘマするときもあるのだ。それじゃ、自分とそんなに違わないよ」と思い、ホッとして自信が出てきます。
 
「二度あることは、三度ある」
「三度目の正直」
この二つのことわざは、似ているようで違います。「二度あることは三度ある」は、「よくないことが二度続くと、次も悪いことが起きる」と戒めることわざです。
「三度目の正直」は、「悪いことが二度も続いたから、次の三度目はうまくいくよ」と、楽観的に構えることを教えることわざです。
あなたは、どちらのことわざが好みですか?
お母さんに聞くと、多くの方が、「二度あることは三度ある」を選びます。油断は禁物、悪いことのほうに備えなければ……と考える、真面目なお母さんが多いようです。
 
しかし子育てでは、これから起きることは、誰にもわかりません。どうせわからないのなら、よいほうを信じたほうが、気持ちよく物事を考えられます。悪いことが二度続いたら、「三度目の正直」を信じて、「今度こそ、いいことあるぞ」と考えることが、子育てでは大切です。そうすれば、子どもにもよい影響を与えます。お母さんの楽天的な生き方は、子どもをも楽天的な子どもにします。
「一寸先は闇」ということわざもあります。お先真っ暗なときによく使われます。
しかし、この言葉もよく考えれば、「一寸先からが闇」なのです。目の前の一寸は明るいのです。遠くを見れば闇でしょう。しかし、足元は常に明るいのです。私たちがしっかりと足元を見つめて歩いていれば、決して闇にはならないのです。
 
子育ても、あまり先のことを心配する必要はありません。目の前の子どもをよく見て進めば、心配するようなことはないのです。このような、お母さん、お父さんのユーモアや楽観的なものの考え方が、逆境に負けない子どもを育てるのです。
 
 
 
 

 

【出典】 『アドラー博士の子どものやる気がどんどん湧き出るお母さん講座』 (PHP研究所)

 
 
【著者紹介】
星一郎(ほし・いちろう)
心理セラピスト。1941年、東京都生まれ。東京学芸大学卒業。都立梅ヶ丘病院精神科心理主任技術員を経て、都立中部総合精神保健福祉センター勤務。その後、財団法人精神医学研究所兼務研究員、日本アドラー心理学会評議員などを歴任し、現在、子育てボランティア団体「わいわいギルド」代表のほか、IP心理教育研究所所長を務める。専門は個人カウンセりング、個人心理療法。オーストリアの精神科医・アドラー博士が提唱した「アドラー心理学」を取り入れた子育て論や子どもへの対処法には定評がある。
著書に『アドラー博士の子どもを勇気づける20の方法』(サンマーク文庫)、『アドラー博士が教える子どもの「くじけない心」を育てる本』(青春文庫)、『アドラー博士が教える10代の子には「親の話し方」を変えなさい』(青春出版社)などがある。