「将来どうしよう」「全然お金が貯まらない」。そんなお金のマイナスイメージが膨らむなら、節約や貯金を頑張るより、価値観の見直しが必要かもしれません。

 

bijyo2.jpg

 

お金の不安には、ほとんど根拠がない

 

「今はなんとかなっているけれど、将来のお金のことが不安で......」

お金の話になると、そう言って顔を曇らせる人が多いものです。「老後の年金は足りる?」「子どもの学費は?」「夫が働けなくなったら?」「未婚、非正規で生き抜ける?」など、お金に関する不安は絶えません。

でも、そんな人たちに、「では、なにか対策は考えている?」と聞くと、「先のことはわからない」「今のことで精一杯」などと言って、なにも手を打っていない状態なのです。

 

お金の不安を分析してみると、漠然としていて、問題の根拠や解決策がハッキリしていないことがほとんどです。人は、「先が読めない」というときに、不安に陥るもの。「こうすれば、なんとか生きていける」と先をイメージできれば、安心して前に進めるのです。

 

かくいう私も、30代の初めで失業して再就職がうまくいかなかったときは、「このままでは貯金が底をつく」「再就職できなかったら......」と不安でたまらず、夜中に目が覚めるほどでした。

そんな時期を乗り越えて得たのは、「人間、なんとか生きていけるものだ」という自信。当時、考えた戦略は、ウェイトレスや営業など生活のためのアルバイトをしながら、着物の着付けやカメラマンのスキルを身につけて、少しずつ自分のできることを増やしていくことでした。その結果、写真スタジオをもったり、新聞社に就職したり......。一から始めて収入が増えていく日々は楽しく、希望に満ちていました。

だから、40歳を前に再び失業したときも、「なんとかなる。物書きとしてどこまでいけるか挑戦してみよう」と明るい希望をもって田舎から上京してきたのです。

その根底にあったのは、「お金は正直。自分が価値あるものを提供できれば、それなりに価値あるお金が返ってくる」というお金に対する信頼だったのかもしれません。

 

お金にはあなたの「生き方」が出る

 

上京した私に、「あなたを応援するわ」と数年間、家を提供してくれたのは、旅先で出逢った女性、Kさんでした。Kさんのお金に対する考え方は、今も私の指針になっています。80代のKさんは、おどろくほど質素な一人暮らしをしていました。家庭菜園の野菜を食べる、必要な家具はどこからか拾ってくるなど、ほとんどお金を使うことがない生活。そんななか、突然、「バオバブの木が見たい」とマダガスカルに行ったり、「船上でオーケストラ演奏が聴きたい」と地中海クルーズに参加したりと、やりたいことには躊躇わず、大胆にお金を使うことがありました。

 

「どうして、そんなにたくさんお金をもっているんですか? 資産家とか?」と失礼ながら聞いたことがあります。Kさんは大笑いして、

「まさか! 私は定年まで普通に働いてきただけですよ。でもね、お金の使い方は水道の蛇口と一緒。蛇口をゆるくしていたら、水のようにどんどん流れていく。ちゃんと閉めていれば、たまっていく。普段はぎゅっと閉めておいて、自分が必要だと思う場面で、必要な分だけ、蛇口を開けばいいのよ」

なるほど、と思ったのです。「自分や家族をどれだけ〈幸せ〉にしてくれるか」によって水道の蛇口を開くのが、「幸せなお金の使い方」。お金に対して、いつも「ありがとう!」と感謝できます。人に合わせたり、一時の不安を解消したり、快楽を得たりするためにお金を使っていては、だらだらと流れていって、「あ~、またお金がなくなる」といつも不安や罪悪感がつきまとうでしょう。

 

お金の使い方は、案外、正直で「生き方」が出るものです。他人のお金をかけるポイントを見ると、「大事なのはそこなのね」と思うはずです。不安や寂しさを抱えていたら、それを埋め合わせるお金の使い方にもなるし、喜びや希望にあふれていたら、自分を楽しませたり成長させたりするお金の使い方になるでしょう。

だから、「自分を幸せにしてくれるもの」、反対に「要らないもの」を、ハッキリわかっておく必要があるのです。「お金の出入りは、とてもシンプル。入ってくるお金で暮らせば、なんの問題もない」と教えてくれたのもKさんでした。「収入を得る方法はなにかしらある」「今あるお金で暮らす方法もなにかしらある」とわかっていれば、お金の不安はなくなるのです。

 

【著者紹介】

有川真由美(ありかわ まゆみ)

作家。自身の多くの職業経験を活かして、自分らしく生きる方法について執筆を続ける。世界約40カ国を旅し、旅エッセイも手がける。『なぜか「仕事ができて、好かれる人」の話し方』(PHP文庫)など著書多数。最新刊は『たった一つの自信があれば、人生は輝き始める』(きずな出版)。

 

『PHPスペシャル』12月号より

 

SPcover.jpg

 

本記事は、PHPスペシャル2017年12月号特集「人生が明るくなるお金の習慣」より、一部を抜粋編集したものです。