娘さんのイヤイヤ期に、泣きながら自問自答する毎日だった尾田さん。でも気づけば、そんな娘さんが、とても頼れる存在になっていたのです。

 

子ども

 

5年前、私は初めての育児に苦戦していた。2歳の娘はイヤイヤ期真っ盛り。好奇心旺盛で物怖じしない性格。よく言えば、である。

 

駅前でハトを追いかけて、バスの前に飛び出しそうになる。スーパーで迷子になり、さんざん探し回ったあげく、数百メートル先の公園で見つかる。子育て広場で他の子とおもちゃの取り合いになり、取っ組み合いのケンカ。相手の顔をひっかく、あるいは腕やお腹に噛みつく、などなど武勇伝は数知れない。

 

「女の子は育てやすい」という思い込みは、私の中で音を立てて崩れ去ったのである。

 

イライラが募って、娘を前にして泣きわめいたり、奇声をあげたりした。ダメだと思いながらも、時には手をあげてしまったこともあった。ままごとや人形遊びをする、よその子を横目に娘を追いかけ回しながら、「どうしてうちの子は……。私の育て方が悪いのか」と、自問自答する毎日。

 

あれから時は流れ、現在、娘は小学2年生。今では3人の弟の姉である。

 

4歳の弟とはケンカもするけれど、よき遊び相手だ。彼の好きなミニカーやブロックで一緒に遊んでくれる。何でも姉と同じことがしたいお年頃で、娘の使っているものをすぐに横取りするのだが、娘は文句を言わず、根気強く接している。

 

昨年末に生まれた双子の弟たちの世話は、さらによくやってくれる。泣いていると抱っこしてくれたり、ミルクをあげたりしてくれる。私が疲れているとき、「ママ大丈夫。少し寝ていいよ」と、私が休んでいる間、2人の相手をしてくれる。外出するときは、当たり前のようにベビーカーを押してくれる。

 

このように怪獣さながらだった娘は、今や輝くユニコーンへと進化を遂げた。時々、はめを外すこともあるけれど、しっかり者で優しい、家族にとって頼れる存在である。

 

最近になって私は、5年前の、あの忍耐と苦悩の日々を冷静に捉えられるようになった。今にして振り返れば、あの時期を乗り越えたからこそ、現在の娘があるのではないかと思う。

 

ああでもない、こうでもないと、試行錯誤で娘との関係を手探りしていた私。そして同じように、いやもしかしたら私以上に、娘も苦しんでいたのだろうか。自分の思いをうまく言葉にできなくて、毎日懸命に、体全体で私にぶつかっていたのかもしれない。

 

私たち親子にとっては、「イヤイヤ期」とは、かけがえのない「成長期」だったような気がするのである。

 

ある晩、娘が珍しく一緒に寝てほしいと甘えてきた。「ママがいないとき、寂しかった」とつぶやく。私が双子の出産で1カ月入院していたときのことを思い出したらしい。

 

娘の頭をなでながら、何気なく「ママより、パパや、ばあばのほうが優しいでしょ」と返すと、「ママは怒るけど、怒ったママも大好きなんよ」と語気を強めた。私を見つめる瞳には、涙が光っている。胸がぎゅっと締めつけられた。「ありがとう」と言いながら、気づけば私も涙していた。自然と2人で抱き合い、しばらくの間、互いの温もりを確かめ合った。

 

子育ては決して平たんな道のりではない。これからも、さまざまな困難が待ち受けているだろう。でも、せめて目の前の状況から逃げずに向き合っていきたい。子どもの心の声に耳を傾け、ありのままに受け止め、子どもとともに成長していける母でありたいと思う。 母娘2人きりでデートする約束をし、娘は眠りについた。安らかな寝顔だった。

 

尾田加奈子 (広島県・35歳・主婦)

 


 

「PHPのびのび子育て」 12月号より

 

のびのび

 

本記事は、「PHPのびのび子育て」2018年12月号特集【お母さんの「叱り方」で子どもの性格は変わる】より、一部を抜粋編集したものです。