初めての子育てが、理想通りにいかない――。その試練、葛藤を乗り越えて、鈴木さんが気づいたことがあります。

 

 

結婚2年目に、長男が生まれました。出産前、保育士をしていた私は、子どもの誕生を楽しみにしていましたし、子育てへの思いも人一倍あったように思います。こういう子育てをしたい、こんな母親になりたい――。でも、そんな理想を体現しようとはりきっていた私にとって、実際の生活はとてもつらいものでした。

息子は、生後半年以後も昼夜を問わず、短時間ずつしか眠れない子でした。起きていれば常に抱っこで、降ろすと泣くので片時も離れられなかったのです。私は自分が眠れない上、授乳や抱っこのくり返しの毎日に、体は限界でした。肩や背中がこわばって立って抱くことができないときもあって、横になってあやしていると、抱っこを求めて泣きやまない息子に申しわけない気持ちでいっぱいになりました。

子どもの要求や訴えをわかってあげられない自分が情けない。理想としていた言葉かけも、手作りの離乳食も、よりよい生活リズムも、何もかもうまくいっていない。保育士だった強みも、プライドもなくなっていきました。

息子が10カ月の頃、突然、「何もかもがうまくいかない」「泣きやませられない自分が悪い」「私は、母親失格、主婦失格」という無力感に襲われました。「いなくなりたい!」と、息子と2人きりの家で、涙がとまりませんでした。

この日からしばらくの間の記憶が、あまりありません。つらくて思い出したくないのか、ただ、毎日の生活が忙しかったからかはわかりません。記憶があるのは、ヨチヨチ歩くようになった息子と、のんびり散歩をしたり、公園で砂遊びをしたりするようになってからです。

――これは、もう8年も前のことです。

今、3人目の子どもの授乳をしながら、思うことがあります。初めての子どもを自分1人で育てようとしていたこと。「この子のために最善を尽くしたい」と思っていたし、それが私の責任であると考えていたこと。周りが見えず、目の前の子どもを見ることに必死になっていたこと。それには無理があって、結果として思うようにはいかなかったのです。

しかし、「いなくなりたい!」と思っていたけれど、私はいなくならなかった。それは、実は私が1人で子育てをしていたのではなかったからでした。

夫や両親は、いつもそばにいてくれました。子どもと片時も離れようとしない私から子どもを連れ出して、遊んでくれました。中途半端にしかできていなかった家事を手伝ってくれました。

当時の私は、周りの人のその支えに気づいていなかったのです。

今でも手作りごはんにこだわったり、生活習慣について子どもに厳しく言ったりすることもあります。やんちゃな男の子たちの子育てですから、つい叱ることも多いのですが、「子どもをこう育てる」「母としてこうなる」という力みは減って、子どもと自分の状態を受け入れながら、つらいときには夫や両親、さらに息子たちやママ友の助けを借りられるようになりました。

苦しかったあの頃を脱して、今、この授乳が、こんなに穏やかで幸せに感じられることを、たくさんの人に感謝したいです。

まだまだ続く子育てで、どんなことがあっても、その先にまた“幸せなとき”が巡ってくると信じて、進んでいきたいと思います。

 

鈴木智子(東京都板橋区・36歳・主婦)

 

 

 


 

のびのび子育て

「PHPのびのび子育て」は未来を担う子どもたちの健全な成長と幸せを願って、発刊している月刊誌。 2017年月9月号の特集は<3歳、7歳がわかれ道! 「ガマンする力」の育て方>です。

 

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