旦那さんが単身赴任のため、働きながら家事も子育ても1人で頑張っていた工藤さん。娘さんの言葉で、最近、自分が笑っていなかったことに気づき……。

 

親子

 

私の夫は転勤族でした。上の娘が2歳になるまでは一緒に暮らすことができましたが、それから単身赴任で離ればなれになり、夫が月に一度帰省する生活。それでも私の母に助けてもらいながら、夫のいない喪失感に折り合いをつけて、忙しい毎日を過ごしていました。

 

そんな日々の中、2人目が生まれ、わが家は娘2人と私、遠くで暮らす夫の4人家族になりました。2人の子どもの子育てと仕事の両立は想像していたよりずっと忙しく、泣き止まない子どもたちを置いて、となりの部屋で私も泣いてしまったり、すでに仕事に出かけた母に、「今すぐ帰ってきて助けてほしい」と電話してしまったこともありました。

 

何より一番つらかったのは、そんな日々を夫と共有できないことでした。“2人の子どもなのに、私だけが苦労している!”と、不満だらけの心をいつも隠して、表面上は何でもないふりを装って仕事をし、久しぶりに帰宅する夫を迎えて……。そんな生活を続けているうちに、子どもたちにつらくあたるようになっていきました。

 

こんなに怒ってばかりのママではいけないといつも思っているのに、イライラがとまらず、子どもの寝顔を眺めては反省する毎日でした。

 

そんな中、上の娘が5歳くらいのときでしょうか。毎日のようにふざけたり、おかしな動きをするときがありました。

 

余裕がない私は、「ふざけていないで!」と怒ってばかり。でも、だんだんばからしくなってきて、ついに大笑い! すると、にこーっと満面の笑みで娘がこう言ったのです。

 

「ママ、やっと笑ったね! なかなか笑ってくれないんだもん。ずっと笑ってほしかったのに」

 

思いがけない言葉にハッとしました。そう言えば、前に笑ったのはいつだったろう。娘の顔を見て笑うなんて、しばらくなかったかもしれない……。娘はこう続けます。

 

「ママが笑うと、いちばんうれしい!」

 

思わず涙が出てきました。こんなに小さな娘が一生懸命考えて、私に笑ってほしくて、毎日おもしろおかしいことをしていたんだと思うと、胸がギュッとしめつけられ、うれしさと申し訳なさでいっぱいになりました。

 

私はきっと、自分で自分を“かわいそう”にしていたんだと思います。夫がいなくてかわいそう、2人の娘の世話ばかりでかわいそう、自分の時間がなくてかわいそう、誰にも相談できなくてかわいそう……。

 

でも、娘のその言葉のおかげで、前向きになれた気がします。

 

会社に出れば、たくさんのスタッフの1人ですが、家族の中ではたった1人のママ。もっと自分を大事にしようと思うようになり、自ずと笑顔が増えました。

 

ママは家族の中の太陽です。ママが笑っていればみんなも笑うし、悲しく沈んでいればなんとなく家の中が暗い。そんな当たり前のことに気づかせてくれた娘に、心の底から感謝です。

 

その後、私は思いきって会社を辞め、夫の転勤先についていくことにしました。今は、夫と娘2人と、さらには夫の両親、義妹に犬、ハムスターにメダカと、ずいぶん大家族になりました。

 

上の娘は8歳になり、下の娘はもうすぐ5歳。私もいつのまにかママ8歳です。楽しいことばかりではないけれど、いつも笑っている娘たちに感謝、そして笑顔を忘れずに、これからも成長していきたい、そう願う毎日です。

 

大切なことを教えてくれたあの頃の君に、

 

「ありがとう!」

 

工藤純子 (青森県・37歳・パート)

 


 

「PHPのびのび子育て」 11月号より

 

 

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本記事は、「PHPのびのび子育て」2018年11月号特集【「いい脳」が育つ 家庭の習慣】より、一部を抜粋編集したものです。

 

 

【著者紹介】

 

友田明美 

(福井大学子どものこころの発達 研究センター教授・副センター長)

福井大学医学部附属病院子どものこころ診療部部長を兼任。2017年から日米科学技術協力事業「脳研究」分野グループ共同研究日本側代表も務める。専門は小児発達学と小児精神神経学。著書に、『子どもの脳を傷つける親たち』(NHK出版)などがある。