日々の食事は子どもの成長に直結するからこそ、つい深刻に考えてしまいがち。お母さん自身が食事の時間を楽しみながら、食の悩みを解消していきましょう。

 

女の子

 

イライラをためず、楽しい食卓に!

 

食事の時間まで待てない、食が細い、ばっかり食べをする、食べるのが遅い……。多くのお母さんたちは、子どもの食について、さまざまな悩みを抱えていることが多いです。しかしここで、お子さんとの日々の食卓を振り返ってみてください。「今日も全部食べきれなかったのね」「また○○を残しちゃったの?」「早く食べなさい!」など、子どもが食べる量や種類、食べる速度といったことばかりに注目してはいませんか?

食事時間に子どもを叱ったりせかしたりなどが多くなってしまうと、子どもにとって楽しい時間でなくなってしまいます。また、料理が苦手だったり、負担に思っているお母さんほど、「やっぱり食べてくれなかった」「私の料理が下手だからかも……」など、ネガティブな思いにとらわれがち。子どもは親の様子に敏感ですから、このような思いを感じ取り、食に対してネガティブになってしまうこともあります。

 

・子どもが笑顔で食べていることが大事です

 

幼児期の子どもの食生活で何よりも大切なのは、「食事を楽しむこと」。すべて手作りである必要はありません。市販のお惣菜を取り入れるなど調理時間を上手に短縮しながら、親自身が食事の時間を楽しみ、わが子が「食べた・食べない」ではなく、「どんな様子で食べているか」に注目します。

「今日はとってもいい笑顔で食べていた」「『おいしい!』と言ってくれた」など、ポジティブな喜びを見いだすことができれば、食事の時間を通して親子の関係がよりよいものとなるはずです。

 

次の項目より、食のよくある悩み別にアドバイスします!

 

CASE1  食事の時間まで待てない

 

晩ごはんの時間までもう少しなのに、「おなかすいてるから何かちょうだい!」などとせがまれると、困ってしまいますよね。

食事の時間まで待てない原因として考えられるのは、1食の量が、その子にとって適量でないためすぐにおなかがすいてしまうこと、食事のスタート時間が遅いことが考えられます。また、食事の時間以外に、子どもにせがまれるままにジュースやお菓子などを与えることが習慣づいていると、ガマンが育たず、少しおなかがすくとすぐに食べものをねだるようになってしまうこともあります。

 

【そうなる理由】

・食事の量が、その子にとって適量ではない

・食事のスタート時間が遅い

・子どもにガマンが育っていない

 

【こう対応しよう!】

NG:子どもがほしがるものを何でも与えてしまう

OK:1食の量を増やしたり、食事のスタート時間を見直す

 

幼児の食事の量は、個人差はありますが、大人の食事の半分強くらいが目安です。食事の時間まで待てない場合は、これまでは、ご飯はお茶碗に6分目だったのを8分目にしてみるなど、食事の全体量を少し増やして様子を見ましょう。

仕事や育児に追われていると、特に夕方以降は忙しく、夕食作りに手間どり、食事のスタート時間が遅れてしまいがちです。そんなときは、市販のお惣菜を上手に利用することも考えます。お惣菜は味が濃いめなことが多いので、豆腐やもやし、卵、はるさめなどを合わせると、味が薄まり手作り感も出て、お母さんがムダな罪悪感を抱えなくてもすみます。

食事までにやむをえず何か食べさせる場合は、小さいおにぎり、チーズをはさんだクラッカーなど、食事のかわりになるようなものを少量与えましょう。スナック菓子はできるだけ避けたいですが、「小袋1つだけね」など、量をしっかり区切り、「もっと」と子どもに言われても折れないことが大切です。ガマンすることの大切さも、幼児期に教えていきたいものです。

 

CASE2 食が細い、あまり食べない

 

栄養バランスを考えて一生懸命作っているのに、食べる量が少なく、残す量が多かったりすると、栄養不足になったりしないか……などと心配になりますよね。

幼児期の食べる、食べないは個人差がとても大きいため、あまり食べないのは、「もともと食が細い体質だから」ということも考えられます。また、おやつの時間にたくさん食べ過ぎてしまうと食事の時間に空腹にならず、食事が進まないことも。

「今日のごはんには苦手な食べものが多い」「今、食べる気分ではない」など、“そのときの気分”であまり食べないこともあります。

 

