双子の子育てに疲れ果てていた櫻木さん。そんなとき、ある婦人に、公園で声をかけられて......。

 

 

結婚が決まってすぐのことです。

 

「双子ですね」

 

産婦人科でそう告げられた瞬間は、願いが叶ったと嬉しい気持ちでいっぱいでした。お腹が5㎏近くになると、もうパンパンで破裂しそうだったので、帝王切開をすることになり、元気な男の子が2人、誕生しました。

 

出産してまもなく、1人が寝ると1人が起き、1人を授乳させているともう1人が泣くという、壮絶な子育てが始まりました。

 

生後3カ月くらいになると、同時に夜泣きするわが子をどうすることもできず、私の心も限界になり、「ママはいないよ......もういなくなりたい!」と、毛布をかぶったこともあります。

 

しばらくは実家に住み、母の手を借りていましたが、いつまでも甘えるわけにはいかず、家族4人での生活をスタートさせました。

 

夫は帰宅が遅いのであまり頼れず、日中はほとんど毎日のように、子どもたちを連れて外へ。男の子なので、とにかくやんちゃで、半日外で過ごすこともよくありました。

 

公園に連れていくと、はしゃいで遊ぶ2人の声がいつしか遠くに感じ、ただボーッと、また明日からの子育てを考えて不安になり、落ち込む自分がいました。

 

ある日、いつものように子どもたちを公園で遊ばせていたときのことです。

 

その公園の前に住んでいる私の母と同世代くらいの婦人が、「これ食べて。今日の夕ご飯の一品になるかなと思って。双子、大変でしょ。おばちゃん、応援してるから」と声をかけてくださったのです。

 

見てみると、筍の煮物に山椒の葉がのせられ、まだ温かい状態でパックに詰められていました。

 

思いがけない贈り物と言葉に心が救われ、帰りにベビーカーを押しながら泣いたのを、今でも思い出します。あのときの筍の味は薄味で、やさしい、やさしい味でした。

 

それから半年ほどが過ぎた頃、その方の家に子どもたちを連れて、お礼に行くことにしました。すると、「大きくなったわね。わざわざありがとう。もし、子どもが病気になったりして、1人でどうしようもないときは頼ってね」と、また温かい言葉をかけてくださったのです。

 

この出来事をきっかけに、私は忘れかけていた大切なことを思い出しました。

 

それは、私は決して1人ではない、ということ。

 

思い返せば、散歩に出かけるたび、いつもたくさんの知らない人たちに声をかけてもらい、そのときかけていただいた言葉は、私を勇気づけてくれる言葉ばかりでした。

 

自分を支えてくれる身内の存在にも、改めて感謝の念が湧いてきました。

 

今は息子たちも4歳になり、3人でお出かけするのが私の楽しみになっています。

 

最近では、私が疲れていたり、体調が悪かったりすると、「ママ、大丈夫?」と心配してくれるようになりました。心もちょっぴり、お兄ちゃんになったようです。

 

いつか息子たちに、私が結婚式で母に伝えた「産んでくれてありがとう」の言葉を言ってもらえる日を夢みて、子育てを楽しめたらと思います。

 

そして亡き父が私に残してくれた言葉、「人の縁・人への感謝」という言葉を思い出させてくれた息子たちに感謝し、これからもがんばって生きていきたいです。 

 

(大分県・43歳・保育士)

 

 

 


 

「PHPのびのび子育て 4月号より

 

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本記事は、「PHPのびのび子育て」2018年4月号特集「将来を決める! 子どもを伸ばす上手なほめ方・叱り方」より、一部を抜粋編集したものです。