老後のお金、心配し過ぎる心配はありません!

 

 

日本人の平均寿命がはじめて男女ともに50歳を超えたのは昭和22年のことでした。そして、現在の日本人の平均寿命は男女ともに80歳を超えています。つまり、驚くべきスピードで長寿を実現したわけです。

 

ところが、長生きはめでたいこととされてきましたが、やはりこれも「過ぎたるは及ばざるがごとし」なのでしょうか。お金のことを考えると、諸手を挙げて歓迎できないという風潮が強くなっています。

 

最大の問題は、定年後にかかる資金です。いくら必要なのかという話についてはさまざまな本や雑誌で語られていますが、どれを見ても「数千万円必要」などと、かなりの高額になっています。

 

しかし、だからといって、今からお金を増やそうという焦りが危険なことはすでにお話ししたとおりです。

 

では、どうすればいいのでしょうか。答えは簡単です。「退職後に数千万円必要」と聞こえても動揺や不安を見せず、「ない袖は振れぬ」と応えればいいのです。

 

たしかに、お金がたくさんあれば贅沢な老後を送ることができるでしょう。しかし、それで幸せが買えるのかというと、大いに疑問が残ります。

 

それは、国連が公表している「幸福度報告書」を見てもよくわかります。この報告書は、世界158カ国の幸福度を国連が指標化したものですが、2015年版の日本の幸福度ランキングは46位。しかも前年の43位からさらに順位を下げていて、主要8カ国といわれる先進国のなかでは最下位です。

 

上位には予想どおり、アイスランド、デンマーク、ノルウェー、フィンランドといった社会保障が充実していることで知られる北欧諸国が並びますが、コスタリカ(12位)、メキシコ(14位)、ブラジル(16位)などのように、日本よりはるかに所得(GDP)の低い国の名もたくさん出てきます。つまり、お金があるからといって幸せが買えるわけではないということです。

 

彼らの幸福度が高いのは、多少生活費が不足気味でも、それでやっていくほかはないと理解しているためではないでしょうか。そうなれば腹も決まってきます。それなりのやりくり、暮らし方を身につけて生きていくようになります。そして、そのなかで幸せを見つけているのです。

 

収入が少ないのなら、与えられた枠の中でどう暮らしていくか。そのやりくりをしてみせるのが、長年の人生経験の発揮しどころでしょう。

 

そのコツのひとつが「足るを知る」という生き方ではないでしょうか。あれも欲しい、これも欲しいと考えていたらきりがありません。でも、「今のままで十分」だと思えれば、不足も不満もなくなります。

 

「貧乏でも満足している人間は金持ち、それも非常に金持ちです。しかし、大金を持っている人でも、いつ貧乏になるかと恐れている人間は冬枯れのようなものです」

これは、ウィリアム・シェイクスピアの言葉です。

 

古代中国の哲学者老子も「足るを知る者は富む」と言っています。「満足することを知っている者は、たとえ貧しくても精神的には豊かで幸福だ」という意味です。

 

たとえば、退職金が予想より少なかったとしても、不満を言ったり不安を感じるのではなく、「その額で楽しく暮らせる方法を考えられるのが賢人」ということでしょう。お金について不安が生じたら、こうした言葉を思い出してみてはいかがでしょうか。

 


 

【本書のご紹介】

 

一生お金に困らない老後の生活術

 

『一生お金に困らない老後の生活術』

精神科医としての立場から、中高年の方に向けて、老後にお金の心配をしなくて済むための、心の持ち方や暮らし方をアドバイスします。

【著者紹介】
保坂隆(ほさか・たかし)
1952年山梨県生まれ。聖路加国際病院リエゾンセンター長・精神腫瘍科部長、聖路加国際大学臨床教授。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学精神神経科入局。1990年より2年間、米国カリフォルニア大学へ留学。東海大学医学部教授を経て現職に。
『自分らしく生きる「老後の終活術」』『お金をかけない「老後の楽しみ方」』(以上、PHP研究所)、『感情を整える技術』(ベストセラーズ)、『お金をかけずに老後を楽しむ贅沢な節約生活』(朝日新聞出版)、『親とモメない話し方』(青春出版社)など著書多数。