【そうなる理由】

・もともと食が細い

・間食を与え過ぎている

・食べる気分ではない

 

【こう対応しよう!】

NG:食べることを無理強いする

OK:その子なりのペースを守って与える

 

食が細く、他の子より小さかったり、平均身長や平均体重に満たなかったりすると、健康面に不安をもってしまいます。しかし、この時期に注目してほしいのは、その子なりのペースで成長しているかどうかということ。小柄でも、やせていても、「幼児身体発育曲線」のカーブに沿って身長が伸び、体重が増えていて元気であれば、あまり心配する必要はないことがほとんどです。親からみて「食が細い」と思っても、その子にとってはその量が適量で、バランスがとれていると考えてよいでしょう。

「たくさん食べて大きくなってほしい」という思いはよくわかりますが、「もっと食べないと大きくなれないわよ!」などと無理に食べさせたり、子どもが食べ残したごはんを見て悲しい顔をしたりすると、子どもによっては「お母さんの期待にそえない自分は悪い子」と、自分を責めてしまう場合もあります。食が細いのはその子の〝個性〟ととらえ、長い目で見守っていくことも大切です。

 

CASE3 ばっかり食べをする

 

自分が好きな食べものなど決まったものしか食べない「ばっかり食べ」の悩みも、多くのお母さんからよく聞きます。

ばっかり食べの原因の1つとして考えられるのは、「たくさん食べてほしい」という思いから、「これなら食べるだろう」という定番メニューにかたより、さまざまな食べものをいろいろな調理法で味わう“食の経験”が不足していることが考えられます。また、食卓にふだん食べ慣れていないものがあると感覚的に拒絶し、いつも食べているものだけに口をつけるということもあります。

 

【そうなる理由】

・定番メニューにかたよりがち

・食の経験が少ない

・食べ慣れていない

 

【こう対応しよう!】

NG:子どもが食べるもの、 好きなものばかりを与える

OK:調理法を変えるなど工夫し、「おいしいね」と言いながら食卓を囲む

 

幼児期は、いろいろな食べものをさまざまな調理法で味わい、食の経験を増やしたい時期。「○○なら食べるから」という安心感から、子どもが好きなもの、食べ慣れたものばかりを与えていると、ばっかり食べはなかなか改善されません。一度出したものを食べなくても、

「◯◯は食べないのね」と決めつけず、「前回は醤油味だったけれど今回は味噌味にする」「前回は煮たけれど今回は焼く」など味付けや調理法を変えて食卓に出し、あせらず根気よく、食べる経験の〝間口〟を広げていきたいものです。

また、人間には、「初めて見る食べものに対して警戒する」という行動様式が備わっていて、その恐怖心から食わず嫌いになることもあります。初めてのものを食べさせるときは「これ食べるかしら?」と不安げに子どもの様子を見るのではなく、「おいしいね!」と親が自ら楽しい雰囲気で食べることで、子どもも安心して食べるようになります。

 

CASE4 食べ過ぎる

 

「おかわりちょうだい!」「もっと食べたい!」などと言われるとうれしい反面、「食べ過ぎなのでは……」と気になるお母さんも多いようです。

幼時期の子どもは、どういう状態がおなかがいっぱいなのかがわからず、思うままに食べてしまうことがあります。また、今食べている量がその子にとっての適量なのに、親のほうが「まだ小さいのにこんなに食べ過ぎて大丈夫なのだろうか」と思い込んでいるケースや、ガマンが育っていないケースも考えられます。

 

【そうなる理由】

・満腹感がわからない

・親が「食べ過ぎ」と思い込んでいる

・ガマンが育っていない

 

【こう対応しよう!】

NG:「食べ過ぎよ!」と注意したり、求めるままに食べさせる

OK:おなかがいっぱいの感覚を視覚的に教える

 

小さい子は、「おなかがいっぱい」という感覚がよくわからないもの。親からみて明らかに食べ過ぎていて、これ以上食べさせたくない場合は、全部食べてからっぽになったお皿やお茶碗を子どもに見せ、「すごいね! これ全部食べたのね」「全部からっぽになったから、ごちそうさましようね!」などと、視覚的に教えてあげます。

また、お母さんから見て食べ過ぎだと思っていても、前述した「幼児身体発育曲線」のカーブに沿って身長が伸び、体重が増えていて元気であれば、あまり心配する必要はないことが多いです。

