「大丈夫」、そう言って親子で笑い合うことを大切にしてきた池上さん。 ある日、寝込んでしまったとき、 息子さんたちがとった行動に、ハッとさせられて......。

 

男の子

 

三人姉妹の真ん中で育ち、なんとなくだが男の子に無縁だろうと思っていた私が、なんと3人の男の子を授かった。自分と性別の違う子は、見るのと育てるのではだいぶ違い、未知との遭遇ばかりの毎日。

 

子育てで四苦八苦したり、壁にぶつかったりしたとき、私は幾度となく母親の「大丈夫」という言葉に勇気づけられ、安心させられた。その言葉にどれだけ救われたかわからない。そして「大丈夫」という言葉は、私にとって今も変わることなく力のある言葉だ。自分が何歳になっても、やはり母は偉大だと思う。

 

長男が生まれ、まだ言葉を話せない頃から、

 

「ママとの合言葉は......?」

 

「だいじょうぶ」

 

と息子と笑い合うのが、いつのまにか日課になっていた。

 

習慣とは不思議なもので、まだ幼稚園に慣れず、不安そうな息子と通園バスを待っていたときも、「ママとの合言葉は......」「だいじょうぶ......」と声をかけあい、「大丈夫」を呪文のように言っていた息子。その言葉に後押しされてバスに乗る姿に、胸がぐっとなったことも今は懐かしい。

 

わが家の三兄弟は長男から下にいくにつれ、性格はやんちゃだ。長男は割と手がかからず、穏やかなタイプ。長男を育て、男の子はこんなもんだろうと思っていた私だったが、次男、三男と産み育てるにつれて、日々体力勝負、ケガをしないかひやひやさせられることが増えた。

 

私は周りからは、よくポジティブと言われる。そう言われることをありがたく思っていたが、夫が会社から独立し、環境ががらりと変わったときは、そうとは思えなかった。子どもたちから元気をたくさんもらいつつも、どこか心がついていかず、ナーバスな気持ちになってしまうことが少なくなかった。子どもたちを叱っては寝顔を見て謝り、明日はこうしよう、ああしようと思いながら眠りにつく日々。

 

そんなある日、私がひどく体調を崩し、寝込んでしまったことがあった。夫は仕事で、上の子2人は幼稚園児で、三男は一番目が離せない月齢。動きたいけど動けない。

 

すると、長男が静かに枕元にお水を持ってきてくれて、「ママ、がんばってくれて、ありがとうね。きょうはねてて、だいじょうぶ」と言い、そっと頭をなでて、次男に「しー、ママ、なかなかやすめないから、しずかにね」と伝えてくれたのだ。その長男の言葉と、それから兄弟3人で仲良く遊んでいる姿を見て、涙が止まらなくなった。

 

そして、そのあと私のところに寄ってきた次男に、「ママだいじょうぶ? あいことばは『だいじょうぶ』だから、げんきになってね」と声をかけられ、私はハッとした。

 

次男には、「大丈夫」という合言葉を何度伝えられていただろうか。次男は、日頃の家族のやりとりを見ている中で、自然と「大丈夫」という言葉を覚えたというのが正しい気がする。三男もこれから、日々の生活の中で成長しながら、この合言葉を覚えていくのかもしれない。

 

息子に「大丈夫」と声をかけていた側の私が、まさか息子の「大丈夫」に安心させられるとは。まだまだ小さな兄2人の「大丈夫」を聞いて、子どもたちの心の成長を感じた瞬間だった。

 

できるなら、私が母からの「大丈夫」に安心させられたように、私や夫の「大丈夫」が、子どもたちがこれから生きていく上で前に一歩進むときの勇気になってほしい。うしろでそっと支えてくれる、お守りの言葉になってほしい。

 

そしていつか子どもたちが父親になったときに、その「大丈夫」で、わが子を守ってほしい。そんなふうに、今は思っている。

 

池上ゆき (鹿児島県・31歳・自営業)

 


 

「PHPのびのび子育て」 10月号より

 

のびのび

 

本記事は、「PHPのびのび子育て」2018年10月号特集【ちゃんと話せて聞ける子に】より、一部を抜粋編集したものです。