初めての子育てに自信がもてず、苛立ちを感じていたときに、娘さんに心臓病があることが発覚。自分を責め続けていた岩崎さんですが、ある日、夫に宛てた手紙を見つけて……。

 

赤ちゃん

 

3年前の手紙~負けそうな私を立ち直らせてくれたできごと

 

気がつけば、私の髪は肩を通り過ぎていた。最後に美容院に行ったのは、いつだっけ......。

 

出産後は、自分の時間などもてないことはわかっていた。子育てが大変だということも覚悟していた。仕事や家事を器用にこなすほうだった私は、母親になっても変わらず同じようにできると思い込んでいた。

 

けれど、そんな根拠のない自信は、産院を退院後、すぐに打ち砕かれた。助産師さんという強力な助っ人をなくし、そこには想像以上に繊細な「赤ちゃん」という生き物に、まるで立ち向かえない臆病な自分がいたのだ。

 

いくらあやしても泣き止まず、おっぱいは拒否され、ミルクは吐き、母親である自分が情けなくなった。

 

赤ちゃんが眠っているときですら、ちゃんと息をしているか数分置きに確認して横になる、のくり返しで、まともに睡眠を取ることができない。抱っこで寝かせたときは、起こさないようにじっと座り続け、お尻の皮がむけたこともあった。

 

夫は出かけるのが朝早いので、1人になるのが怖くて朝が来るのが憂鬱だった。検索魔になり、気になることをネットで調べては、勝手に不安を助長させ、自己嫌悪になることもあった。

 

とはいえ、子どもは可愛くて、愛しくて、かけがえのない大切な存在。自然と笑顔になることもあったし、幸せを感じることも多かった。けれど、立派な母親でいなければというプレッシャーがつきまとい、子育てや仕事、家事が思い通りにできない自分に対して、苛立ちを感じていた。

 

そんな中、とある検診の際に、娘に先天性の心臓疾患が見つかった。百人に一人はもって生まれてくるという決して珍しい病気ではなく、症状も比較的軽かった。それでも、生まれて間もないわが子に心臓の病気があるということは、私たち夫婦に大きなショックを与えた。

 

医師は、「必ず治るので、安心していい」と、薬を処方してくれたが、私は病気が自分のせいなのではないかと責任を感じてしまっていた。もちろん誰のせいでもなく、当の本人はそんなことを気にもせず、感情のまま笑ったり泣いたり、無邪気に生きている。娘の笑顔を見ていると、自分の神経質さに気づかされ、私の不安が娘にも伝わってしまっているんだろうなと反省した。

 

そんなある日、パソコンの整理をしていたら、3年前の夫の誕生日に、私が夫に宛てた手紙を見つけた。

 

「流産をして、私が不安定だったときも、いつも優しく支えてくれてありがとう」

 

ああそうだ、この年は、今までで一番悲しくてつらい経験をしたんだった。

 

「つらくて落ち込んで、不安や怒りや悲しみで押し潰されそうで、自分のことでいっぱいいっぱいになっていたけど、一緒に泣いてくれた夜、悲しみが半分になった気がした。夫婦って、嬉しいことは2倍で、つらいことは半分こ。それって本当なんだって思って、そこから気持ちが軽くなっていったんだ」

 

そうだった。このとき、今までで一番の悲しみを、夫婦で一緒に乗り越えたんじゃないか。そして去年、今までで一番の幸せを、娘が私たちにくれたんじゃないか! どうしてこの幸せを、素直に感じられなかったんだろう。

 

3年前、夫に宛てた自分の言葉で、今の自分が救われた気がした。

 

娘は1歳3カ月になった。長くなった髪は、「娘の病気が早く治りますように」と願いを込めて、心臓の病気が治ったらバッサリ切ることに決めた。そして先日、心臓のエコー検査で病院へ。私の頭が軽くなる日も、もうすぐそこまできているようだ。

 

岩崎 舞 (長野県・36歳・主婦)

 


 

「PHPのびのび子育て」 3月号より

 

 

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本記事は、「PHPのびのび子育て」2019年3月号特集【9歳までの「甘えさせ方」で子どもは変わる!】より、一部を抜粋編集したものです。