子育ては、本当に大変。ついイライラしてしまいがちな毎日の中で、穏やかな気持ちで子どもと接するための心の整え方について解説します。

 

親子

 

アンガーマネジメントとは?

 

「毎日笑顔で子どもを育てたい」と思っても、うまくいかないことが多々あります。一生懸命に子育てをしているのに、目の前のわが子は期待通りの行動をしてくれない......。そのようなときは悲しくなったり、時にはイライラしてしまったりしますね。

そんな「イライラ」解消の役に立つのが「アンガーマネジメント」です。まず、イライラしている自分に気づくこと。そして、次に紹介する13の「心の整え方」を実践することで自分の「考え方のくせ(白黒・完璧・すべき思考など)」を変え、怒りを小さくします。実際にやってみましょう。

 

実践!心の整え方

 

1 10秒呼吸法

イライラしているときなどは、呼吸が浅く速くなります。「10秒呼吸法」で心と体をリラックス! 深くてゆっくりした呼吸になります。やり方は、(1)口から息をゆっくり吐き出す。(2)1、2、3と鼻からゆっくり息を吸う(お腹が膨らむ)。(3)4で息を止め、5~10でゆっくり息を口から吐く(お腹がへこむ)。(2)と(3)を自分のペースで何回か続けます。

 

2 冷水洗顔

「頭に血が上る」という怒りに関する言葉がありますが、イライラしているときは顔もほてり、体全体も熱くなります。そんなとき、冷たい水で顔を洗うことでクールダウンすることができます。イライラしているときは、感情をコントロールする脳の前頭葉の働きが鈍くなっています。まず冷たい水で顔を洗うことで、怒りが一気にエスカレートするのを防げます。

 

3 冷水を飲む

イライラしているときは、脳の水分が減っていると言われています。また、心臓もバクバクしていますね。冷たい水を飲むと、脳の水分を補えると同時に、冷たい水が食道を通ることで、食道の横にあるバクバクしている心臓を落ち着かせられます。これは、親も子どももできますね。子どもが不機嫌なとき、体が冷えすぎない程度に冷たい水を飲ませてあげてください。

 

4 体を温める

怒り、不安、悲しみなどのネガティブな感情を自分の内側に抱え込んでしまうと、体は緊張し、気持ちも固まってしまいます。そのようなときは、温かいタオルで首や顔全体を覆ってください。お気に入りの温かい飲み物を飲むのもよいでしょう。温かいものに包まれると、気持ちもほっとします。少しでもリラックスした状態を作ることが大事です。

 

5 筋弛緩法

ストレス状態になると肩のまわりの筋肉が緊張します。そんなときは、あえて肩を緊張させ、それをゆるめることでリラックスした状態を感じることができます。やり方は、(1)腕を真横に下ろし、背筋をまっすぐにして座る。(2)肩をゆっくり上げ、肩の動きが止まったら、力を少し入れて緊張状態を5秒程度作る。(3)肩をゆっくり下ろすか、ストンと下ろす。力の抜けた状態を感じてください。

 

6 タイムアウト

自分の怒りがピークに達する前に、その場から離れて冷静になる方法です。ずっと叱り続けていても、自分が興奮するだけ。やり方は、(1)その場から離れる理由を伝える(「ママちょっとお水を飲んでくるね」など)。(2)戻る時間を伝える。(3)気持ちを切り替える。(4)待つことができた子どもをほめる。何も言わずに、ぱっと離れると子どもは不安になるので要注意です。

 

7 セルフトーク

イライラしたときは、自分自身の気持ちを落ち着かせる言葉をつぶやきましょう。否定的な言葉(「面倒!」「もういや!」など)はNG。「これが一生続くわけではない」「この子は泣いて何かを伝えている」など、肯定的な言葉によって気持ちが前向きになり、それが怒りを小さくする第一歩となります。自分なりのセルフトークを書いたカードを持ち歩くのもいいでしょう。

 

