夫婦円満のためには、適度な距離感が大切です。

 

老夫婦

 

生活が急に変わるストレス

 

恋人時代のカップルは不安定な関係ゆえ、適度な緊張感があります。だから気も遣うし、燃え上がるし、ケンカもする。でも、夫婦になって長く一緒に生活していると、相手の性格やクセ、手のうちもわかってきて緊張感がゆるんできます。また、相手に対する期待や幻想も薄れるため、お互いへの気づかいも減ってくるのが一般的です。  

 

こうした中で、突然生活のリズムが変わるとしましょう。そのよい例が夫の定年です。それまでは、仕事だ仕事だと言って外にいた夫が、一日中家にいるようになるんです。

我々世代のサラリーマンは、平日のみならず、休日だって接待ゴルフだなんだと家族との時間をもたなかった人も多いでしょう。それゆえ「申し訳ない」という後ろめたさのようなものもあってか、たまに一緒にいるときくらいはと、妻や家族に気遣いができ、それが良好な関係の素になっていたかと思います。

妻にしても「亭主元気で留守がいい」といった生活リズムが確立されていた面もあるはずです。なにより、めったに会わないぶん、会ったときに新鮮ささえあったでしょう。

 

ところが、夫が一日中家にいてごらんなさい。

それまでの生活ペースが乱される妻にはたまったもんじゃない。

 

実際、定年退職した夫が家にずっといるようになり、奥さんが原因不明の体調不良を起こすケースも少なくありません。いわゆる「夫源病」です。医学的な病名ではありませんが、夫が毎日家にいることで妻の生活リズムが乱されることによるストレスが原因です。

 

ここには、男性の側に大変な思い上がりと思い違いがあります。

ひとつは、定年後、妻が自分と一緒にいる時間が長くなることを喜ぶだろう、少しでも一緒に行動することをうれしく思うだろうという点。もうひとつは、長い間家族のために身を粉にして働いてきた自分をねぎらい、大切にしてくれるだろうという点。

これらはいずれも幻想です。妻の側からすれば、そうなった夫は単なるオジサンであり、居候的存在でしかないのです(もちろん例外もありますが)。

 

ですから、世の夫たち、「一家の主たる俺が一日中家にいて何が悪い」という考えは捨てましょう。定年退職後もできる限り、今までと同じように外に出てください。せめて昼ご飯は外で食べてくるくらいの気概をもちましょう。 

 

あるいは、妻の皆さまも、今までどおり距離をとりましょう。一緒にいる時間が増えたら会話も増えるというのは幻想です。老後の夫婦こそ、適度な距離感が大切。無理に夫に(妻に)近寄らないようにしましょう。それが老後の夫婦円満の秘訣です。

 

 


 

【本書のご紹介】

 

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『医者が教える非まじめ老後のすすめ』

 

歳をとったら、したくないことはやらない! 多くの高齢者を看てきた医師が語る、豊かな晩年のためにもっと”非まじめ”に生きるヒント。

 

【著者紹介】

大塚宣夫(おおつか・のぶお)

医師。1942年、岐阜県生まれ。1966年、慶應義塾大学医学部卒業後、1967年に同大学医学部精神神経科学教室入室。1968年より井之頭病院に精神科医として勤務。フランス政府給費留学生としての2年間のフランス留学を経て、1980年に青梅慶友病院を開設。2005年よみうりランド慶友病院を開設し、現慶成会会長。医療や介護の常識に縛られず、高齢者の「生きる楽しみ」を優先した病院作りを実践する。著書に『人生の最期は自分で決める』(ダイアモンド社)、阿川佐和子さんとの共著『看る力』(文藝春秋)がある。