手がかかる子だった息子さんに、どんなことでも寄り添おうと、佐々木さんは決めたのです。

 

子ども

 

日曜日の昼下がり。ふと、現在10歳になる息子に聞いてみた。「どんなことが、一番幸せ?」と。すると、息子は迷うことなく、「家族と一緒にいられることかな」と、答えた。私はしばらく返す言葉が見つからず、「そう、だよね」と言うのが精いっぱいだった。そして、「あー、私は、こういう子どもに育てたかったんだ」と、気がついた。

息子が3歳ぐらいまでは、本当にたいへんだった。人見知りが激しかったためだ。誰かに挨拶されただけでも、泣き崩れてしまうありさまで、子育て支援センターなどの、人の集まる場所に連れていって楽しませようと思っても、彼には逆効果だった。結局、泣きやまず、すごすごと引き返すことも多かった。

はじめは無理をさせてでも連れていったが、慣れる様子もなく、息子も私も、ただただ疲れるだけだった。

子育て本もたくさん読んだし、人の意見も聞いた。でも、息子には全然、当てはまらない。ならば……、今は、私との時間が大切なのかもしれない。目の前にいる息子が喜ぶことをしよう、とことんつきあおう、と考えた。

息子は、川で石投げをすることが大好きだった。1時間も2時間も、ひたすら投げ続けた。そんな息子につきあう日が続いた。息子の楽しそうな背中を見つめ、うれしく思う一方で、「この子は人とかかわる喜びも知らないまま、育つのかなあ」と不安になるときもあって、なんだか悲しくなってきた。ちょうどその頃、イヤイヤ期やトイレトレーニングが重なり、何もかもがうまくいかなかったのだ。

そんなとき、何かを察したかのように、電話がかかってきた。祖母である。「ひ孫は風邪っこ、ひいでないがぁ?」と心配し、「子育て、よくがんばってで、えらいなぁ」とほめてくれた。

大人になっても、離れて暮らしていても、祖母は私たち家族のことを気にかけてくれた。その後、たわいのない話で大笑いし、電話を切る。祖母は仕事が忙しい父母にかわり、幼稚園にあがるまで、兄や私の面倒を見てくれた。祖母のとびきりの明るさで、私たちはさびしさを感じることなく、愛情いっぱいに育った。

祖母は家で子育てをするたいへんさを、一番わかっている。時代も環境も違うけれど、今、私も祖母と同じように“子どものそばにいる子育て”をしている。「いつか、いい日が来るかな」と、がんばろうと思った。

そんな息子が、弟が生まれた頃から変わりはじめた。赤ちゃんのほっぺたを、やさしくツンツンついては喜び、泣くと、私に「おっぱいあげて」とうながしてくれた。そしてその頃から少しずつ近所のお友だちと遊ぶようになり、そのことが楽しくなっていったようだった。

夫と私は弟ばかりにかかりっきりにならないよう、今まで通り息子の遊びにつきあったり、たくさん抱っこをしたりして安心させるように心がけた。あれだけ悩んだのが嘘のように、息子は元気いっぱいの明るい男の子に変身していった。

あのとき……、息子が一番甘えたい時期に、とことん一緒にいたことは、今考えると本当に幸せだった。

泣いたときはすぐに抱きしめ、歩き疲れたときはおんぶすることができた。そして今、“一緒にいる子育て”から、“少し離れて見守る子育て”に形を変えはじめている。

 

佐々木美幸(岩手県盛岡市・38歳・保育士)

 


 

のびのび子育て

「PHPのびのび子育て」は未来を担う子どもたちの健全な成長と幸せを願って、発刊している月刊誌。 2017年月10月号の特集は<「頭のいい子」「性格のいい子」は7歳までの習慣で決まる!>です。

 

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