貯金?運用?受け取った退職金、あなたはどうしますか?

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退職金は一般のサラリーマンにとって、生涯で受け取る最も多額のお金ではないでしょうか。ところが、それがまるまる手元に残る人はあまりいません。とくに多いのが、住宅ローンや子どもの教育ローンを清算しなければならないという人です。その結果、手元には2分の1~3分の1程度しか残らないケースもあるようです。

 

将来に不安を感じて、この“虎の子”をなんとか増やそうと考える人が出てくるのも当然ですね。

 

しかも、銀行や証券会社は「お金の教養セミナー」や「はじめての投資教室」などの講座をさかんに開き、「退職金の運用はぜひ当行(当社)で」と誘ってきます。

 

これは、ある男性の話です。大学卒で就職して以来、35年以上にわたって技術畑で仕事を続けてきた真面目な人物です。彼は昨年の7月に定年退職しました。これからは時間に縛られず、奥さんと大好きな海外旅行でも楽しむのだろうな……と半ばうらやましく思われていたのですが、実は退職してからまだ一年も経っていないというのに、なんと退職金のほとんどを使い果たしてしまったというのです。

 

「一部上場の会社に定年まで勤めていたのだから、かなりの額の退職金をもらえると思っていたけれど、実際には2500万円にもならなかった。そこで、投資で増やすことを考えたんです」

 

これまで投資経験などなかったのですが、インターネットの掲示板やSNSなどに「1カ月で2000万円儲けた」「こんなに儲かるのに、やらないのはバカ」のような書き込みがたくさんあったので、「自分にもできるはず」「他人にだけ儲けさせるわけにはいかない」と思い、自分で勉強しながら投資を始めたそうです。

 

ところが、なぜか失敗の連続。インターネットに「必ず騰がる」と書いてあった株を買えば大暴落するし、その失敗を取り返そうと焦るあまり、残った退職金のほとんどをつぎこんでしまったといいます。

 

周囲は大いに呆れましたが、少し安心したのも事実です。なぜなら、この男性があっけらかんとしていたからです。「退職金をほとんど使い果たしてしまったというのに、なんでそんなに明るくいられるの?」と聞く人もいました。

 

「住宅ローンは完済したし、すでに子育ては終わっているから教育費もかからない。極端な話、毎日食べる分のお金と死んだときの葬式代さえ残っていればいいわけですから、再就職して安月給で働いています。家でぼんやりしていると認知症になる可能性が高くなるというから、こっちのほうがいいかなって思っています。もちろん、奥さんはカンカンですけど」

 

負け惜しみに聞こえるかもしれませんが、この言葉には真理もあるようです。どこが真理かというと、「定年退職後に、お金はそれほど必要がない」という点です。

 

冷静に考えてみてください。定年退職を迎えた人のほとんどは、すでに子育てが終わっているはず。それなら教育費もかかりませんし、新しい家を建てる必要もありません。つまり、たとえ退職金が予想より少なかったとしても、それを無理に増やす必要はないわけです。しかも、相場の上げ下げに一喜一憂する生活は、心身に大きなストレスを与えます。その結果、寿命が短くなってしまったというのでは、たとえ資産を増やすことができても意味がありませんね。

 


 

【本書のご紹介】

 

一生お金に困らない老後の生活術

 

『一生お金に困らない老後の生活術』

精神科医としての立場から、中高年の方に向けて、老後にお金の心配をしなくて済むための、心の持ち方や暮らし方をアドバイスします。

【著者紹介】
保坂隆(ほさか・たかし)
1952年山梨県生まれ。聖路加国際病院リエゾンセンター長・精神腫瘍科部長、聖路加国際大学臨床教授。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学精神神経科入局。1990年より2年間、米国カリフォルニア大学へ留学。東海大学医学部教授を経て現職に。
『自分らしく生きる「老後の終活術」』『お金をかけない「老後の楽しみ方」』(以上、PHP研究所)、『感情を整える技術』(ベストセラーズ)、『お金をかけずに老後を楽しむ贅沢な節約生活』(朝日新聞出版)、『親とモメない話し方』(青春出版社)など著書多数。