8 思考停止法

不快なできごとが起こると、そのことばかりをぐるぐる考えてしまい、負のスパイラルに陥ってしまいがちです。そうなると、怒りの感情も知らないうちにレベルアップしていきます。このようなときに有効なのが思考停止法です。心の中で、力いっぱい「ストップ!」と何度か言ってみましょう。思わず怒鳴ってしまいたい衝動を落ち着かせることができます。

 

9 一点集中法

イライラするできごとに心をとらわれてしまうと、考え、感情、行動がストップしてしまいます。怒りが湧き起こったときは、何か別のものに集中して気持ちをそらします。やり方は、(1)目の前にあるものや風景をじっと眺める。(2)心の中で自分に質問し、答える(「素材は何だろう?」「あれは何の木かな?」など)。怒りの感情に振り回されないようにしましょう。

 

10 イメージトレーニング

「私は何をやっても失敗ばかり」と思っていませんか? この世に生まれて成長し、つらい体験もして、今、子どもを育てている―これは立派な成功体験です。泣いているわが子に声をかけたら、笑顔になった―これも、今までの積み重ねが子どもに安心感を与えているからこその成功体験。「子育てに成功している自分」のイメージを強化すれば、イライラも起こりにくくなります。

 

11 表情筋リラックス法

イライラしているとき、顔の表情は緊張し、眉間にしわが寄っていたりします。逆に表情をリラックスさせると、イライラも解消します。イラッとしている自分に気づいたら、鏡を見ます。表情が緊張していたら、(1)蒸しタオルなどを当てて緊張をゆるめます。(2)鏡に向かって口を大きく開けて、「あいうえお」と発声してみましょう。(3)最後に、鏡に向かって口角を上げて笑顔を作ります。

 

12 怒りの温度計

「怒りの温度計」をイラストにしておくと、客観的に自分の怒りを把握し、対処しやすくなります。怒りの温度計には、温度に見合った自分なりの「怒りに関する言葉」を添えます。たとえば、怒り0℃は怒る場面ではないので「穏やか」、30℃で「イライラ」、60℃になると「怒り心頭」など。自分の怒りの段階を知っておくことで、自分の気持ちを理解しやすくなります。

 

13 アンガーログ

イライラしたときの状況を記録することで、自分の考え、感情、行動を客観視できます。ノートなどに、(1)いつ・どこで、(2)出来事、(3)そのとき浮かんだ言葉、(4)そのときの気持ちと怒りの温度、(5)とった行動、(6)その結果、を書きます。(3)には「考え方のくせ」が隠れていますので、たとえば「完璧主義の自分」に気づいたら、「子育てに完璧なんてない」と考え方を変えてみましょう。

 

迷いながら、マイペースで

 

子育てには、愛・忍耐・エネルギーが必要ですね。「こんなに一生懸命やっているのに、なんでこうなっちゃうの?」と思い悩むことも多々あるでしょう。悩んだりイライラしたりするのは、真剣にやっている証拠。それでいいんです。「そういう自分が今いる」と気づくことが、新しい発見に通じていきます。

正解や結果を追い求めると、子育ては苦しいものになり、気持ちの振れ幅が大きくなります。「心を整えよう」と思ったら、アンガーマネジメントに取り組んでみてください。

子育てもアンガーマネジメントも焦らず、自分のできるところから一歩ずつ。それが親子の笑顔につながります。

 


 

「PHPのびのび子育て」 12月号より

 

のびのび

 

本記事は、「PHPのびのび子育て」2018年12月号特集【お母さんの「叱り方」で子どもの性格は変わる】より、一部を抜粋編集したものです。

 

【著者紹介】

佐藤恵子(臨床心理士)

東京国際大学大学院臨床心理学研究科臨床心理学専攻博士課程(前期)を修了後、アメリカにてアンガーマネジメントを学ぶ。精神科クリニック、東京都公立小学校・中学校のスクールカウンセラーを経て現在、私立中学校・高等学校にスクールカウンセラーとして勤務。アンガーマネジメントジャパン代表理事。