子どもにかけているつもりの言葉は、そのまま自分にはね返ってきます。では、子どもはもちろんのこと、お母さん、お父さんをも幸せにしてくれる言葉がけとは、どのようなものなのでしょうか。書道家の武田双雲さんにうかがいました。

 

家族

 

みんなを幸せにする「幸せの呪文」

僕は、両親から怒られたことが一度もありません。それどころか、人と比べられたこともありません。僕が変なことをやっても、「天才」とか「面白い」という言葉を選んでくれる親でした。学校の成績が悪くても、部活で失敗を繰り返しても咎められたことはなく、ただ一緒にいる時間を楽しんでくれました。

夫婦喧嘩もありましたが、子どもに怒りをぶつけることはありませんでした。そのお陰だと思いますが、僕自身のびのびとした性格に育ちました。今、毎日楽しく自由に暮らせているのも両親のお陰だと思っています。

そして、僕を幸せに育ててくれた両親もまた、幸せな人生を送っています。それはきっと、僕にかけてくれた言葉の力が、両親自身にも働いているからなのだと思います。

そんな、みんなを幸せにする「幸せの呪文」を、実体験をもとに集めてみました。

 

いいよ、いいよ

両親の口ぐせの1つに「よかよか」があります。熊本弁で「いいよ、いいよ」という意味です。僕の中にネガティブな思考が少ないのは、両親が僕に対してネガティブな言葉をぶつけたことがほとんどなかったからでしょう。何気なく子どもに発している言葉には強い影響力があり、自信をなくす言葉をぶつけていると、自信はなくなります。

書道教室で子どもたちがお手本を見ないのはよくあることです。先生としては「なんでお手本を見ないの。何度も言ってるでしょ」と言ってしまいがちですが、少しでも見たときに「いいよ、よく見ているね」とほめるようにすると、子どもたちは「見る人」に変化していきます。

逆に、誰かに怒られないようにとった行動は自発的なものではないので、すぐに元に戻ってしまうのです。

 

ありがとう

前向きな言葉を選んで子どもに話そうとしていても、もしお母さん、お父さんが日頃から自分に向かってネガティブな言葉を投げかけていたら、言葉に心がこもりません。

書道家は言葉を書くお仕事ですが、技術だけが高くてもその書は良くなりません。書くときの心がとても大切なのです。心が整うと魂が良い状態になり、言霊のエネルギーが高くなります。逆もまた然りで、エネルギーの高い言霊を自分自身に投げかけていると心は整います。

では、エネルギーの高い言霊とは、どんなものでしょうか。

一番おすすめなのは「ありがとう」。感謝の言霊は、最も良質で高いエネルギーをもっています。子どもにも自分自身にも「ありがとう」という言葉を投げかける習慣を身につけてみてください。

 

だからこそできること

ネガティブな思考に陥ってしまいそうなときに有効な、とっておきの言霊があります。それは「だからこそできること」。この言葉をなんでも良いので言葉の後につけ加えます。

たとえば、「私だからこそできること」「雨が降ってきた。だからこそできること」「子どもとケンカしちゃった。だからこそできること」というように。

この言葉の素晴らしいところは、前の言葉を否定もせず受け入れた上で、それを活かす効果があることです。強力なポジティブ言葉なのです。

いつもふりかけのように持ち歩いて、ちょっと困ったできごとが起こったら、ネガティブな言葉の後にこの言葉をササッとふりかけてみてください。自然と前向きな気持ち、前向きなアイデア、前向きな行動が出てくるのでおすすめです。

 

しあわせ

シンプルだけど、すごい言葉としておすすめしたいのが「しあわせ」。幸せと「思う」より、「口にする」と幸福感は何倍にも増します。

ちょっとした幸せを感じたときに、あえて大きめに「私、しあわせ〜」と口にしてみてください。ポイントは表情。幸せな表情で「しあわせ」と口にすると、本当に幸せホルモンが分泌されます。

この言葉を普段から口ぐせにすると、大きなエネルギーとなります。口ぐせの力は本当に大きくて、人生を劇的に変えるほどの力をもちます。文字通り「幸福の呪文」です。

「しあわせ」が口ぐせになると、最初はただ幸せな気持ちになるだけですが、やがて、まるで磁石のように「しあわせ」と思わせてくれる物事を引き寄せます。この言葉に限らず、言霊が現実になるのはそういうからくりなのです。

 

まとめ 感動を言葉にしましょう!

3番目の息子が靴を脱ぎ捨てて家に上がることがありました。そのときは否定したり、怒らずに「あ、今日は靴をそろえないんだね」と、ただ伝えました。そして、たまたま靴をそろえたところを見たときには、その感動を「さすが」と伝えました。すると、気づくといつも自発的にそろえるようになっていました。

書道教室のときも同じように、きれいな線が少しでも書けたら「すばらしい線だ」と感動を伝えます。良いバランスの字が書けたら「気持ちがいい字だね」。個性的な字を書いたときは「面白い!」「独創的!」と伝えます。

できないことにフォーカスするのではなく、自分が感動することにフォーカスしていると、自然と前向きな言葉が出てくるものです。

そして、家族、自分、他人にかける言葉をポジティブに変えるだけで、周囲の人間関係がぐんと良くなり、みんなが幸せになれるのです。

 

 


 

「PHPのびのび子育て」 7月号より

 

表紙

 

本記事は、「PHPのびのび子育て」2018年7月号特集【お母さんの「口ぐせ」で子どもは変わる!】より、一部を抜粋編集したものです。

 

【著者紹介】

武田双雲 (書道家)

熊本県生まれ。母・武田双葉に師事し、書の道を歩む。音楽家、彫刻家などさまざまなアーティストとのコラボレーション、斬新な個展など、独自の創作活動で注目を集めている。書道教室「ふたばの森」主宰。著書に、『敏感すぎて傷つきやすいあなたへ』(PHP研究所)など多数。