「ビンボー老後」という言葉に必要以上にビクビクする必要はありません。安心して老後を迎えるために、家庭を支える主婦がぜひ知っておきたい知恵を荻原先生に聞いてみました。

 

 

「金持ち老後vsビンボー老後」の分かれ目って?

 

増税や不安定感を増す年金制度。「私たちの老後はどうなるの!?」と不安になっているご家庭は少なくないと思います。厳しい経済状況であることは確かですが、不安感を募らせているだけでは何の解決にもなりません。

総務省が発表している「家計調査」によると、金融資産だけで4000万円以上をもつ世帯は6世帯につき1世帯の割合で存在します。一方で明日の生活もおぼつかない人たちもいます。そして圧倒的に多いのがその中間、「今は困っていないが、このままでは老後が不安」という層です。読者のみなさんも多少の幅はあれ、この層に当てはまるのではないでしょうか。

そんなみなさんにお伝えしたいのは、これからどう行動するかが「金持ち老後」と「ビンボー老後」の分かれ目になるということです。安心して老後を迎えるためのポイントや考え方をお伝えしましょう。

 

データで見る  どうなるの? 私たちの暮らし

 

【不安要素はこの3つ!】

 

(1)増税...来年4月に10%に上がる消費税に加えて、今後は所得税や相続税など個人の税負担が増えると予想されます。

 

(2)社会保険料アップ...社会の高齢化に伴い、厚生年金や健康保険などの社会保険料は、毎年引き上げられることが決まっています。

 

(3)終身雇用の崩れ...今や終身雇用、年功序列は難しい時代。早期退職や出向の可能性も視野に入れた生活設計が必要です。

 

【みんなの給与と貯蓄額】

 

(1)平均給与額...平成26年/415万円(男性514万円/女性272万円)

 

ピークは1997年の467万円。以降下がってはいるが、前年に比べると14万円増加している。

 

(2)世代別 平均貯蓄額(ファミリー世帯)

 

30代...平均貯蓄額:375万円 平均金融資産保有額:717万円

40代...平均貯蓄額:465万円 平均金融資産保有額:974万円

50代...平均貯蓄額:856万円 平均金融資産保有額:1941万円

60代...平均貯蓄額:1342万円 平均金融資産保有額:2462万円

 

30~40代は子育て費用等の負担がかかるが、子どもが独立し始める50代からは貯めどき。この時期の貯蓄が「金持ち老後」には欠かせません。(金融資産とは、貯金以外の保険や債券、株式などを合計したもの)

 

「金持ち老後」を迎えるための4ヵ条

 

(1)借金を返す

 

まず、何よりも重要なのは借金を返すことです。「70歳まで住宅ローンが組めるから」と35歳ぐらいで35年ローンを組む方がいますが、65歳で年金をもらう段になっても10万円のローンを支払っていくのは無理があります。

最低限、年金をもらう年齢になるまでに住宅ローンを完済しておく。できれば55歳までに終わらせるぐらいのペースで繰り上げ返済をしていきましょう。

なかには「貯金がないと不安だから」と100万円単位の貯金をもちながらローンを抱えている人がいます。借金の利息のほうが断然高いのに、貯金しながら高い利息を払うなんてもったいない話です。例えば住宅ローンを借りて1年後に100万円返済すると利息は約100万円減ることになります。今どき100万円投資して200万円になる金融商品はなかなかありません。

また、子どもが小さいうちは教育費もかからないので繰り上げ返済には最適です。50~55歳の時点で「貯金も借金もない」つまりプラスマイナスゼロなら上出来。そこから老後資金を貯めれば十分に間に合います。

 

(2)1500万円の貯金をする

 

「老後資金として3000万円が必要」などといった試算も出回っていますが、そんなことはありません。私は現実的な数字として「夫婦で1500万円を準備しましょう」と提案しています。