急激な体重の増加が気になる場合は、糖質の多い食品はひかえ、ジュースをやめて麦茶にする、甘いおやつを減らす、ごはんやパンのおかわりはなるべくしないなどを心がけてみます。肉詰めピーマンや白身魚の野菜蒸しなど、うまみのある肉や魚と野菜を上手に調理し、野菜をおいしくたくさん食べられる工夫もするとよいですね。

 

CASE5 食べるのが遅い

 

とくに朝食時、子どもがごはんを食べるのが遅いと、親はやきもきしてしまいます。

食べるのが遅いのは、食事に集中できないことが原因である場合が多いもの。テレビがついていたり、近くにオモチャがあったりすると気が散り、食べるのが遅くなってしまいがちです。

与える量が多過ぎる、おやつの時間との間隔があいていないためにおなかがすいていない、野菜をゆでる時間が短く、硬すぎて食べるのに時間がかかるなど、適切な調理法でないことも考えられます。

 

【そうなる理由】

・食事をする環境が整っていない

・与える量が多過ぎる

・おなかがすいていない

 

【こう対応しよう!】

NG:「早く食べなさい!」とせかす

OK:食事の時間を見直し、生活リズムを整える

 

まず大切なのは、「早く食べなさい!」とせかすのではなく、テレビを消す、食卓に食べものや食器以外のものを置かないなど、子どもが食事に集中できる環境を整えることです。同時に、これまでの生活リズムを見直してみましょう。食事の直前におやつを与えてしまうと、ある程度空腹が満たされ、食べるのが遅くなってしまいます。おなかがすいた状態で食事の時間をむかえられるように、朝食、昼食、おやつ、夕食の時間を改めて検討し、子どもの様子を見ながら日々の食事のリズムを整えていきます。 子どもが食事に集中できる時間は、20分から30分です。「時計の長い針が6のところまでがごはんの時間よ」「あと少しで食べ終わるかな」など適度に声をかけ、時間がきたら、「ごちそうさましようか」と「ごちそうさま」のあいさつをきちんとしてから片づけます。あいさつなしで親が勝手に片づけてしまうと、食事の終わりを意識することができず、「食べる・食べない」のけじめがつかなくなることもあるので注意します。

 

CASE6 遊び食べをする

 

食事の時間に、食べもので遊んだり、オモチャなどが目にとまるとあっちへふらふら、こっちへふらふら……。お母さんも食事に集中できず、落ち着きませんよね。このような遊び食べは、子どもの気が散っているときにおこりがちです。

また、食事を子ども1人でさせて、その時間にお母さんが他の家事をしているなどの

“1人食べ”は、子どもにとって味気ないもの。食事の時間が楽しくないため、その結果として遊び食べにつながってしまうこともあります。

 

【そうなる理由】

・気が散っている

・子どもが1人で食べている

・食事が楽しくない

 

【こう対応しよう!】

NG:遊んでいるからとなにも言わずに片づけてしまう

OK:子どもと一緒に食卓を囲み、食事を楽しい時間にする

 

食事の時間は、家族の大切なコミュニケーションの時間でもあります。仕事、家事、育児と毎日忙しいかもしれませんが、食事の環境を整え、家族で向かい合い、お父さんとお母さんが「このお肉おいしいね!」などと楽しげに話している光景を目にして、子どもは子どもなりに「食べることって楽しいんだな」ということを体感するものです。

食事の時間が楽しく温かい時間であれば、むやみに遊び食べをするようなこともなくなるでしょう。「今日はキャベツをいっぱい食べてるね」「お箸が上手に使えているね」など、子どものちょっとした様子にも注目し、その都度声をかけるようにすると、食べることがもっと楽しく、うれしくなるでしょう。

それでも遊び食べをしているときは、毅然とした態度でふだんより低めに声を出し、短い言葉で「いけません」と注意して、親の“本気”を伝えます。

 


 

「PHPのびのび子育て」 6 月号より

 

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本記事は、「PHPのびのび子育て」2018年6月号特集【子どもの「ごはん」の悩みをなくす!】より、一部を抜粋編集したものです。

 

【著者紹介】

堤ちはる(相模女子大学教授)

保健学博士、管理栄養士。専門は保健栄養学、母子栄養学。全国の母子保健関係者や保護者に対して、授乳・離乳や子どもの食事指導・支援を行なう。監修書に、『赤ちゃんとお母さんのための おいしい離乳食』(池田書店)などがある。