「イヤ!」と言いつのる子どもは未知なるカイジュウ。池田さんは何度も爆発しそうに......。

 

親子

 

娘のナノカが、まだ2歳の頃のことだ。手をつないでいつもの道を散歩中、突然、

「へへへ」

と笑った。

「どうしたん?」と私。

「ママ、ちゅきやもん」とナノカ。

なぜ、今、ここで? この未知なる生きものは、おもしろい......。

サ行がまだはっきり言えない娘が、私への愛を発信したその様子に、なんだかおなかの奥がくすぐったくなって、それが収まるまで娘に抱きついて、大笑いした。

しかしそれから間もなくして、この未知なる生き物は反抗期を極め、未知なるカイジュウへと進化した。

出勤前のあわただしい朝、はいていた靴下を脱ぎ捨てる娘。

「あれれ、じゃあ、ネコちゃんにする?」

「イヤ!」

「水玉にしよっか」

「イヤやー」

「じゃあ、はだしで行けば!」

と、爆発5秒前の私。そんな私のいらだちを感じとった娘の機嫌はさらに悪くなり、保育所でのお別れもうまくいかなかった。

しかし、先生に抱き上げられた娘は、そそくさと仕事へ向かう私に、その小さな腕をめいっぱい広げて、

「ママー、ママがいいー!」

と泣き叫び始めた。戻って抱きしめてやりたい気持ちを押さえ、その声を背中で聞きながら、保育所の玄関へと急いだ。

目指したのは、こんなママじゃなかった。娘を世界一幸せな女の子にするのが目標なのに、また泣かせてしまった。

仕事と子育ての両立なんて、私には無理なの?あふれかける悔し涙をこらえながら、職場へと車を走らせた。

夕方、仕事を終えて保育所へ急いだ。部屋をこっそりのぞくと、ナノカは先生が読む絵本に見入っていた。

今日はどんなことで泣いたの? どんなことで笑ったの? 娘の横顔を見ながら、思いをめぐらせた。

すると娘の大きな目は私の姿をとらえて、意気込んで絵本に見入っていた表情が、ほろっとゆるんだ。

「ママー!」

歓喜の声をあげながら、私の腕に転がり込むように走ってきた。

娘の全身全霊のおもてなしを受けて、私は今日1日抱えていた後悔を、すっきり洗い流してもらったように感じた。

帰りの車内では、DVDに夢中の娘。赤信号で停まったとき、その横顔をながめていると、急に何かがこみあげてきた。

「フフフ」

私を見た娘の大きな瞳がさらに満月のように大きく丸くなって、尋ねる。

「ママ、なんで、わらったぁ?」

なぜ笑ったのか、少し考えた。そしてわかった、ピッタリの答え。

「ナノカのこと、大好きやから」

私の答えを聞いて、満月だった目は、三日月になった。

 

池田七恵(大阪府四條畷市・34歳・会社員)

 

 


 

のびのび子育て

「PHPのびのび子育て」は未来を担う子どもたちの健全な成長と幸せを願って、発刊している月刊誌。 2017年月11月号の特集は< 子どもを「怒る」のは、やめられる!>です。

 

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