「ひとり」でいるからこそ得られる恩恵があります。

 

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「ひとり」は現実から離れられる時間

 

人と一緒のとき、私たちの心は現実につなぎ止められていますが、ひとりのときは、現実による縛りが緩むため、ふと気がつくと過去を振り返ったりしているものです。

私たちは、あたかも自叙伝書くように、毎日の出来事を記憶に刻んでいます。そのような記憶のことを自伝的記憶といいます。自伝的記憶は、自分の生きた証です。それは3歳くらいまでさかのぼることができますが、子ども時代の記憶がよみがえると、とても温かい気持ちになる人が多いのではないでしょうか。青春時代には、なかなか思い通りにならないことや後悔することも多々あったでしょうが、印象深い思い出が詰まっており、そうした記憶に触れると、懐かしさが込み上げてきます。

 

「懐かしさ」を感じるとエネルギーが補充される

 

懐かしさに浸ることで心のエネルギーを補充することができます。厳しい現実、あるいは味気ない現実の中で心が疲れているときは、気心の知れた仲間とおしゃべりすることも良い気分転換になりますが、ひとりになって懐かしさに浸ることも気持ちのリフレッシュになります。さらには、過去の自分との出会いは新たな気づきを与えてくれます。

 

日常の流れから降りてみる

 

仕事にしろ子育てにしろ、何かすべきことに駆り立てられて過ごしているのがふつうの人の日常です。そんななか、人と一緒にいると、どうしても現実に流されます。そうした流れから降りてみることで、日頃の自分の生活を客観視するきっかけが得られます。

哲学者のニーチェは、病気の効用を説いています。病気になって、忙しい日常の流れから降りたときに、日頃自分が仕事や人間関係のせいで病んだ生活をしていたことに気づくというのです。

べつに病気になる必要はありませんが、ときに立ち止まり、日常の流れから降りてみることは必要です。すべきことに追われたり、人づきあいに巻き込まれたりしているときには気づかなかったことに気づけます。「これでいいんだろうか?」「どこか生活を変えたい」といった心の声が聞こえてくることもあります。さみしさは、自分の生活を見直すきっかけを与えてくれます。自分らしい生活にしていくためにも、ひとりの時間をもつようにしましょう。

 


 

「PHPスペシャル」12月号より

 

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本記事は、「PHPスペシャル」2019年12月号特集【「ひとり」の習慣が幸せを呼ぶ】より、一部を抜粋編集したものです。

 

【著者紹介】

榎本博明(えのもと ひろあき)
心理学博士。MP人間科学研究所代表。心理学をベースにした企業研修、教育講演などを行なう。『50歳からのむなしさの心理学』(朝日新書)、『孤独 ひとりのときに、人は磨かれる』(クロスメディア・パブリッシング)など著書多数。