認知症の祖父を見舞った守田さん。そのとき、息子さんが見せた行動に、思わず胸が熱くなり……。

 

 

私には5歳と3歳の息子がいます。3年ほど前に夫の転勤で地元から大分県に引っ越し、初めは戸惑いもあったものの、すっかり新しい環境にも慣れてきました。

 

そんなある日、1件のメールが私宛に届きました。送り主は私の母で、内容は「おじいちゃん(母の父)が緩和ケアの病棟に入院した。病気が進行している」という内容でした。

 

私は幼い頃から、酪農一筋のおじいちゃんとおばあちゃんのことが大好きでした。会いに行くたびに「あら、よく来たねえ」と温かく迎えてくれ、用意してくれる煮物やお味噌汁などの手料理は最高に美味しく、いつも本当に優しくしてくれました。

 

しかし、長男が産まれた頃から、おじいちゃんの認知症が進み、息子たちとたまに会ったときも、ほとんどおじいちゃんは覚えていませんでした。息子たちもまた、県外に引っ越して会う機会が減ったので、「ママのおじいちゃん、ぼく、きんちょうする」と言うようになり、互いに深く関わることができずにいました。

 

でも母からのメールを見て、私は週末、息子たちを連れて、おじいちゃんのお見舞いに行くことにしました。

 

どうしても今会って、少しでもおじいちゃんと一緒に過ごしたい、なかなか会えなかった分、会って、元気になってほしい……そう思ったのです。

 

病院へと向かう途中、次男は「はやくあいたいなあ」と楽しみにしている様子でしたが、長男はなんとなくいつもより表情が硬く、やはり緊張している様子でした。

 

病室には、私の母と一緒に4人で訪ねました。久々に会ったおじいちゃんは大分痩せていて、体中に管が繋がれていました。話すのもやっと、という感じで、「こんにちは」と私と長男が挨拶しても、「誰だっけね……?」と、やはり覚えていませんでした。

 

息子たちにおじいちゃんが病気だということは伝えていたのですが、長男は私の背中に隠れて、おじいちゃんに近づけずにいました。みんなで他愛のない話をしているときも、ずっと下を向いたままソワソワ……。

 

正直、今日のことで長男を複雑な気持ちにさせてしまったかも、と不安になりました。

 

そんなふうに思っていたら、おじいちゃんが「トイレに行く」と言い、ベッドから車椅子へ移ろうとしました。すると、部屋の隅にいた長男がスッとおじいちゃんに近づき、おじいちゃんの腰に手を添えて、移るのを手伝ってくれたのです。そして、そのままトイレまで一緒につきそってくれました。

 

話しかけたりは多くしなかったものの、一緒に病室へ戻り、その後、持ってきたプリンをみんなで食べることになりました。

 

すると今度は、「ぼくがおじいちゃんにたべさせる」と、長男がスプーンでプリンをすくって、おじいちゃんの口まで運んでくれたのです。少量ずつでしたが、「はい、どうぞ」と、ひと口ずつゆっくりと、最後まで。

 

そのとき私は、気弱なところがあり、まだ幼いと思っていた長男の優しさ、思いやりのある行動に、胸が熱くなりました。いつのまにかこんなにも成長し、自分で考えて行動ができるようになっていたんだと、おどろいたのです。

 

帰るとき、「またくるね」と言った長男の表情はすっかり明るくなっていて、おじいちゃんと両手で握手をしていました。病室のおじいちゃんの顔が見えなくなるまで手を振り、来る前と比べ、すっかり頼もしい姿でした。

 

長男は「また、おじいちゃんとプリンがたべたい」と、再会を今から楽しみにしています。

 

(大分県・32歳・保育士)

 

 


 

「PHPのびのび子育て」 6 月号より

 

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本記事は、「PHPのびのび子育て」2018年6月号特集【子どもの「ごはん」の悩みをなくす!】より、一部を抜粋編集したものです。