お風呂に入って死ぬ人はいても、入らないで死ぬ人はいません!

 

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風呂は毎日入るものという常識

 

病院の患者さんの中に、入浴を嫌がる方は少なくありません。とくに多いのは男性ですが、その主な理由は2つ。1つめは、ひとりでゆっくり入浴できるなら別だが、不自由な体で風呂に入るとなると必ず介助の人がつくから、2つめは、とても疲れるからとのお答えでした。

 

自分だけ裸にされる屈辱感や、他人の都合に合わせて動かされる不快感を感じながら、あちこち洗ってもらってきれいになったとしても、どうもスッキリしない......。あわせて、高齢者にとって入浴は思いのほか体力が必要で、疲労感を感じる方も多いようです。加齢臭が気になるんじゃないかって? 本人は自分の加齢臭をわかりませんからね。

だいたい身ぎれいになって何をするのか、ということもおっしゃいます。  

そうした声を聞くと、そもそも、風呂は本当に毎日入らなければいけないものか? と疑問がわきます。

 

それに、高齢者の入浴は、皮膚が乾燥するというデメリットもあります。実際、入浴のしすぎ、石けんの使いすぎ、タオルなどでのこすり過ぎで、皮膚障害が起こることもあります。そういう意味でも、最低限、臭いだけとれれば十分です。

 

私自身、子どものころから毎日入浴する習慣のない環境で育ちました。ですから今でもあまりお風呂が好きではありません。

にもかかわらず、自分で病院をつくったときもそうでしたが、自分の親を預けるなら、「決まった時間に起床させて、三度のご飯もきちんと食べてもらって、お風呂にも毎日入れて清潔にして、身ぎれいにして......」そんな場所にしたい、と思っていました。

今思えば、私も世間一般の常識にとらわれていたのですね。

ところが、自分が75歳を過ぎると、それまでにも増して「風呂は面倒だから極力入りたくない」と思うようになりました。同時に、「朝は寝たいだけ寝ていたい。食事も三度も食べたくないし、好きなものだけ食べたい」とも。

 

毎日、風呂に入ることのリスク

 

実際、風呂は週に1~2回で十分です。だいたい、風呂に入らなくて死んだ人はいません。入っていて死ぬ人は年に2万人近くいるのに......。歳をとると、若いころほど汗もかかなければ、脂も出ませんから。

介護が必要なほどの高齢者になると、風呂に入れられるほうも、入れるほうも大変です。ですから、風呂は3日に一度くらいでいい。それくらいに思っていたら、本人も、お世話する側も気がラクじゃありませんか?

 

 


 

【本書のご紹介】

 

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『医者が教える非まじめ老後のすすめ』

 

歳をとったら、したくないことはやらない! 多くの高齢者を看てきた医師が語る、豊かな晩年のためにもっと”非まじめ”に生きるヒント。

 

 

【著者紹介】

大塚宣夫(おおつか・のぶお)

医師。1942年、岐阜県生まれ。1966年、慶應義塾大学医学部卒業後、1967年に同大学医学部精神神経科学教室入室。1968年より井之頭病院に精神科医として勤務。フランス政府給費留学生としての2年間のフランス留学を経て、1980年に青梅慶友病院を開設。2005年よみうりランド慶友病院を開設し、現慶成会会長。医療や介護の常識に縛られず、高齢者の「生きる楽しみ」を優先した病院作りを実践する。著書に『人生の最期は自分で決める』(ダイアモンド社)、阿川佐和子さんとの共著『看る力』(文藝春秋)がある。