度重なる入院と手術で、人とうまく関われない娘さんの成長に、不安を抱えていた中尾さん。でも、「大丈夫」という言葉が、娘さんの成長に気づかせてくれました。

 

女の子

 

4歳になる娘、こはるは、「大丈夫」という言葉がとても嫌いでした。1歳半を過ぎて2語文が話せるようになると、「大丈夫、キライ」と、何度も言っていました。

 

まだ歩くことがしっかりできない時期は、転んだりつまずいたりすることも多く、そんなとき、大人はとっさに「大丈夫?」と声をかけてしまいます。娘はそれをとても嫌がり、そう声をかけられると、「キライ、大丈夫、キライ!」と反発して言うようになっていました。

 

というのも、娘は生まれつき先天性の心臓病で、3歳になるまでに7回の入院、3度の手術を経験しました。初めての入院は生後1力月のとき。そこから何度も入院し、たくさんの検査や手術を繰り返してきました。

 

病院では看護師さんや先生が娘を安心させようと、検査で娘が泣くと、「大丈夫よ〜」と声をかけてくれます。私も泣き叫ぶ娘に、同じ言葉をかけ続けていました。

 

娘からすれば、「大丈夫」と言われて、痛いことやつらいことをされる……。これは仕方がないことなのですが、娘は「大丈夫」という言葉をかけられると、何か嫌なことが起こる、と思うようになってしまったのです。

 

家では極力使わないようにしていた言葉でしたが、外でとっさにかけていただく言葉に反応して、娘はそのたびに「大丈夫、キライ! イヤ!」と周囲の大人を混乱させていました。

 

そんな娘も3歳になり幼稚園に行くことになったのですが、病気のこともあり、不安をかかえながらの入園でした。

 

しかも、度重なる入院と手術のための感染予防で、児童館などにほとんど連れていっていなかったので、娘は同年代の友だちと交流する機会があまりなく、周りの子との接し方がまったくわかっていませんでした。

 

幼稚園で友だち同士のケンカを初めて見た日は、家に帰ってきて、「お母さん、ケンカしようよ〜」と言ったくらいです。ケンカが何かわかっておらず、遊びだと思っていたようでした。

 

そのため、園でも友だちをうまく作れず、自分の意思を表現することさえできませんでした。  

 

先生に「大丈夫?」と声をかけてもらったときも、「イヤ!」と言葉にせず首を少し横に振るだけ。あまりにもしゃべらないので、家庭訪問では先生から、「こはるちゃん、お話ができないのでしょうか?」と聞かれたほどでした。

 

そんなある日、その日はどうしても私と離れたくなかったようで、娘は園で私と別れた後、その場で動かずじっとしていたようです。

 

娘の様子を見ていた先生がそっと、「こはるちゃん、つらかったら泣いていいんだよ」と声をかけてくださったらしいのですが、すると、それまで張りつめていた糸が切れたのか、娘は大声で泣き出したそうです。

 

でも娘はこの日を境に、幼稚園でも少しずつ話をするようになり、他の子とも遊べるようになって、友だちもできました。

 

そして、そんなある日のこと。仕事の忙しさと家事に追われて、私は思わず大きなため息をついてしまいました。すると娘が私の肩に手を添えながら、「かあか、大丈夫?」と言った後、やさしく背中をさすってくれたのです。

 

「大丈夫?」と言われるのがとても嫌いだった娘が、私を気遣って「大丈夫?」と言ってくれたことに、思わず涙がこぼれました。

 

人を気遣うことを学んでくれた娘。幼稚園に通うのは無理かな……と思ったときもありましたが、娘なりに社会に出て成長していたんだなと実感した瞬間でした。

 

「大丈夫」という何気ないひと言ですが、私にとっては、娘の成長を感じる大切な言葉になりました。

 

(愛知県・45歳・自営業)

 

 


 

「PHPのびのび子育て」 5月号より

 

SPcover.jpg

 

本記事は、「PHPのびのび子育て」2018年5月号特集「3歳、7歳が分かれ道 勉強も運動もできる子になる!」より、一部を抜粋編集したものです。