弟の入院で、1カ月も離れて暮らすことになった吉村さんの娘さん。その間に、心の大きな成長を果たすのです。

 

 

現在4歳の娘が2歳半のときに、息子が産まれました。娘は弟の誕生をとても喜び、オムツを取ってきたり、泣いていることを知らせてくれたり、弟をあやしたりと、一生懸命、弟思いのお姉さんになってくれたのです。

息子が生後2カ月を過ぎた頃、2人を予防接種に連れていきました。注射では必ず大泣きをしていた娘ですが、「お姉ちゃんになったから、もう泣かないよ!」と言って、注射の痛みに耐え、初めての注射で大泣きしている弟を「がんばれ!がんばれ!」と励ましてくれました。

娘の成長した姿をほほえましく思った翌日のことです。黄疸が出ていた息子のことを病院へ相談しました。先生は血液検査をすると、「すぐに大きな病院で検査をしたほうがいい」と言ったのです。

黄疸があっても、息子は元気な様子でしたので、半信半疑のまま紹介された病院へ向かいました。そして検査の結果、もっと詳しい検査が必要となり、そのまま緊急入院したのです。その結果、息子は胆道閉鎖症という難病だとわかって、手術を受けることになったのです。1カ月におよぶ入院中、私は息子の付き添いをするため、娘を祖父母の家へ預けました。

息子は、いつ脳出血を起こしてもおかしくない状態で、「手術しないと1歳まで生きられない」と言われたのですが、それだけでなく「術後の経過が悪ければ、生体肝移植が必要」とのことだったのです。息子の病気の発見や手術が遅いほうだったため、すでに肝硬変を起こしていたこと、また、手術したからといって、完治する病気ではないことなど、不安要素だらけでした。

手術の痛みと絶食による空腹で眠れず不機嫌になる息子の姿や、特殊なミルクを飲ませるために生後3カ月で断乳し、治療のためいろいろな薬が使われる様子を見ると、健康に産めなかったことへの後悔で、息子に申しわけない気持ちでいっぱいになりました。

術後、腹水がお腹の縫い目から漏れ出すハプニングもあり、気が休まらない毎日をおくっていたときのことです。娘が、祖父母から自転車をプレゼントしてもらったと話を聞きました。

娘と一緒に自転車を選びにいき、荷台付きのシンプルな赤い自転車を買ったと聞いたとき、 

「赤? シンプル? ピンクやかわいいものが好きな娘には珍しいな」

と、不思議に思いました。

後で、娘が自分の好みをがまんしてまで、その自転車を買ってもらった理由は、荷台付きだったから、ということがわかりました。「荷台に弟を乗せて、走るんだ!」と、毎日、祖父と自転車に乗る練習をしていたのです。

3歳前のまだまだ甘えたい時期に、親と離れて暮らす娘。弟のことを思って、娘なりに精いっぱいがんばっていることを知り、「私もがんばらなければ!」と励まされたのです。

幸い、息子の病状は安定し、現在は自宅で元気に過ごしています。病気の影響で体調不良になることも多いですし、いつ病状が悪化するかわからないので、漠然とした不安に、いつもつきまとわれています。

でも、毎日、姉弟が仲良く遊ぶ姿や、弟のためにがんばっていたお姉ちゃんの姿を思いだしながら、ふとした瞬間に折れそうになる自分の心を奮い立たせています。

 

吉村里美(長野県松本市・30歳・主婦)

 


 

のびのび子育て

「PHPのびのび子育て」は未来を担う子どもたちの健全な成長と幸せを願って、発刊している月刊誌。 2017年月6月号の特集は<「いい性格」をつくる親の口ぐせ>です。

 

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