例えば55歳で「貯金も借金もゼロ」というスタート地点に立ったとします。55歳といえば子どもも就職、独立する年齢です。それまで10万円ずつ必要だった住宅ローンや教育費がなくなりますから、それだけで年間240万円が貯金に回せます。10年で2400万円。妻のパート代年間100万円を足せば3400万円。この貯金に夫の退職金や年金があれば、もう盤石な「勝ち組」です。

医療費は高額になれば助成があるし、年齢とともに食べる量や行動範囲、人づきあいは自然にダウンサイジングします。つまり生活費は今より少なくてすむのです。さらに今から生活のダウンサイジングに取り組み、慣れておけば、スムーズに借金の返済、貯金へと進めるはずです。

 

(3)スキルアップを目指す 

 

終身雇用が崩れた今、資格取得を目指す人が増えています。資格取得を考えるときに大事な視点は、「どの資格が有利か」ではなく「今までのキャリアに有利になる資格は何か」です。

例えば経理の仕事をしている人がカラーコーディネーターの資格を取っても、経理のキャリアアップにはつながりません。転職、再就職には「私はこれができます」というアピールが重要。そのとき、経験年数とともに簿記や秘書検定などの資格があれば、先方は「この人はこれぐらいの仕事ができるな」と具体的にイメージできます。

不動産会社なら宅地建物取引士、旅行会社なら旅行業務取扱管理者など、その資格をもっている人がいなければ事業所が成り立たないという資格であれば、なお強いです。教育訓練給付金制度なども利用して、自分のキャリアに関連した資格取得でスキルアップしましょう。

 

(4)妻も働く

 

今は専業主婦という方も、子どもの手が離れたら働くことをおすすめします。夫だけが働くより夫婦で働くほうが心強いのは当然です。失業や病気で夫が働けなくなった場合でも、妻が働いていれば家計も家庭も健全さを保てます。

自宅でネイルサロンや料理教室を開きたいという人がいますが、それはあくまで趣味の延長であり、仕事とは切り離して考えてください。働くとは「日銭を稼ぐ」ということ。家庭と仕事のバランスを上手にとりながら、「自分も家計を支える」という意識を今まで以上にもつことが大事です。

 

「借金を返す、返したら貯める」が黄金ルール!

 

老後のお金について考えることは、どんな老後を送りたいかを考えることです。生きていくのにお金はもちろん必要です。けれど、ただお金を貯めればいいというものでもありません。自分が何を幸せだと感じ、どんな老後を送りたいのか。そこを考えずに貯めることだけに集中してしまうと、「貯金はできたけど友だちはいないし趣味もない。こんなに寂しいとは思わなかった」ということになりかねません。

興味深いデータがあります。高収入カップルと低収入カップルとの比較で、「仲が悪い」と答えたのは高収入カップルが10.7%、低収入カップルが2.5%だったのです。目の前に「お金がない」という問題があると、ケンカなんてしていられません。一緒にがんばろうと支え合うことがすでに「幸せ」なのでしょう。

10年先のことなど誰にも正確にはわかりません。だからこそあまり突き詰めず、「まずは借金を返す、返したら貯める」という方向性だけはぶれずに、あとは今の生活を大事に楽しみましょう。目先のことを大事にしていけば、将来は悪いことにはなりません。

 

【著者紹介】

荻原博子(はぎわら・ひろこ)

1954年生まれ。早くからデフレ経済の長期化を予測し、家計のスリム化や現金の重要さなどを説き続ける。メディアで多くのレギュラーをもち、生活に根ざした独自の家計論を展開している。新刊に『10年後破綻する人、幸福な人』(新潮新書)がある。

 


 

くらしラク~る「PHPくらしラク~る」は主婦が何気ない毎日をラクに楽しく過ごせるように応援する生活情報。 2016年4月号の特集は<55歳・貯金ゼロでもOK♪「金持ち老後」は手に入る!>です。

 

年間購読のご案内

毎月、忘れずに「PHPくらしラク~る♪」を読みたい! そんなあなたにおすすめしたいのが、年間購読。毎月ご自宅へお届けします。送料無料。 年間購読のお手続きはこちらからどうぞ