長男の障害を周りが理解してくれないことに 苦しんでいた小野寺さん。 ある日、次男がとった行動に、自分を見つめ直します。

 

手

 

私は、6歳と3歳の男の子のママです。長男は、3歳7カ月頃に「自閉症スペクトラム」という診断を受けました。長男とは、コミュニケーションがうまくとれません。親からのコミュニケーションも、長男からのコミュニケーションも、一方通行になってしまいます。

 

コミュニケーションの一方通行状態が毎日延々と続くことで、私のストレスがたまり、長男に怒鳴ってしまう日が続くこともありました。私からの言葉が何も伝わらないことが、何よりもむなしくて悲しかったのです。

 

長男は、親以外の人とは積極的にコミュニケーションをとります。もちろん親以外の人とのコミュニケーションも一方通行なのですが、長男がとても流暢な話し方をする(ように見える)ので、周りの人は長男が障害を抱えているとは気づきません。

 

私の親からは、「(あなたが)障害があると思っているから、障害があるように見えるだけじゃないの?」と言われたくらいです。

 

親から、この言葉を言われたときは、私も感情まかせに言い返しましたが、母は、このやりとり以降は、長男の障害について理解を示すようになりました。私がかなり追い詰められていると、気づいたのかもしれません。

 

4歳児クラスから普通の保育園に通うことになり、私はほっと一息つけるような、そんな気持ちになりました。1日の大半を保育園で過ごすことで、長男の障害が周りに理解されることにつながると思ったからです。

 

いざ、長男が保育園に通い始めると、私の予想とは異なる結果となりました。

 

長男の障害は、保育園の先生たちにも理解されず、むしろ周りの子と比較してもできている、という評価をされてしまったのです。長男の家での生活は何も変わっていません。長く過ごす保育園でも、長男の障害は見えづらいものなのだと突きつけられた瞬間でした。

 

長男の障害は、家では見えるのに外からは見えない......まるでかくれんぼしているような状態でした。

 

そんなある日のこと。いつものように私からのコミュニケーションが一方通行になり、長男をつい怒鳴ってしまいました。すると当時、まだ2歳を過ぎたばかりだった次男が、私に駆け寄ってきました。

 

「ママ、だいじょうぶ?」

 

次男はそう言って、私の肩をぽんぽんとたたいたのです。私は次男の言葉にびっくりし、それと同時に、ふとわれに返りました。

 

「普通」の反応をする次男のようになってほしいと、長男に期待している自分がいたこと。

 

診断を受けてから1年以上が経とうとするのに、まだ障害を受け入れられていないこと。

 

長男に、「ここに私がいることに気づいてほしい」と、毎日心が思っていたこと。

 

障害のある長男が、普通に振舞うのはとても難しいことなのに、周りが障害に気づいてくれないことを言い訳にして、私自身が障害と向き合っていませんでした。

 

次男が「怒っている私」ではなく、「泣いている私」に気づいてくれたので、本当は怒鳴りたかったわけではなく、泣きたかったのだと気づきました。

 

長男が診断を受けてから、もう2年半ほどが経ちます。2年半という月日が流れても、障害を受け入れるのは、私にはとても難しいことです。

 

私は長男の障害を受け入れることをやめました。障害を受け入れるのではなく、受け流そうと試みています。それでもいつか、笑って障害を受け入れたいと思っています。

 

それまでは、「まあだだよ」。

 

それでもいつかは「もういいよ」。

 

(神奈川県・30歳・主婦)

 


 

「PHPのびのび子育て」 7月号より

 

表紙

 

本記事は、「PHPのびのび子育て」2018年7月号特集【お母さんの「口ぐせ」で子どもは変わる!】より、一部を抜粋編集したものです。

 

【著者紹介】

武田双雲 (書道家)

熊本県生まれ。母・武田双葉に師事し、書の道を歩む。音楽家、彫刻家などさまざまなアーティストとのコラボレーション、斬新な個展など、独自の創作活動で注目を集めている。書道教室「ふたばの森」主宰。著書に、『敏感すぎて傷つきやすいあなたへ』(PHP研究所)など多数。